「自分たちが与える側だと思っていたけど、力をたくさんもらった」
グラーツ(オーストリア)で行われた東京オリンピック予選で3位に入り、出場権を勝ち取った3人制バスケットボール『3×3』女子日本代表は昨日帰国し、今朝にアソシエイトヘッドコーチの長谷川誠、また篠崎澪、西岡里紗、馬瓜ステファニー、山本麻衣の4選手がオンラインでの会見に応じた。
長谷川アソシエイトヘッドコーチは「まずはオリンピックの出場権が取れたことにホッとしています」と今の心境を明かすとともに、「こういう状況の中でいろんな方々の協力の下でドイツ遠征、オーストリアに入って本戦でゲームができたことに感謝していますし、オリンピック出場権を獲得できたことをうれしく思っています」と感謝を語った。
新型コロナウイルスの影響で大会が1年延期となり、その間はチームの強化もままならなかった。そして開催国枠が3人制の女子にだけ認められず、この厳しい予選に臨まなければならなくなった。それでも馬瓜ステファニーは「個人の話で言えば、そのまま行ってたら勝てていなかったというのが大きい。この1年間いろんなことがあったけど、自分自身は成長できた。1年前のまま戦っていたらチームの足を引っ張ったかもしれない」と語る。
「男子チームも合宿で協力してくれて、ドイツとやったことでいろんな課題が見えて、短い中でも成長することができました。周りの協力なしではここまでできなかったので、感謝の気持ちが強いです。オリンピックに関しては自分たちではどうすることもできないですが、一番感じたのはスポーツを通じていろんな人に力を与えることができるということ。自分たちが与える側だと思っていたけど、力をたくさんもらったので、そう思うとやっていて良かったなと思います。オリンピック云々ではなく、スポーツの力を感じました」
その馬瓜は大会MVPを獲得。勝てば3位で出場権獲得となるスペイン戦、延長戦となった激闘に終止符を打ったのは、馬瓜の決勝シュートだった。「自然と練習した動きが良いところで出て、最後は倒れながら、あれは神様が助けてくれたシュートではあるんですけど、ゴール下から転びながらリングに入っていくところを見てて、本当にうれしかったです」とその瞬間を振り返る。
山本麻衣「10分間で出し切ればメダルの可能性は高い」
長谷川コーチは「世界ランキング1位のフランスに負けはしましたが、競って良いゲームができた。アメリカとはまだやっておらず、スペインに勝ったことを考えたら、世界でもベスト4には入るんじゃないかなと思っている」と、世界における日本の立ち位置を語る。「まだまだ選手一人ひとりが力を出していない。5人制の40分に慣れているので、10分間でいかにパフォーマンスを出せるかが今後のカギになる」
選手たちも、この厳しい予選でギリギリの試合を強いられながら目標を果たしたことで、それぞれ手応えを得て帰国している。
鋭いドライブと、相手のブロックをかいくぐるリバースレイアップで得点を重ねた篠崎は「今回の大会も全然通用しないということはなかった。日本のバスケができている時はどんな強い相手でも手応えを感じていたので、金メダルに届かないことはないと思いました」と語る。
高さとフィジカルに勝る相手に立ち向かい、泥臭い仕事でチームを支えるとともに良いところでシュートも決めた西岡は「個人としては課題が多く発見できた大会。日本はスピードや機動力は世界でも強みがあるチームだけど、高さの部分は苦しいです。そこは自分が助けられるところなので、もう少し成長していかないといけない」と振り返りながらも、「チーム全体としては良いところも出て、それが通用すれば世界でも全然戦える。あと7週間あるので、成長できると思うので楽しみ」と語る。
小さな身体で鮮やかな得点を連発して世界を驚かせた山本麻衣は、「3×3のバスケIQとスピード感は世界に通用する。10分間で出し切ればメダルの可能性は高いと思う」と自信をのぞかせる。今大会については「オーストラリア戦は久しぶりの国際大会で、良い意味での緊張感を持って臨みました。あとの試合は本当に楽しんで、みんなで声をかけながら楽しくできました」と振り返る。
今回の予選は、出場権を勝ち取っただけでなく、日本のスタイルを世界に問い、選手たちが経験と自信を得る貴重な場となった。ただ、オリンピックまでの7週間でライバル国が日本のスタイルを研究し、対策を打ってくるのは間違いない。あと7週間でどれだけ実力を伸ばせるか。伸びしろは十分だけに、期待して待ちたい。