『内紛』が表面化した後、見違えるようなバスケでホークスを撃破
レギュラーシーズンも残り数試合となり、東カンファレンスはホーネッツ、ペイサーズ、ウィザーズが1.5ゲーム差の中でプレーイン・トーナメントに進む順位争いを繰り広げています。4月になって順位を上げてきたウィザーズに勢いがある一方で、ケガ人も多いホーネッツとペイサーズは調子を落としています。
そんな中でペイサーズはマルコム・ブログドンやマイルズ・ターナーが離脱して苦しいチーム状況に追い打ちをかけるように、ヘッドコーチのネイト・ビョーグレンと選手、チームスタッフの間に大きな溝ができているとの報道が出てきました。周囲の意見に耳を貸さないビョーグレンに対し、中心選手のドマンタス・サボニスやブログドンから不満が出ており、加えてサンズ時代にビョーグレンと面識があったTJ・ウォーレンに至ってはヘッドコーチ就任が決まった段階でトレードを要求していたと言われています。
さらにこの報道直後に行われたキングス戦では、試合中にもかかわらず、アシスタントコーチのグレッグ・フォスターがセンターのゴガ・ビタゼに対して怒鳴りつける事件も発生し、チームから出場停止処分が下されるなど、選手とコーチングスタッフの間に軋轢が生じていることを裏付ける形となりました。
そもそもペイサーズは、選手と強固な信頼関係を築いていたネイト・マクミランを昨シーズン終了直後に解任しています。ディフェンスの構築に特徴があった前任からビョーグレンに切り替えたのは、個人能力に依存したオフェンスを改善し、プレーオフで勝てるチームへとステップアップするためでした。シーズン開幕直後はこれまでのペイサーズでは感じられなかった戦術面の工夫がみられ、開幕1カ月を11勝7敗と順調なスタートを切りました。
しかし、そのオフェンスは次第にサボニスとブログドンに頼り、単調なパターンに陥りました。特にサボニスは本来インサイドの起点としてコンビプレーで非凡な能力を発揮する選手ですが、個人でペイント内を攻めていくプレーが求められると、効果的なチームオフェンスに繋がりません。サボニス本人が好むスタイルではなかったこともあり、この頃からビョーグレンに対する不満が募っていったのかもしれません。
その後、主力選手が次々と離脱し、成績は5割を下回るように。ビョーグレンも試合中にレフリーに怒りを露わにすることが増え、チーム状況が良くないことはうかがえましたが、今回、チーム内の内紛が表立って報道されたことで、ペイサーズはさらに苦しい状況に追い込まれたと言えます。
ところが迎えたホークス戦でペイサーズは全く違うチームに変貌しました。ビョーグレンが折れたのか、選手たちが自発的に変えたのか、その理由は分からないものの、35ものアシストによりフィールドゴール成功率が62%を記録する鮮やかなコンビネーションオフェンスでホークスに打ち勝ったのです。
キーポイントになったのはこれまでと同様にポストで起点になるサボニスでしたが、個人技でペイント内に押し込むプレーは一切行わず、ギブ&ゴーで飛び込んでくるキャリス・ルバートやダグ・マグダーモットに見事なパスを通し、さらに自らはステップバックでミドルシュートを沈めていきました。3ポイントシュートも3本決めたサボニスに対して、ホークスディフェンスは外まで追いかけるしかなく、するとルバートのドライブを止められなくなります。サボニスがインサイドを攻め、チームメートがパスアウトを待っていた従来のオフェンスと大きく異なり、インサイドを攻略し続けたことで3ポイントシュートは20本のアテンプトしかありませんでした。
鮮やかなコンビプレーの連続でオフェンスを構築したサボニスがフィールドゴール14本中12本を成功させ、30得点9アシストしただけでなく、6人が2桁得点を記録する見事なバランスアタックとなりました。スーパースターがいない代わりに層の厚さで勝負できるペイサーズらしさが、内紛を経て突如として戻ってきた印象です。
プレーインに進んだところであっさり負けると考えられていたペイサーズですが、ホークス戦の内容を繰り返せるのであれば予想も変わってきます。残り6試合で大きな転換期を迎える中、次はウィザーズとの直接対決となります。直近の対戦でラッセル・ウェストブルックの24アシストを筆頭に50アシストで154失点を喫した相手に、全く違う姿を見せられるかどうかが注目されます。