「キャリアは終わっていない。ファンが恋しい」
現地3月24日にフロリダ州タンパのアマリー・アリーナで行われたナゲッツ戦後、カイル・ラウリーはロッカールームに戻る際にカメラに向かってピースサインをした。しかし、その表情は涙を堪えているようにも見えた。
今シーズン終了後にはフリーエージェントになるラウリーは、明日のトレードデッドラインを目前に控え、トレードが濃厚と報じられている。今シーズンがラプターズ在籍9年目のラウリーは、2019年の球団初優勝に大きく貢献したばかりか、ラプターズを常勝チームに成長させた一人だ。その功績は残したスタッツを見ても明らかで、通算アシスト(4206)、スティール(867)、3ポイントシュート成功数(1488)、トリプル・ダブル(16)は球団歴代1位で、『ミスター・ラプターズ』に相応しい。
誰もが最大の功労者と認めるラウリーを、ヘッドコーチのニック・ナースも「球団史上最高の選手」と絶賛した。ラウリーは、ナースのコメントを聞くと「それは周りが決めること。ニックにそう言ってもらえるのは本当にうれしい」と答えた。
試合後の仕草を見ても、ラウリー本人が退団を覚悟していることがうかがえた。おそらくラプターズでのラストゲームになったナゲッツ戦で、ラウリーはフィールドゴール5本中3本成功の8得点5リバウンド9アシストを記録。出場時の得失点差を表すプラスマイナスは、キャリアハイの+42だった。それでもラウリーは「今日の試合で5本のシュートを打ったけど、正直言ってどうでもよかった」と語った。
トレードについては「分からない。でも、すべての出来事には必ず理由がある。現段階では僕は何も知らない」とコメントしたが、NBAキャリア14年の大ベテランならば、これからトレードデッドラインまでに起こるシナリオを把握している。
新型コロナウイルスの影響により、今シーズンのラプターズは代替ホームとしてフロリダでプレーしている。ラウリーは、自分に声援を送ってくれるトロントのファンの前でラストを飾りたかったのだろう。トロントでの思い出を聞かれると、彼はこう答えた。
「自分のストーリーはまだ続く。キャリアは終わっていない。ファンが恋しい。トロントの雰囲気、あの力強い雰囲気が恋しいよ」