ジャマール・マレー

抜群の勝負強さを持つマレーが離脱、その穴をどう埋めるか

ナゲッツにとっては最悪のニュースだ。ウォリアーズ戦の終盤、ドライブでペイントエリアに入ったジャマール・マレーが、トップスピードでシュートのために踏み切った際、左膝が弾けた。そのまま崩れ落ちたマレーはひどく痛がり、そのままロッカールームへ運び出された。大ケガであることは明らかだったが、また検査を行っていない試合後の段階で、指揮官マイケル・マローンは「負けたこと以上に、彼のことでロッカールームの雰囲気は重苦しかった」と言い、モンテ・モリスは「彼の存在の大きさは言うまでもないよね。ケガについては話したくない」と沈痛な表情で語った。

検査の結果は、左膝の十字靭帯断裂。今シーズンの復帰は絶望となり、プレーを再開できるのは早くても来シーズンの後半だろう。昨シーズンはカンファレンスファイナルまで勝ち上がったナゲッツにおいて、マレーは大きな部分を占めていた。ポイントセンターのニコラ・ヨキッチが平均26.2得点、10.9リバウンド、8.8アシストとトリプル・ダブルを連発する好調をキープしているが、ヨキッチの多彩さと安定感にマレーの爆発力が噛み合っていたことが、ナゲッツの最大の強みだ。

今シーズンのマレーは、プレーオフの疲労が抜けきらないまま開幕を迎え、過密日程への対応にも苦しんでなかなか本領発揮とはいかなかった。それでもここまでの21.2得点はキャリアハイの数字であり、この数週間で調子を取り戻しつつあった。プレーオフに入ればマレーの爆発力、土壇場での勝負強さはヨキッチ以上の武器となる。昨シーズンのプレーオフ、1勝3敗からジャズを、クリッパーズを逆転で屠った痛快な戦いぶりは、マレー抜きには語れない。

そのマレーが戦線離脱となり、ナゲッツのポイントガードはモンテ・モリスとファクンド・カンパッソの2人で回すことになる。このチームではヨキッチもクリエイトできるし、モリスもプレータイムが伸びることで平均10得点は計算できる。カンパッソはその視野の広さとクリエイティブなセンスでNBA1年目から存在感を発揮している。PJ・ドジアーのプレータイムも伸びるだろうし、フリーエージェントのポイントガードの補強もあるかもしれない。

ゲームメークの点ではマレーの不在をカバーすることはできる。問題は得点力、それも競った展開の中でチームを勝ち筋に乗せる力だ。ここはヨキッチの、そしてマイケル・ポーターJr.のさらなる奮起に期待したいところだが、ただでさえヨキッチは攻守に負担が大きく、ポーターJr.も実質キャリア2年目のシーズンで十分すぎるほどに働いている。

その点ではアーロン・ゴードンのステップアップが求められる。ゴードンはナゲッツに加入して、ディフェンスに軸足を置くプレースタイルへとシフトした。彼がフィジカルとサイズを生かして相手のエースを抑えることで、ナゲッツのディフェンスは大きく改善された。その一方でマジック時代と比べてアタックに行く回数が減り、シュートアテンプトも得点も、フリースローの獲得数も落ちている。ゴードンが攻撃でもより多くの責任を担い、結果を出すことが今のナゲッツには必要だ。

マレーを襲った不運を嘆くのは昨日だけでいい。それぞれの選手がステップアップしてマレーの穴を埋めなければならないし、マローンを始めコーチングスタッフはマレー抜きのバスケをあらためて構築しなければならない。レギュラーシーズン終了まであと1カ月、4位以内に入ってホームコート開催を確保することも加え、ナゲッツにとっては難しい戦いが続く。