サディック・ベイを始め、ブレイクが期待できる若手は多数
ピストンズは開幕4連敗から始まり、19勝43敗の現在に至るまでずっと低空飛行を続けている。プレーオフ進出の希望は、デリック・ローズに続いてブレイク・グリフィンがチームを離れた2月中旬の時点でもう潰えていた。あと半月で彼らのシーズンは終わるが、逆に言えばその先の計画は立てやすい。構想外の選手はすでにチームを離れている。今いる選手たちはシーズンが終わっても少しの休息を挟んで、来シーズンの開幕に向けた大事な夏を迎える。
ヘッドコーチのドウェイン・ケーシーは「身体作り、ボールハンドリングとシュート、練習への取り組み方、栄養まで、様々なことに取り組んでもらわなければいけない」と語る。「我々はシーズンが終わったタイミングで選手たちとじっくり話し合うつもりだ。トロイ(ウィーバーGM)もコンディショニングコーチも彼らと話す。夏に向けて我々が何を期待しているか、彼らがどこで何をして、何を見てほしいのか。選手たちには残り試合でのパフォーマンスはもちろん、夏にやってほしいことがたくさんある」
指揮官はシーズン序盤にすべての選手と面談しており、シーズン終了後の面談はそのアップデートとなる。ただ、まだ今はレギュラーシーズン最後の10試合が待っており、そこも来シーズン以降のチーム作りにできる限り活用するのかケーシーの考えだ。
ピストンズが来シーズンにいきなり強くなる兆候は今のところ見られない。ジェレミー・グラントとメイソン・プラムリーが攻守の軸で、彼らの周りに将来性のある若手が多くいるものの、ザイオン・ウイリアムソンのような成功が約束されたビッグネームがいるわけではない。だからこそケーシーはシーズン最後の試合まで、そして夏の間も丁寧にケアをして、若い選手たちの可能性を引き出そうとしている。ここで注目されるのがルーキートリオ、キリアン・ヘイズとアイザイア・スチュワート、サディック・ベイだ。
1巡目7位で指名されたポイントガードのヘイズは、開幕から8試合に出場したところで股関節を痛め、4月になってようやく復帰。それから9試合に出場し、6.5得点、5.0アシストを記録している。突出したスタッツを残しているわけではないが、ケーシーは「彼のコートビジョンは他の選手にはないものだ。彼の創造性を奪うことなく経験を積ませたい。コンディションを取り戻し、試合を重ねてNBAのヘビーなプレーに慣れてもらいたい」と言う。
スチュワートは1巡目16位でトレイルブレイザーズに指名されたビッグセンター。交渉権がロケッツに移り、クリスチャン・ウッドとのトレードでピストンズにやって来た。スタッツでは経験豊富なプラムリーが上を行くが、攻守で見せるエナジー満点のインパクトは若いスチュワートが断然上だ。ガッツが空回りすることもあるし、オールドスタイルのセンターだけに評価されづらい部分はあるが、シーズンを戦う中でシュート技術が向上するなど、このまま成長を続けていけばより重要な役割を任せることもできそうだ。
ベイは1巡目19位でネッツに指名されて、ピストンズにトレードされた。ここまで62試合のうち欠場はわずか2試合、43試合で先発を任されて、3ポイントシュート成功率37.7%、11.3得点を記録している。チームがずっと負け越しているため評価が低いが、新人王候補に推す声もある。ケーシーは「大学時代はミッドレンジで点を取る選手だったが、NBAですぐにリーグを代表するシューターになった。新人王になるかどうか私には判断できないが、その議論に入れていい選手だとは思う」と言う。
他にも主力の働きを見せるジョシュ・ジャクソン、セクー・ドゥムブヤにタイラー・クックと見どころのある若手は多い。「ここまで若手を様々な組み合わせで起用しているが、3ガードのラインナップを試してみたいし、ゾーンももう少し使ってみたい」とケーシーはすべての機会を生かそうとしている。ほとんど注目されない地道な作業だが、これが将来に『強いピストンズ』を作る礎になると彼は信じている。