オースティン・リバース

ラスト6分で14得点、『デイム・タイム』以上の爆発力を見せる

現地5月27日、ナゲッツは敵地に場所を移してのトレイルブレイザーズとの第3戦を120-115で制し、通算成績を2勝1敗とした。ほとんどの時間帯でリードしたもののブレイザーズに追い上げられ、第4クォーター残り8分からの2分間でカーメロ・アンソニーに連続8得点を許して91-91の同点に追い付かれた。

ここからデイミアン・リラードもスイッチを入れ、『デイム・タイム』がスタート。第2戦ではサイズとフットワークを兼ね備えたアーロン・ゴードンがマークして抑えたが、今回はリラードも対応し、ハーフコート付近までゴードンを引き出してはスピードで振り切る、そこでピックを使うことでズレを生み出した。勢いはブレイザーズに移り、ナゲッツは苦境に追い込まれていた。

ここで奮起したのがオースティン・リバースだ。指揮官のマイケル・マローンは「お前で勝負する。開いていたら思い切ってシュートを打つんだ」と彼に声を掛けたそうだ。それまで9本のシュートを放って3本成功、7得点。リバースはオフェンスの5番目か6番目のオプションだった。ここでニコラ・ヨキッチに頼るのは簡単だが、プレーオフはまだ先が長い。他の選手のステップアップが必要であり、マローンはそれをリバースに求めた。

「ヘッドコーチに『お前で勝負する』と言われて目の色が変わったよ。コーチから信頼されていると感じれば、選手には力になる」と語るリバースは期待に応え、91-91の均衡を打ち破る一発を皮切りに4本の3ポイントシュートを決め、フリースローも含めて試合終盤の6分間で14得点を記録。『デイム・タイム』を上回る爆発力で、ナゲッツに勝ち筋を作った。

ジャマール・マレーがシーズン絶望のケガを負う緊急事態で、ナゲッツは代役を務められる選手を必要としていた。マレーの離脱だけでなく、ガード陣の経験不足はナゲッツの大きな課題だった。リバースは派手なプレーヤーではないが、チームにバランスをもたらすことができる。マローンは言う。「彼が無所属で家にいたことは我々にとってありがたいサプライズだった。彼は本当の多くの仕事をこなせる選手で、プレーオフでの経験が豊富だ。ウチにとって必要なものすべてを備えていた」

リバースは試合後の会見で、ナゲッツで得られた充実感を語る。「これだけ受け入れてもらえるのは普通のことじゃない。これまでの人生で経験したことのないような歓迎を受けて、僕は自信を取り戻した。コーチもチームメートも、みんなが常に声を掛けてくれて、それが大きな力になるんだ。本当の意味でのチームだと思う。こんな感じでバスケができるのは本当に楽しい。バスケだけじゃなくカルチャーが僕に合っている」

ナゲッツと契約するまで、リバースは辛い日々を送っていた。ニックスではデリック・ローズの加入とともに出場機会を失い、サンダーにトレードされた後に解雇された。そこから約1カ月間、彼は家でただ電話を待っていた。「自分自身と対話していた。いくつかのチームは僕に興味を持ったが、僕の性格やロッカールームでどう振る舞うかという人間性の部分で確信が持てなかったようだ。正直、傷ついたよ。僕は誰かと揉めることなんてなかったからね」

ナゲッツのバスケットボール運営部長を務めるティム・コネリーはリバースの人間性を理解していた。リバースがドラフト指名された2012年、ホーネッツのアシスタントGMとしてかかわっていたからだ。「僕の気持ちが最も暗かったその時に、コネリーが電話をくれた。『君のことは分かっている。ウチに来てくれ』と言われたんだ。そうして僕はこの素晴らしいチームにやって来た。あの暗い時期を経験したからこそ、これが当たり前じゃないとすごく感じるよ。あんな状況には二度と戻りたくないから、何があってもコートでは全力を尽くすよ」

第2戦ではゴードンが、第3戦ではリバースが勝利をもたらす決定的な働きを見せたナゲッツ。日替わりでヒーローが出てくるチームは強い。若いチームはプレーオフの中でも成長を続けている。