三好南穂

三好南穂「今度はうれし涙を流そうと話してやってきた」

Wリーグのファイナル第2戦、初戦を取ったトヨタ自動車アンテロープスがこの試合でも攻守に完璧なプレーを40分間続け、ついに『女王』ENEOSサンフラワーズを乗り越えた。

この日も先手を取ったのはトヨタ自動車だった。長岡萌映子の連続3ポイントシュートで試合はスタートし、河村美幸のジャンプシュート、三好南穂の3ポイントシュートと開始3分で11-0とリードを奪う。しかし、シュートが外れ始めると打ち急いでのタフショットが増え、ENEOSがリバウンドから走る展開に。ENEOSは試合開始から0-21と圧倒された前日の再現がなくなり、先発に据えられた石原愛子、宮澤夕貴の得点で押し返す。

ENEOSが流れを引き寄せつつある中で迎えた第2クォーターだが、ここで存在感を見せたのはアーリーエントリーのシラ・ソハナ・ファトージャだ。第1戦ではプレータイムのなかったファトージャは、投入されるとインサイドのポジション争いで立て続けにファウル2つをコールされるが、落ち着いてからは187cmの長身に長い腕、俊敏な動きと跳躍力でゴール下で存在感を発揮。7得点3リバウンドでチームに勢いを与えるとともに、彼女が6分半プレーして先発メンバーを休ませたことが、第3クォーターに繋がる。

33-29で迎えた第3クォーター、ENEOSがサイドラインに押し込む猛プレスからスティールに成功すれば、そこから始まった岡本彩也花の速攻にしっかり身体を寄せてシュートを落とさせるトヨタ自動車の好守も見られる激しい攻防の中、次第にトヨタ自動車が押し始める。初戦で違いを作ったリバウンドの差が、ここで出始めていた。第2クォーターにベンチで休むことのできた長岡、河村がゴール下を支配し始め、リバウンドで優位に立つことで外からのシュートも思い切り良く打てるようになる。この第3クォーターを圧倒し、53-38とリードを広げて最終クォーターを迎えた。

馬瓜エブリン&馬瓜ステファニー

プッシュする勢いを落とさず、最後まで真っ向勝負

それでもENEOSの『終盤力』は常識では測れないものがある。第4クォーターに入るとディフェンスの足が復活。猛烈なプレッシャーを掛けてトヨタ自動車の攻めを展開させない。ただ、トヨタ自動車は攻めで打開できなくてもENEOSに負けないディフェンスで我慢勝負に持ち込む。また、ここで攻めのペースを落として試合を落ち着かせようとすると、積極性を失ってENEOSの勢いに飲み込まれてしまう。三好と安間志織はプッシュする勢いを落とさず、ENEOSとの真っ向勝負を挑み続けた。

その中でステファニーがスピンムーブからの豪快なフックシュートを沈めてバスケット・カウントを獲得。ボーナススローも決めて59-46とENEOSを突き放す。ステファニーは前に前にとプレッシャーを掛けるENEOSの裏を突くオフボールカットでのイージーなゴール下、フリースローと、大事な時間帯に貴重な得点をチームにもたらした。

藤本愛瑚の連続得点でENEOSが粘りを見せるが、残り1分半にチームで作った左コーナーからの3ポイントシュートを山本麻衣が決めて67-53と突き放す。トヨタ自動車の集中は最後まで途切れず、70-60で勝利。ファイナル2連勝でWリーグ初優勝を決めた。

会場インタビューで馬瓜エブリンは「ようやく歴史を変えました」と絶叫。安間は「全員が勝ちたい気持ちを持つチーム。それが優勝に繋がった」と喜びを語る。試合終了を待たずして涙をあふれさせていた三好は「皇后杯では悔しい涙を流して、今度はうれし涙を流そうと話してやってきたので、実行できて良かったです」と語った。

トヨタ自動車にとってはこれがWリーグ初優勝。一方のENEOSは連覇が11で途切れた。プレーオフMVPにはトヨタ自動車の司令塔、安間詩織が選ばれている。

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