岡田優介は精力的に動き続けている。プロバスケットボール選手として京都ハンナリーズに所属しているが、Bリーグのシーズンオフには3人制バスケ『3×3』がその活動のメインとなる。東京都渋谷区をホームタウンとする3×3チーム『TOKYO DIME』を立ち上げたのは2014年3月。当時はまだ『スリーバイスリー』の名称も浸透しておらず、そもそも5人制バスケもBリーグ発足前の混乱期にあった。それから4年、3×3は東京オリンピックの正式種目となることが決まり、今夏に行われている大会も多くの観客を集め、5人制とはまた違った活況を形作りつつある。
今の状況を見越しての行動であれば、岡田の先見の明は相当なものだが、「最初は『楽しいから』がスタートだったんです」と照れ笑いを浮かべる。そうやって始まった『TOKYO DIME』は多くのファンを集め、大阪では『大阪DIME』が活動を始め、次は地方に飛び火して青森県八戸市に『八戸DIME』が立ち上がる。また、この夏には女子チームも話題を集めている。3×3の盛り上がりを牽引する岡田に、その魅力とモチベーションの理由を聞いた。
「僕にしか気付けないことがたくさんある」
──『TOKYO DIME』のオーナーとして、プレーヤーではなく『仕掛ける側』として3×3に入れ込む理由、その魅力を教えてください。
始まったばかりの競技で、これから市場を作っていけるところです。いくらでもビジネスモデルを組むことができるのが大きいですね。
魅力はたくさんありますが、一つはハーフコートであること。コンパクトさが今の時代に合っています。それがまず言えるのが動画配信で、5人制のバスケは引きにしちゃうとちょっと迫力に欠けますが、3×3は引きでも映えるしより楽しめるし、何より10分で見ることができる。これからすべてがスマホにシフトしていく中で、動画配信とかWebの部分での強みは大きいです。
またチームがコンパクトで遠征コストが抑えられること。5人制だとスタッフを合わせて20人ぐらいの規模ですが、3×3なら5人か6人での遠征です。遠征費って実はすごく高額なのですが、それを4分の1に抑えられます。その差が最も出るのは海外遠征です。3×3は世界にすぐ直結しているので国際試合も多くて、コストは4分の1で済みますが、国際試合の価値まで4分の1になるとは思いません。だから国際マッチというブランドを損ねることなく、フットワーク軽く何試合もこなせるのは3×3にしかない強みなので、それをうまく仕組みとして作りたいんです。
バスケはメジャースポーツと言っても、アジア諸国でやっていない国がいっぱいあって、5人制より簡単にできる3×3をそういう国に持っていきたいです。国際社会の今、日本国内だけのことを僕は考えたくなくて、フラットに考えるべきだと思っています。3×3だとPREMIER.EXEはそうなっていますよね。あれはすごく良いことだし、もっと生かすべきだと思っています。
──東京オリンピックの正式種目となったことで、一般のメディアでの扱いもかなり多くなっています。『TOKYO DIME』を立ち上げた頃、この盛り上がりは予想できていましたか?
最初は『楽しいから』がスタートだったんです。別にビジネス云々よりも、新しい競技が入ってきたんだから応援したいという気持ちです。得てして新しいものって相手にされないですけど、バスケットボールのために絶対に良いと感じたので、単純に応援したい、盛り上げたいという気持ちが始まりでした。この競技を盛り上げることでバスケ全体も盛り上がればいいなと。
いろいろ気が付くようになったのは最近ですね。「もうちょっとうまくやっていれば」という
のは数年やって気付くものなので、逆に言うと僕にしか気付けないことがたくさんあると思います。それって相当な優位性ですよ。今はオリンピックをきっかけにいろんな人が興味を持っていますが、正直に言えば3×3のことをよく分かっている人は本当に一握りしかいない。今までやってきたことがあって、肌感覚みたいなものが自分の中に蓄積されているので、そこは単純に先行者優位ですね。
「楽しいからやっていることには変わりないです」
──ここから3×3がより発展していく『未来図』としては、どんなものを描いていますか?
一つは国内だけに留まらない、国境を気にしないことですね。あとは切り口を変えていくこと。発表より先に新聞に出ちゃったんですけど、八戸の話があります。きっかけはスポンサーさんの関係で、八戸市民大学で講演をしたことなんですが、そこからチームを作ることになりました。今までずっと東京でやってきて、大阪でフランチャイズをやったんですが、そこも都市ですよね。それからすると八戸はローカルなので、また新しいチャレンジです。だから地方創生とか街おこしみたいなところもあります。都市とローカルの取る戦略は違いますが、今までの蓄積をうまく組み合わせられれば面白いですよね。
ただ、僕は逆に地域密着がスポーツのすべてじゃないとも思っているんです。「プロスポーツと言ったら地域密着」と当たり前のように言っていて、ウチももちろん渋谷でやっているんですが、その常識を変えなきゃいけない部分もあると思っています。地域密着はJリーグくらいの頃から日本では定着して、元をたどると欧米だと思うのですが、今の時代は必ずしもそうじゃなくてもいい、ビジョンが一致していれば地域とか国籍は関係ないのかなって。
どんな組織にしていけばいいかと考えると、僕はコミュニティだと思います。コミュニティって地域だけじゃない。地域は一つのコミュニティですが、あくまで切り口の一つであって、いくつかの切り口があっていいと思っています。僕は『DIME』というブランドを作りたくて、『DIME』ってこういうものだ、というのが何か一つ作れたら面白いと思っています。
──『楽しいから』で始めた3×3ですが、こうやって規模が大きくなると責任とかプレッシャーとか、背負うものも重くなっているんじゃないかと思いますが……。
そんなことないですけどね(笑)。楽しいからやっていることには変わりないです。すべてのことが狙い通りに行くことはなくて、「これを仕掛けてみたら面白そうだ」とか「何か起こるんじゃないかな」という繰り返しなので。今回、来日してくれたシャンテル・オサホーもそうですよ。彼女を呼ぶことでのゴールが見えているわけじゃないですし。
──何が実現できるか、そのゴールが見えているわけじゃないんですね(笑)。
それは「なんでこの国際社会の中で女子には外国人選手がいないの?」という僕の気持ちからですね。女子が強いからいいんだ、アジアで優勝したからそのままでいいんだ、というのはちょっとおかしいんじゃないかなって。世界一だったらいいですけど、世界一じゃないので。だから単純に女子のトップクラスの選手が来たら何が起きるのか。世界一を目指さないんですか、ってことだし、単純に面白いこと、ブッ飛んだことがしたいのが先なんです(笑)。
だから『DIME』で何が実現したいのか、僕もふわっとしてるんですけど、「僕にしかできないことがしたい」ですね。誰かの後追いはしたくないし、自分だから分かることがあるなら、それをやりたい。選手だから分かること、自分のキャリアだからこそ分かることがあります。その優位性や経験で、人がやっていないところを埋めていきたいです。だから新しい市場を作ること、攻めることを念頭に置いてやっていこうと思っています。
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