48分間フル出場で49得点17リバウンド10アシストを記録
今日この時点で世界最高のプレーヤーはケビン・デュラントだ。それが明確になった48分間だった。まだシリーズの途中だから、それを認めることはリスクだと十分に理解した上で、ヤニス・アデトクンボはそれを認めた。「彼は今、世界最高のプレーヤーだ。でも、僕らは彼を止めて、倒さなきゃならない。今日何度かそうしたように、タフショットを打たせなければ。僕らは自分たちがやるべきことを遂行し、あとは彼がシュートを落とすことを期待するんだ」
ネッツがホームで2連勝するも、ミルウォーキーに戻ったバックスが2つ取り返して迎えた第5戦。ここでホームを守れなければ、敵地での第6戦は非常に厳しいものになる。カイリー・アービングが足首の捻挫で出場できない状況で、ハムストリング痛のジェームズ・ハーデンを強行出場させたのは、ここがシリーズの山場だと判断したからだ。
2連勝中のバックスには勢いがあった。ネッツはハーデンがやはり本調子ではなく、ジョー・ハリスのシュートタッチも不調で押し返すことができず、前半を終えて43-59の16点ビハインドと苦戦を強いられた。そして第3クォーター途中から、勢いに乗れないチームを動かすためにデュラントがギアを上げる。チームオフェンスでチャンスを作り出そうとしていたプレーから一転して、自分で強引に決めにいき始めた。
「何も考えず、ただ一つひとつのポゼッションを大事にしていた。何点取ったとか、シュートやリバウンドの数は全く意識していなかった。つまり、いつもと変わらない試合へのアプローチだったということさ」とデュラントは振り返る。
しかし、この試合でのパフォーマンスは間違いなく特別だった。シリーズを通してデュラントを快適にプレーさせないためだけに先発出場しているPJ・タッカーは、この試合でも33分のプレーでシュートを3本しか打たずに無得点でも、ひたすらデュラントに貼り付いていた。それでも止められないので、よりフットワークのあるクリス・ミドルトンにマークさせた。ダブルチームで潰すべきだったかもしれないし、チームNo.1のディフェンダーであるアデトクンボがフェイスガードで付くべきだったのかもしれない。だが、どんな守り方をしてもこの日のデュラントは止められなかったに違いない。
バックスも必死だった。デュラントに信じられないシュートを何本も決められ、伏兵のランドリー・シャメットやブルース・ブラウンにも得点を繋がれて、ハーフタイムにあった大量リードを溶かしながらも、終盤までどちらに転ぶか分からないゲームを続けた。デュラントは48分間フル出場で、いつエネルギー切れを起こしてもおかしくなかったし、バックスにも勝つチャンスはあった。
残り1分、105-106と1点ビハインドの場面で、バックスはボールを運ぶハーデンに前から強烈なプレッシャーを掛ける。ハーデンは身体が重く、シュートもことごとくリングに嫌われる中でも何とかデュラントをサポートしようとしていたが、ドリュー・ホリデーの密着マークを受けてターンオーバーをしないのが精一杯。デュラントにボールが渡った時点でショットクロックは残り3秒を切っていたが、それでもデュラントはディープスリーをねじ込んだ。これで109-105と2ポゼッション差にリードを広げたネッツは、ファウルゲームでもリードを守り抜き、114-108で激闘を制した。
今シーズンのネッツはアービング、ハーデンとの『ビッグ3』で勝ち続けてきたが、この試合でのデュラントは『ビッグ1』と形容するに相応しいパフォーマンスを見せた。
「見ていて美しいと感じた」とネッツの指揮官、スティーブ・ナッシュは言う。「正直、馬鹿げていると感じた。カイリーを失い、ジェームズもトラブルを抱えていて、みんな傷ついて身体が動かない。その中でKD(デュラント)は身体でもメンタルでも強靭であることを見せた。それこそが彼が偉大な選手である理由だと思う」
48分間フル出場で49得点、さらには17リバウンド10アシスト3スティール。デュラントにとっては過去最高のプレーかもしれない。少なくともアキレス腱断裂以前と変わらぬパフォーマンスを取り戻せたことを証明した。しかし彼は「僕はパフォーマンスに順位を付けたりしない。良いプレーができても『このゲームに参加できて楽しかった』と思うだけで前に進むんだ。これでシリーズ突破が決まっていたらもっと喜ぶだろうけど、まだ次の試合があるわけで、そこで勝たなければ意味がないから」と、いつものように淡々と語る。
「僕のキャリアの中で、同じように楽しいと感じた試合はたくさんある。いずれ振り返って話すこともできるだろうけど、今は『W』を手にすることができて良かったよ」
WIN──に相応しいプレーができた。今日の彼にとっては、世界最高かどうかではなくそのことだけが大事なようだ。