ポール・ジョージを相手に隙のないディフェンスで16得点に抑える
ラプターズは昨日の時点でプレーイン・トーナメント進出の可能性が断たれ、残り4試合を戦えばシーズン終了となる。現地11日にはクリッパーズと対戦。カイル・ラウリー、パスカル・シアカム、フレッド・バンブリート、OG・アヌノビーとコアメンバー4人を欠くラプターズに勝ち目はなかった。開始30秒にマーカス・モリスの3ポイントシュートで先制したクリッパーズは、そこから試合終了までリードし続けて、115-96の完勝を収めている。
ラプターズを率いるニック・ナースはこの試合前の会見で、7年連続を記録していたプレーオフ進出が途切れたことに「残念だし、悲しい」と率直な気持ちを明かすとともに、「7年間もプレーオフ進出を続けるのは簡単なことじゃない。組織として、自分たちが成し遂げたことを誇りに思うべきだ」とも語る。
直近の10試合で2勝8敗。コアメンバー4人が無理をせずに出たり出なかったりの状態ではプレーオフ進出を逃すのも無理はない。実際、このような起用法をすると割り切った約1カ月前の時点で、チームの目線は来シーズン以降に向けられていた。
ただ、その中でも個々の選手はモチベーションを失うことなく奮闘している。このクリッパーズ戦ではクリス・ブーシェイが3週間ぶりに復帰し、ケム・バーチとインサイドでコンビを組んだ。サージ・イバカとマーク・ガソルが退団したことでのインサイドの弱体化がラプターズ失速の大きな要因となったが、ブーシェイとバーチ、さらにルーキーのフレディ・ギレスピーがここに来て良い経験を積んでいることで、来シーズンに向けた状況は大きく改善している。
ポイントガードではラウリーとバンブリートの欠場が多かった分、マカライ・フリンが活躍している。4月に入ってからプレータイムが倍増して、プレーメーカーとしての役割も固まったことでスタッツも伸びた。ラウリーやバンプリートに比べればフィジカルと得点力で見劣りするが、バンブリートが今のフリンと同じようなスタッツを残すようになったのはNBA3年目のシーズンからだ。フリンはルーキーイヤーとしては十分な活躍をしていると見ていいだろう。また同じくルーキーのジャレン・ハリスも、これまではほとんど出場機会を得られなかったが、この数試合でチャンスを得て良い経験を積んでいる。
そして渡邊雄太は先発のチャンスこそ少ないものの、ラプターズらしい粘り強く隙のないディフェンスを安定して発揮しており、4月以降はオフェンスでも及第点以上の活躍を見せている。攻めのファーストオプションにはなれないが、チャンスが来れば迷わずアタックして、ジャンプシュートだけでなくペイントエリア内で接触を受けながらも得点を奪えるようになった。ラプターズでの1年目で大きな結果を出したと言える。
クリッパーズ戦では21分のプレータイムで8得点4リバウンド3アシストを記録。ここでも渡邊のディフェンスは効いていた。彼が主にマークを担当したのはポール・ジョージ。5月4日の対戦でもそうだったように、試合を通じて誰がマッチアップしてもジョージに3ポイントシュートを決めさせないのがゲームプランだった。ジョージとマッチアップした渡邊は、様々な駆け引きの中でも適切な距離を保ち、容易にシュートを打たせなかった。渡邊だけがマークしていたわけではないにせよ、ジョージの3ポイントシュートは9本中2本成功に抑え、フィールドゴールも15本中5本成功の16得点と抑え込んだ。チームは完敗を喫したが、対ポール・ジョージという局地戦ではラプターズが上回った印象だ。
トレードで獲得したギャリー・トレントJr.のように移籍市場で獲得できる即戦力はチーム力を大きく高める。ただ、オフになって新たなチーム編成を行う際に、既存の選手が成長していれば選択肢の幅が広がる。プレーオフ進出を逃したことでラプターズにとっては失意のシーズンとなったが、ニック・ナースの表情は暗くない。次の一手は、様々な方向ですでに打たれている。