栃木ブレックス

スポーツナビでは現在、『あの名勝負をもう一度! バスケットLIVE復刻配信』と題して、今なお色褪せない試合をフルゲームで無料公開している。Bリーグ、日本代表、ウインターカップ、インカレから厳選された11試合の中から、今回は初代Bリーグ王者の称号を懸けて戦った、栃木ブレックスと川崎ブレイブサンダースによるBリーグファイナルの試合を紹介する。

1ポゼッション差を争う接戦が最後まで続く

Bリーグが誕生した2016年、初代王者を決めるファイナルの舞台に勝ち進んだのは、49勝11敗で最高勝率を残した川崎ブレイブサンダースと46勝14敗で同2位の栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)だった。

川崎はクォーターファイナルでサンロッカーズ渋谷(32勝28敗)に連勝し、セミファイナルでアルバルク東京(44勝16敗)と激突。1勝1敗で迎えた第3戦を26-18で制しファイナルへ駒を進めた。一方の栃木もクォーターファイナルで千葉ジェッツ(44勝16敗)を連勝で退けると、シーホース三河(46勝14敗)とのセミファイナル第3戦に14-12で勝利してファイナルに進出と、同じ道を辿った。

会場となった代々木第一体育館には『歴史的開幕戦』を上回る1万0144人もの観客が詰め寄せた。試合は前半のオン・ザ・コート数に違いが見られ、第2クォーターに「2」を選択した栃木がそのメリットを生かして先行。ジェフ・ギブスがジュフ磨々道との1対1から優位を作り流れを呼び込むと、このクォーターだけで10得点を固めた古川孝敏の活躍が光り43-37で前半を折り返した。

田臥勇太

記憶に残る田臥のダイブ

だが、後半に入ると、ここまで栃木の徹底マークに苦しんでいたニック・ファジーカスが得点を重ねることで川崎が反撃。磨々道がリバウンドやディフェンスで奮闘しファジーカスの負担を減らすと、ライアン・スパングラーのバスケット・カウントも飛び出して、63-59と逆転して最終クォーターを迎えた。

終盤までリードチェンジを繰り返す一進一退の攻防が続いたが、ポゼッション数で上回った栃木がわずかに抜け出す。残り2分19秒、2度のオフェンスリバウンドを取ったギブスが『3度目の正直』で得点を挙げて3点をリード。そして、3点差のまま迎えた残り1分、タイムアウトを取った川崎にミスが出た。スパングラーを狙った篠山竜青のアリウープパスが逸れてターンオーバーに。そして、これで得たポゼッションで田臥勇太が絶妙なパスを通して、ギブスのリバースレイアップをお膳立て。最終クォーターで初めて1ポゼッション差から先のリードを奪った栃木がファウルゲームを乗り切り、85-79で勝利した。

会場は栃木のファンが多く見られ、赤よりも黄色が目立った。田臥は「ファンのためのチームだと思っています。黄色で染まった会場は素晴らしかった。栃木の環境は特別だと思います」と、ファンの後押しを勝因に挙げた。

ファイナルMVPにはゲームハイの25得点を挙げた古川が選出された。また、残り16秒に田臥がコートの外までボールを追いかけ、観客席にダイブしたシーンは多くのファンの記憶に残ったはずだ。初代Bリーグ王者の称号は栃木が手にしたが、負けてなお川崎強しの印象も持たせた。初めてのBリーグファイナル。この記憶はいつまでも色褪せない。