前半だけで23得点「全部うまくいくという感覚」
秋田ノーザンハピネッツは週末に行われた川崎ブレイブサンダース戦を1勝1敗で終えた。初戦は27点差の大敗を喫したが、第2戦は93-84で勝利と見事なバウンスバックを果たした。
秋田はカディーム・コールビーの負傷離脱以降、外国籍選手が2人で戦う状況が続いている。川崎は外国籍の選手層ではリーグ屈指で、さらに帰化選手のニック・ファジーカスも擁し、秋田にとっては分が悪い。その中で第2戦に勝利できたのは、細谷将司の活躍を抜きには語れない。
ベンチからコートに送り出された細谷はすぐさま積極的に攻め、3ポイントシュートにフローターを次々と成功させる。一時は2桁のビハインドを背負ったが、細谷が前半だけで23得点の大爆発を見せたことで、互角の試合を演じた。後半もパフォーマンスを落とさず、細谷は約25分の出場で9本中6本の3ポイントシュート成功を含む、31得点5アシストを記録して勝利の立役者となった。
細谷は「目の前が空いたら打つ、ドライブしてキックアウトをして、シンプルにやっていくというゲームプランだったので、それがハマってスコアに繋がったと思います」と語った。難しく考えずシンプルな思考をそのまま体現したことが好パフォーマンスに繋がったと言うが、それだけではキャリア2番目に多い31得点を稼ぐことはできないはずだ。
細谷はいわゆる『ゾーン』に入っていた。そして、そうなる条件が整っていたと分析する。「僕自身、最初のシュートが入ったり、パスもアシストもなんですけど、最初のアクションで納得のいくムーブが出るとリズムに乗るんです。1本目からその感覚があって、3ポイントにフローター、すべて入ったので今日は行けるなって感じでした。クローズアウトされてもブロックされることはない、全部うまくいくという感覚がありました」
秋田の前田顕蔵ヘッドコーチも「細谷がステップアップしてくれた」と称賛した。「最近ずっと苦しんでいる部分が彼の中でありましたが、オフェンスでいつもより積極的に攻めてくれました。普段だったらシェアを気にして交代する場面もあるんですけど、そのまま使い、パフォーマンスを下げずにディフェンスもしてくれました。いつもとは起用の仕方が違う中で良くやってくれました。ボロボロだと思います(笑)」
前田ヘッドコーチがそう語ったように、最初から飛ばし続けた細谷は「秋田のスタイルだと『もって15分』だと思っていて、前半が終わった時点で手が震えていました」と、すべてを出し尽くしていたことを明かした。
「9人しかいない中で川崎さんに勝てたのは自信になった」
過去にも、細谷は前半だけで20得点近く挙げるような爆発力を見せることがあった。それでも後半に失速したり、自身のスタッツは残しても試合に負ける経験を数多くしてきた。この試合では自身も最後までパフォーマンスを落とさず、チームを勝利に導くこともできた。それでも細谷はこの結果を「間違いなくチームのおかげ」と言い切った。
「他の選手が良いところでシュートを決めてくれましたし、みんながアグレッシブに行ったことが勝てた要因です。古川(孝敏)さんが『パスを出してやるから、お前は待ってろ』と声をかけてくれたし、他の選手も『待っててください』と言ってくれたので、僕自身もすごく楽に打てました。そういう信頼関係があっての勝利でした」
前半で体力を消耗した細谷はハーフタイム中に「次はお前らだよ。後半は頼むわ」と、チームメートに思いを託したという。その思いが保岡龍斗の13得点、大浦颯太の6得点3アシストと後半の活躍に繋がった。
細谷の活躍が勝利の大きな要因になったことは間違いない、だが、外国籍選手のマークにつくことも多かった古川や中山拓哉が身体を張って踏ん張り、川崎の強力なインサイド陣に対してアドバンテージを作らせなかったアレックス・デイビスやハビエル・カーターのパフォーマンスがあってこその勝利でもある。細谷はそれを分かっているからこそ、「チームの信頼感が増した試合だった」と語った。
会心のパフォーマンスで川崎を撃破し、連敗を6で止めた秋田。前田ヘッドコーチは「正直、ワイルドカードではなく、チームが勝つためには何が必要なのかということだけに焦点を当てていました」と語ったが、ワイルドカードでのチャンピオンシップ出場の可能性は残されている。「9人しかいない中で川崎さんに勝てたのは自信になった」と細谷が語ったように、全員バスケを突き詰めた先には奇跡が待っているのかもしれない。