Bクラブのキーマンに聞く
Bリーグ開幕が迫ってきた。日本のバスケットボール界が大きく変わろうとしている今、各クラブはどんな状況にあるのだろうか。それぞれのクラブが置かれた『現在』と『未来』を、クラブのキーマンに語ってもらおう。
取材・文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

2007年、栃木にプロバスケットボールチームとして誕生し、その翌年にはJBLに昇格。リンク栃木ブレックスは以後、地方に本拠地を置きながら強豪チームとしての存在感を年々増してきた。Bリーグ1年目の開幕を迎えようとしている今も、優勝候補の一角として見なされている。

栃木の熱いファンに支えられ、地方から全国制覇を目指すリンク栃木ブレックスの代表取締役社長、鎌田眞吾氏にクラブ経営とリンク栃木ブレックスの将来像を聞いた。


鎌田眞吾(かまた・しんご)
1977年、東京都出身。株式会社栃木ブレックス代表取締役社長。白鳳大学バスケットボール部で4年時に主将を務め、卒業後に大塚商会に入社。OA機器営業職に就きつつ、大塚商会アルファーズでプレー。2007年に大塚商会を退社後、ドリームチームエンターテインメント栃木に入社しスポンサー営業を担当。翌年から取締役に就任、2012年6月より代表取締役を務める。


ブレックスの営業は、モノではなく価値を買っていただくこと

──まずは鎌田代表とバスケットボールの関わりについて教えてください。

鎌田 中学生からバスケットボールを始めました。友達同士で部活に入るというタイミングで、少し背が高かったのでバスケットボールを選んだのがきっかけです。中学高校と、それほど強い学校ではなかったので、都大会に出るか出ないかぐらいのレベルでやっていました。その中で指導者の方に目を向けていただいて、(栃木県)小山市にある白鴎大学に入ってバスケットボールをやっていたのですが、それでも3部とか4部のレベルでしたね。

──そして大塚商会に入社するわけですね。

鎌田 大塚商会がバスケットに力を入れていくということで、お話をいただきました。私が引退する3年前から日本リーグでプレーして、そこではずっとキャプテンでした。2007年、29歳の時に引退して、そのタイミングで営業担当として入社して、2年目に取締役になりました。2012年から社長になりましたので、それまではずっと取締役兼スポンサー営業担当という形でした。

──大塚商会では会社の仕事をやりながらプレーされていたということですよね?

鎌田 そうですね。一般の営業職で、他の社員と変わりなく仕事をこなしながら練習をして、土日に試合をやっていました。そこで営業のやり方は吸収できたので、それを生かしてリンク栃木ブレックスでスポンサー営業をやったんです。

──大塚商会の営業とスポンサー営業はまた違うのでは?

鎌田 基本的に営業はお客さんとのコミュニケーションが非常に大事なところなので、7年ほどの経験はスポンサー営業にも使えました。ただ、売るものは全く違います。もともとは定価があるモノを売っていたのが、リンク栃木ブレックスでは価格設定を自分でやって、モノではなく価値を買っていただくようになりました。その点で難しさは結構ありました。

──鎌田さんは栃木とどんな繋がりがあったんですか?

鎌田 もともと東京出身です。高校までは東京でしたが、大学(白鴎大学)が小山市だったので、4年間は栃木県にいました。大学時代に国体の成年男子に選ばれたりして、栃木県のバスケットボール協会の方々とは交流があったんです。

──スポンサー営業をうまくやる秘訣を教えてください。

鎌田 やはり自分たちが、この栃木県でバスケットボールというもので、どれだけの思いで地域を盛り上げていくか、ですね。その思いの強さを伝えるというのは非常に大事です。栃木県のような地域ではネットワークが大事なので、その中でいろんな方を紹介していただいたり口コミなどで、良いサイクルで機能したと思います。

──運営会社である『株式会社栃木ブレックス』の経営状況はどんなものですか?

鎌田 現状としては黒字経営を続けています。行政やメディア、スポンサー、ファン、自分たちを取り巻くステークホルダーの方々との関係性がうまく行っていることが一つの強みです。売上が約6億、その半分以上がスポンサー収入という状況で、企業からの支援をいただけています。栃木のファンは熱いと言われていて、チケットを買って来ていただけるお客さんも大勢いらっしゃいます。それが良いサイクルになっています。

──順調経営を支える強みは地域密着でしょうか?

鎌田 地域密着の活動にはかなり力を入れています。年間でいくと去年も400回を超えていますから。回数をやることで、一般の方々との触れ合い、地元の方々との接点を増やしていくことですね。回数だけでなく内容にもこだわっています。様々なところで老若男女にアプローチできるよう、行政とも相談してやっています。県や市が抱えている問題をヒアリングして、一緒になって取り組むということですね。

──県や市の問題を解決するとなると、例えばどんな活動があるのですか?

鎌田 そうですね。例えば小学校から中学校に進学するタイミングでの不登校が非常に増えています。そこが課題となった時に、小学校や中学校の校門であいさつ運動をしている中にリンク栃木ブレックスも入らせていただいて。いろいろと話をしながら、課題が出てきたところで自分たちにどういう関わり方ができるかを考えながらやっています。ここは非常に良い流れができています。

年間400回を超える地域貢献活動。地元の人々との接点を増やすだけでなく、内容にもこだわっている。
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