「誰かに任せたり、頼ってしまう時間が多かった」
Wリーグのプレーオフ、セミファイナルでデンソーアイリスは12連覇を目指す『女王』ENEOSサンフラワーズと対戦。2戦先勝のセミファイナルで第1戦を72-73で落とし、ENEOSに先手を許した。
マリーナ・マルコビッチヘッドコーチが「コメントをするのが難しい。ずっと良いプレーをしていましたが、最後に何が起こったのか分からないゲームでした」と試合後に語ったように、運動量やリバウンドで上回ることで長くリードを保っていたのはデンソーだった。
結果的には敗れたものの、ゲーム内容的にはほぼ互角。むしろ、第3クォーターの終盤からはデンソーが強度の高いディフェンスからのトランジションで主導権を握り、第4クォーター早々に髙田真希の3ポイントシュートでリードを2桁に広げていた。終盤にENEOSが『女王』の意地を見せ始めた際も動揺せずに対峙していた。ENEOSのキャプテン、岡本彩也花は「正直、ヤバいと思った」と明かしているし、会場で試合を見ていたENEOSのファンも、逆転の可能性を信じることができたのは残り13秒で1点差に詰め寄ってからだろう。
髙田は試合後の会見で「今日はオフェンスの終わり方が良くなくて、勝っている時もターンオーバーで終わることがありました」と振り返る。髙田が言うように、デンソーは終盤で相手のオールコートプレスに圧倒され、ターンオーバーを連発してしまった。
2桁のリードがあったからといって気の緩みがあったわけではないのだが、髙田は「こういう結果に終わってしまったので、気の緩みだったり、点差が離れていたから受け身になってしまった、となっても仕方がない」と言う。「実際に試合に出ていても、相手ディフェンスのプレッシャーに対してチームでボールを繋いだりする部分が疎かになっていました。誰かに任せたり、頼ってしまう時間が多かったので、こういう結果になってしまった。点差とかは関係なく、自分たちが目指すバスケットを40分間やらなければいけないと感じました」
髙田が言うように、指揮官も「選手たちにはいつも『ゲームは40分間』と伝えていますが、今日は残念なことに38分しかできませんでした」と語っている。
全員のステップアップなくして、ENEOS撃破はない
62-78で敗れた12月の皇后杯準決勝に続いての黒星とはいえ、内容は全く違った。ENEOSの梅嵜英毅ヘッドコーチは「髙田選手にあれだけのパーセンテージで決められると苦しい。もっと落とすと思っていましたが、ほぼパーフェクトでした」と語った。実際に髙田は33分のプレータイムで3ポイントシュート3本中2本成功を含むゲームハイの32得点を記録している。
それでも、ここまで来たら結果がすべてで、『善戦したから良し』とはいかない。むしろ、これだけの逆転劇となればENEOSの士気は上がり、デンソーが自信を保つのは簡単ではない。マルコビッチヘッドコーチは「気持ちを前面に出し、すべてを出しきるプレーを今日したので明日は難しくなりますが、ベストを尽くします」と語る。
「皇后杯を振り返ると、自分たちは成長してこの試合を迎えられました。格上のチーム相手に戦うのは難しいですが、そこで変化を見せられた。今日あと一歩のところまで来たのは、シーズン最初の頃と比べると考えられないほど。チームの進歩を皆さんに見ていただきたいと思います。ENEOSは勝ち続けているチーム。ケガ人がいても日本を代表するチームです。ハードですが、ベストを尽くして明日を迎えたい」
気持ちを断ち切られるような負け方で第1戦を落としたものの、まだチャンスは残されている。指揮官が言うように、ENEOSを窮地に追い込むレベルにまで成長したことをデンソーは示した。逆転負けに意気消沈するのではなく、チャレンジャーとして自分たちのベストを尽くす姿勢を貫けるかどうかがまずは大事。髙田だけでなく、昨日の第1戦でプレータイムのなかった選手も含めた全員のステップアップなくして、ENEOS撃破はない。勝って望みを繋ぐか、シーズン終了か。デンソーの挑戦に注目だ。
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