大野篤史

文=丸山素行 写真=野口岳彦

昨シーズンの千葉ジェッツは激戦の東地区を制し、天皇杯2連覇も達成するなど充実したシーズンを送った。レギュラーシーズンの勝率は2年連続で70%を超え、観客動員数もリーグトップと、実力と人気を兼ね備えたクラブとしてその地位を確立している。もっとも、Bリーグが開幕する以前の千葉は、決して強豪と呼べるチームではなく、急成長を遂げたのはこの2年のこと。Bリーグ初年度から千葉を指揮し、チームを強豪へと成長させた大野篤史ヘッドコーチに話を聞いた。

「飲まなきゃやってられない日もある」

──素朴な疑問ですが、我々はコートで戦う『オン』の大野ヘッドコーチを見る機会しかないので、バスケを離れたオフシーズンの過ごし方がどんなものか気になります。今回のオフはどのように過ごしましたか?

僕は単身赴任で、シーズンが始まると一度も帰らないので、家に帰って家族とゆっくりさせてもらいました。身体的には選手たちのほうが疲れていますが、精神的には参る仕事なので、ちょっと休憩して、それから来シーズンに向けての編成や外国籍選手の構想を在宅でやっていた感じです。

──オフの間でもダラダラしている姿が想像できません(笑)。

休みの日はだらけてます(笑)。シーズン中も飲まなきゃやってられない日というのもあるので、仕事の前の日はないですけど、日曜日の試合が終わった後に、お酒を飲もうかなと思う日もありますよ。

──ヘッドコーチとしていかに在るべきか、その理想像はありますか?

それは特になくて、素の自分です。ただ、僕の真剣さが選手に伝わらなければ選手が真剣にならないので、コートの中で『戦う』ところは選手に伝えるべきだと思っています。しかしコートから出れば「先輩だぞ」とか「ヘッドコーチだぞ」という感覚はなくして、選手とフランクに付き合いたいとは思っています。でも選手とご飯を食べに行ったりとかはしないですね。チームとしては行きますけど、誰かを連れて行ったりとかはないです。

──いわゆる『飲み二ケーション』ですね。それをやらない理由は特にありますか?

必要あるのかな、って思います。僕は好かれたいわけじゃないので。お互いがこのチームを良くするんだというロイヤリティーを持って、尊敬できる間柄が一番良いと思ってます。お酒を飲まなきゃ言えないような仲良しこよしになりたくはないです。キツイことも、シリアスなことも、飲まなくても話せるということを伝えたいし、向こうからも言ってもらえるような環境を作りたいです。

大野篤史

ルール改正がもたらす変化

──オン・ザ・コートルールが新シーズンから改正されます。試合を戦う上で影響は大きいと思いますが、どう受け止めていますか?

実際、理解はできないです。常にオン・ザ・コート2にすることが日本の強化になる理由が僕には見つけられません。それを決めるのは僕じゃないし、その中で戦うのが自分たちの仕事なのですが、予想として40分のうちの35分ぐらい外国籍選手を出場させるチームが出てくる、それに伴ってペースが落ちるのではないかと思います。

日本人ビックマンのプレータイムは相当減るだろうし、日本人を中心にバスケットを組み立てるチームが減るだろうというのはあります。決して改正に対してネガティブではないのですが。

──ただ、やはりその中で戦って、結果を出さなければいけません。千葉が戦う上でこの変化にどう対応しますか?

僕たちのスタイルではないので、ペースを落としたくないです。相手チームがペースを落とすのであれば、僕たちはペースを上げていきたい。僕がいる間は重い選手、走れない選手を取らないと思います。なので他のチームのペースが落ちる中でも『ペース&スペース』にもっとこだわってやっていきたいと思ってます。

──ネガティブではないというのは、ある種このルール改正が千葉に追い風になるからということですね?

追い風になるかどうかは分からないですよ。実際ペースが下がったところで、僕たちに対するディスアドバンテージがたくさん出てくる可能性だってもちろんあります。そんなにサイズがあるわけではないので、相手の方にアドバンテージが出るかもしれません。どうなるかは分からないですが、それが僕たちのスタイルではないし、目指しているバスケットではないということです。

──俄然開幕が待ち遠しくなってきました。千葉は他チームに先だって川崎ブレイブサンダースをホームに迎えて開幕戦を戦いますが、そこへの意気込みをお願いします。

本当に光栄なことですし、川崎さんは強いチームなので不安も実際あります。本当に良いゲームをして、Bリーグ3年目も面白いぞと思ってもらえるようなゲームをチームでやっていきたいです!