「ディフェンスのカバーのやり方を見て、弱い部分を突いていく」

11月6日、サンロッカーズ渋谷は水曜日のナイトゲームでファイティングイーグルス名古屋と対戦。序盤から強度の高いディフェンスで流れを引き寄せてリードを奪うと、80-66で逃げ切った。これでSR渋谷は4連勝とし、今シーズン8勝4敗と貯金を増やしている。

SR渋谷は、試合の立ち上がりから激しいプレッシャーをかける守備でFE名古屋にタフショットを打たせて失点を防ぎ、第1クォーターで21-10と主導権を握る。第2クォーターに入ると、FE名古屋もアーロン・ヘンリーの卓越した打開力で反撃を試みるが、SR渋谷は活発なボールムーブからオープンの機会を作り出し、このクォーターで3ポイントシュートを10本中6本成功させる。この長距離砲の爆発によってさらに突き放し、前半を22点の大量リードで折り返した。

後半に入ると、SR渋谷はFE名古屋の守備の圧力に苦しめられてターンオーバーが増えるなど、リズムを崩し第3クォーターでわずか10得点と失速。しかし、ジョシュ・ホーキンソン、リード・トラビスがゴール下の攻防で優位に立ち得点を重ね、常に2桁のリードを保つ危なげない試合運びで逃げ切った。

SR渋谷のルカ・パヴィチェヴィッチHCは、勝利をもたらした堅守について次のように振り返る。「守備の目標としてまずは(ショーン)オマラ選手のオフェンスリバウンド、リムラン、ゴール下へのプレーを止める。そして(田中)大貴がヘンリー選手についてしっかりディフェンスをしてくれました。チーム全体として、並里(成)選手のスピードやアタック、佐土原(遼)選手のエナジーあふれるプレーを止められたのは素晴らしかったです」

この試合、SR渋谷のアンソニー・クレモンズは、チームトップの18得点に加えて7アシスト4リバウンド2スティールの大暴れだった。SR渋谷は4人が15得点以上を挙げ、3ポイントシュート成功率は45.8%(11/24)と、内と外のバランスが取れたオフェンスが光った。クレモンズは、「ダイナミックに攻めることが大切です」と語り、司令塔としてチームで攻めることができたことへの手応えを感じている。「相手ディフェンスのカバーのやり方を見て、弱い部分を突いていく。このチームはガード、ビッグマンと両方で良い選手が揃っています。しっかりと全員が試合に絡むように、内と外の使い分けをやっていきたいです」

今シーズンがチーム2年目となるクレモンズだが、昨シーズンの特に前半戦は初めてのBリーグへの適応に苦しみ本来の実力を発揮しきれずにいた。しかし、Bリーグのスタイルにも慣れた今シーズンは、「このチームはタレントが揃っていますし、2年目という経験が大きな助けになっています。新しいメンバーも助けてくれていますし、昨シーズンよりも自分の仕事はやりやすいです」と、開幕当初から好調を維持している。実際に、ここまで平均14.4得点、6.8アシスト(リーグ2位)、3.8リバウンド、2.1スティール(同4位)を記録と、攻守でハイレベルなプレーを見せている。

ルカHC、「今、彼にしかできないクリエイティブな展開を見せてくれています」

また、ルカHCは「相手は必ず日本人の大きいガード、タフな強いガードをぶつけてきます。そこでターンオーバーをしないで強く戦い抜いて、ディフェンスをしっかりしないといけないです」と言い、外国籍ポイントガードが活躍することの難しさを言及しつつ、クレモンズの変化について次のように語った。

「昨シーズン、そこについて彼と話をしました。彼も最初は日本人ガードを相手にするのは(ヨーロッパに比べて)簡単という考えがあったかもしれないですが、そこは違うよとしっかり伝えました。昨年のバイウィークに入る前、彼はこのままではダメだと気が付き、自分のやらないといけないことにコミットし、どういう風に戦わないといけないのか理解してプレーしてくれました。それによってこれまでの活躍があると思います。今、彼にしかできないクリエイティブな展開を見せてくれています」

指揮官も信頼を寄せる個の打開力に優れたクレモンズだが、特に目立つのはアシスト数で昨シーズン(平均4.5)より1試合平均で2本以上多い。ここまでの12試合で開幕2試合目を除く11試合で5アシスト以上と、攻撃の起点として高値安定のパフォーマンスを披露している。アシストの増加について、本人は「チームメートがシュートを決めてくれるおかげです」と感謝を強調する。

「自分たちのダイナミックなオフェンスができれば、みんなが良いシュートを打つチャンスがあることはわかっています。みんなに正しい場所、タイミングでパスを出せるように、ベストを尽くしています。それがアシストが増える結果に繋がっています」

今更ではあるが、クレモンズのニックネームはサップで、これはNFL(アメリカンフットボール)で1990年代後半から2000年代に活躍した名選手ウォーレン・サップが由来だ。サップは140kg近い巨体を生かした強烈な突進により、NFL史上に残る守備選手として名を馳せた。。サップの全盛期、子供だったクレモンズは「6歳とか7歳の子供の頃から、僕は身体が大きくて激しいプレーが好きなタフな選手でした。それで僕のメンターが、サップというニックネームをつけてくれました。彼のような偉大な選手の名前をつけられたのは誇りに思っています」と教えてくれた。

Bリーグにしっかりと適応し、子供の頃から変わらない闘争心でチームを鼓舞するクレモンズ。本来の創造力を取り戻した現在の彼はリーグ屈指の万能ポイントガードとして、これからさらに存在感を増していくはずだ。