宮澤夕貴

文・写真=鈴木栄一

チームが作ったチャンスを確実に決め、カナダに快勝

女子日本代表は、8月5日と7日にカナダ代表を迎えて国際強化試合を実施した。北米女子プロリーグWNBAがシーズン中で複数の主力を欠いた相手とはいえ世界ランキング5位の強国相手に連勝を飾った。

高崎アリーナで行われた7日の試合で3ポイントシュート8本中4本成功を含む22得点を挙げ、88−50の大勝の立役者となったのが宮澤夕貴だ。「今日は1試合を通してチームメートにノーマークで打たせてもらいました。それをいかに確率良く決められるかが自分の仕事です」と、役割をしっかり遂行できたことに安堵の表情を見せた。

アジア大会を制覇した昨年の女子代表において、宮澤の役割はシックスマンとしてベンチスタートからチームに勢いを与えるものだった。準決勝の中国戦、決勝のオーストラリア戦と2試合続けて2桁得点を挙げるなど、間違いなく主力の一人であったが、オフェンスの中心というわけではなかった。

しかし、あの激闘から1年後、宮澤の代表における立場は大きく変わっている。リオ五輪後から本格的に試合を打ち始めた3ポイントシュートは昨シーズンのWリーグで成功率47%という突出した数字で初のタイトルを獲得。名実ともに日本屈指の外角シューターの地位を確立した。宮澤の3ポイントシュートは代表でも攻撃に欠かせない武器となり、冒頭で触れたようにチームとして彼女に打たせることを『日本の形』として重要視している。

「代表合宿がスタートした最初の頃に行ったベラルーシとの練習試合から、自分が3ポイントシュートを決めてから始まることが多かったです。そこから自分が決めることで、チームを引っ張っていかなければという気持ちを持っています。自分はシューターなので、得点を取ることが自分の仕事です」
宮澤夕貴

「今が一番、リーダーシップを取らないといけない」

「自分のことをエースと考えていますか?」との問いにうなずくことはなかったが、自身が3ポイントシュートを決めることで、チームを流れに乗せるという強い責任感がある。『エース』の言葉は使わずとも、自分が中心選手にならないといけないとの覚悟を持つに至ったのは、吉田亜沙美、大﨑佑圭が代表から外れ、渡嘉敷来夢も故障によって離脱中とJX-ENEOSサンフラワーズのチームメートであり、長らく代表を支えてきた3人の不在が大きく影響している。

「JXだとリュウ(吉田)さん、メイ(大﨑)さん、タク(渡嘉敷)さんがいての自分です。JXでも確かにチームの中心ですけど、どこかで3人について行くというところがあります。ただ、今の代表はそうではなくて、自分が引っ張って行くという気持ちです」

「3人がいるJXでは、自分がミスをしても流れはそんなに変わらないです。でも今の代表で自分が3ポイントシュートを決められなかったり、ターンオーバーをしたら、流れが止まったり変わってしまうというのは分かっています。自分がしっかりしなければいけない。高校卒業後では今が一番、リーダーシップを取らないといけないと感じます」
宮澤夕貴

技術的にも精神的にもチームの中心へと成長

中心選手としての自覚があるからこそ、3ポイントシュートに代表されるオフェンスだけでなく、ディフェンスでもチームを支えたいと語り、特にリバウンドを強く意識している。

「世界の強豪が相手だと高さでは相手がかなり上で、インサイドの選手たちはボックスアウトするので精一杯になってくる場合もあります。そこで自分のような3番の選手が、リバウンドに加わったら取れるようになります。自分のマークしている選手が外にいることが多く、難しいところもありますが、それを言い訳にしてはいけないです。リバウンドを取ることも自分の仕事と思っています」

これまでの経験豊富な選手たちについていく立場から一転し、宮澤が経験不足な若手を牽引し、彼女たちを引き上げられ存在になることは、ワールドカップでのメダル獲得に欠かせない。若手の台頭が目立つ女子日本代表だが、リオでは若手の立ち位置にいた宮澤が経験を重ね、技術的にも精神的にもチームの中心へと成長している。これも強さを支える大きな要素だ。