ビッグラインナップで対抗「川崎に勝つためには変えざるを得なかった」
セミファイナル第2戦に完勝し、優勝した初戦度以来となるファイナルへの切符を手にした。
「前半は我慢の時間が長かった」と安齋竜三ヘッドコーチが語ったように、42-40と宇都宮のリードはわずかに2点だった。それでも「後半は選手の集中力も遂行力も高かった。チーム全員で戦って、ファイナルに繋げていけるような2試合だった」と振り返ったように、後半を54-38と圧倒して完勝した。
第1戦が3点差の勝利だったように、実力は伯仲していた。それでも第2戦でここまでの差がついたのは、第1戦と同様にインサイドの攻防で上回り、3ポイントシュートがよく決まったからだ。宇都宮はジョシュ・スコットとジェフ・ギブス、そして帰化選手のライアン・ロシターを同時起用する、いわゆるビッグラインナップを用いた。「川崎に勝つためには変えざるを得なかった」と言うように、レギュラーシーズンはほとんど使わなかった戦術だが、これが大いに機能した。安齋ヘッドコーチは言う。
「いつもと違うことをやって負けた時のダメージはめちゃくちゃ大きいです。その分プレータイムが減る選手も多く出てきますし。だから、昨日勝てたのが大きかった。初戦で選手たちが試合の中で解決してくれたのが良かった」
宇都宮は第1戦で25本ものオフェンスリバウンドを奪い、第2戦でも14本のオフェンスリバウンドを獲得し、セカンドチャンスポイントでも21-10と大きく上回ったことが一つの勝因となった。
実際、川崎の佐藤賢次ヘッドコーチも「一番キツかったのはルーズボールとリバウンド。本当にそこのフィジカルなところで、フィフティフィフティなボールをことごとく取りきれなかった」と試合を振り返っている。
「LJがダイブするシーンは見たことなかったです」
リバウンドやボールへの執着心、そして球際の強さは宇都宮の最大の強みだ。もちろんそれは、身長差やフィジカルの強さに左右されることも多く、安齋ヘッドコーチも「ビッグの4人、(竹内)公輔を含めてジェフ(ギブス)、ジョシュ(スコット)、ライアンの強さは外から見てもすごいと思うくらい」と言うほどだ。
それでも、こうした泥臭い部分は宇都宮だけが大切にしているわけではなく、多くのチームがそれぞれのスタイルの中で確実に取り入れている要素だ。なぜ宇都宮がこうした部分で突出する強さを誇り、全選手に浸透しているのか。それはベテラン勢が背中で見せているからだと安齋ヘッドコーチは言う。
「とりあえず飛び込めしか言わないので、教え方は僕も分からないです(笑)。ジェフのダイブもそうですし、(田臥)勇太を筆頭に長くウチにいる選手がそれを率先してやってくれるからですかね。特にLJ(ピーク)は今年ウチに入ってきて、めちゃくちゃダイブとかしてくれるんですけど、ヨーロッパの試合を見てる時にLJがダイブするシーンは見たことがありませんでした。なぜLJがそれをやってくれているかは僕にも分からないですけど、周りの選手がそれをやって、それで勝っているから引っ張られているんだと思います」
バスケに限らず、自分よりも年上の人が頑張っている姿を見て、「自分もやらなければ」と感化される人もいるはずだ。ましてや、それで結果を残しているのであればなおさらだ。こうした文化が根付いているからこそ、宇都宮は常に好成績を収め続けてこれたのだ。
レギュラーシーズンの積み重ねでリーグ最高勝率を勝ち取り、さらに新たな戦術も機能してファイナルへの扉を開いた。「自分で言うのもなんですけど、今このチームはめちゃくちゃ良いチームだと思います」。安齋ヘッドコーチがそう語るのは必然だ。