富樫「文男さんが後ろにいるのは本当に心強い」
千葉ジェッツは宇都宮ブレックスとのBリーグファイナル第3戦を71-62で制し、悲願の初優勝を成し遂げた。
千葉は先発の富樫勇樹が開始4分で個人2つ目のファウルをコールされ、ベンチに下がらざるを得ない状況に。勝敗を左右しかねない緊急事態だったが、ここでバックアップガードの西村文男が大仕事をやってのけた。急な出番にもかかわらず、2本のアシストで得点を演出すると、ファウルを受けながらミドルシュートも沈めた。第2クォーターもそのまま出場し、3ポイントシュートを成功させる。追いつかれはしたものの一時は10点のリードを奪い、ピンチをチャンスに変えたのだから、西村が「前半のMVPは俺」と言ったのも納得できる。
ファウルゲームにより最終スコアは9点差と離れたが、試合は終盤まで1ポゼッション差を争う熱戦だった。ここで西村は千葉のスタイルを貫いたことを勝因に挙げた。「今日はウチの方がやりたかったバスケットができたのかなと思います。ウォークスルーで確認したことをしっかり出しながら、ウチらしく戦えたことが勝利に繋がりました」
第3クォーター残り6分14秒、富樫は個人3つ目のファウルを使い比江島慎の速攻を防いだ。アンスポーツマンライクファウルとなったのは余計だったが、流れを与えてしまうファストブレイクを防ぐ判断は正しい。それでも、個人3つ目のファウルというリスクを考えれば、簡単にできることではない。正確かつ素早い判断が求められる状況で富樫が迷いなくファウルができたのは、西村が後ろに控えている安心感があったからだ。
富樫は言う。 「文男さんが後ろにいるのは本当に心強いです。特に3回目のファウルは自分の中で一つの成長かなと。数年前だったら、あそこはファウルをせずにレイアップに行かせていたかもしれないですけど、躊躇なく3つ目のファウルを使いました。こうやってチームを信頼しているからこそファウルができていると思うので、文男さんの存在は大きいです」
「文男はガラスの身体なので大事に大事に使ってきました」
この試合で西村は富樫を上回る21分41秒間コートに立ち続けたが、今シーズンの西村のプレータイムが20分を超えたのはレギュラーシーズンに1度のみ。平均プレータイムは10.1分でキャリアワーストの数字だった。しかしこれは大野篤史ヘッドコーチの配慮によるものだった。
「文男はガラスの身体なのでレギュラーシーズンは大事に大事に使ってきました。チャンピオンシップやファイナルでは四の五の言ってられないから頼むねというところで、期待に応えてくれました」
実際、第3戦までもつれた琉球ゴールデンキングスとのセミファイナルでも、西村の存在は光っていた。富樫やシャノン・ショーター、そしてビッグマンたちは一人で打開できる力が強みだが、攻撃が単調になり的を絞られやすい弱点を抱えてもいる。それでも、球離れの良い西村がパスを散らすことでオフェンスは活性化する。琉球との第3戦で後半に突き放すことができたのは、西村がパスを散らし、ボールムーブが生まれたことも関係していた。
自信を持って臨んだ2年前のファイナル、冷静さが売りの西村が、危機感からディフェンスに力を注ぎ過ぎてしまい、終盤にガス欠を起こした。「2年前はチームとしても完成度が高く、すごく自信があった中での負けでした。個人的にも何もチームに貢献できなかったなという悔しい思いがありました」
その西村が今回のファイナルではジェフ・ギブスとのルーズボール争いでポゼッションをもたらし、貴重なリバウンドも獲得するなど、様々な場面で光るプレーを見せた。西村は胸を張る。
「優勝のかかった試合で2本のディフェンスリバウンドを取っている自分を褒めてあげたい。もちろん自分の役割もありますが、それ以上に自分みたいな普段大人しいプレーヤーが泥臭いことをやって、チームを勢いづかせたいと思っていました。身体を張った場面を多くしたつもりでしたし、身体もアザだらけなんですけど、これは自分の中で成長したと思えます」
西村は頼れるベテランという一言では表現できないほどのパフォーマンスを見せた。彼がポストシーズンで見せた『ベテランの妙』を多くの人が目に焼き付けたはずだ。
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