竹内譲次

トーマスのファウルトラブルをプラスに変える働き

アルバルク東京は前節の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で連敗を喫した。2試合とも延長にもつれた上での敗戦とあって、そのダメージは大きかったに違いない。そこから中2日で迎えた3月3日、今シーズン1勝2敗と負け越している富山グラウジーズとの対戦を迎えた。

アレックス・カークと田中大貴をケガで欠いたこともあり苦戦が予想されたが、ゲームハイの30得点を挙げたケビン・ジョーンズを筆頭にどの選手もシュートタッチが良く、7人が9得点以上を挙げるバランスアタックで114-87の快勝を収めた。

スコアだけを見ればA東京の圧勝だが、終始10点前後の点差を行ったり来たりする接戦だった。さらに言えば、第2クォーター開始3分でデション・トーマスが個人3つ目のファウルを犯し、A東京は危機的状況に陥った。しかし、ここでトーマスの穴を埋め、攻守ともに奮闘したのが竹内譲次だった。3ポイントシュートにドライブ、合わせからのレイアップと、竹内はこのクォーターだけで9得点を挙げる。ジュリアン・マブンガとのマッチアップでも自由を与えずに、このクォーターを乗り切ったことが大勝に繋がったと言える。

竹内は試合をこのように振り返った。「先週末に名古屋に2連敗していたこと、チームの核であるアレックス・カーク、田中大貴両選手がケガで不在ということで、チームが持てる力をすべて発揮しないと勝てないとコーチには言われていました。みんながそれをコートで出すことができて、結果的に最高の形になりました。結果についても内容についてもうれしく思っています」

竹内が言う最高の形とは、『27点差』で勝利したことを指す。前述したように、A東京は富山に1勝2敗と負け越し、得失点差は-26と大きく水をあけられていた。チームの中心選手であるカークと田中が不在という状況で、負け越している相手に大勝することは不可能にも思える。竹内も「あわよくば得失点差も上回りたいという気持ちはあったんですけど、そこは特に考えずに戦った」と明かした。

邪な気持ちがあれば、プレーに支障をきたすかもしれない。指揮を執るルカ・パヴィチェヴィッチも得失点差のことは選手に伝えていなかった。だが、最終クォーターのオフィシャルタイムアウトを17点リードで迎え、ルカヘッドコーチはこのタイミングで得失点差のことを伝えたという。そして、残り3秒でトーマスが3ポイントシュートを沈めたことで、27点差の勝利を実現させたのだ。

竹内譲次

「ようやく形になって、最高の結果を出すことができました」

最高の結果に大きく貢献した竹内だが、直近の3試合では定位置だった先発を外れた。また、スタートを任された最後の5試合の平均出場時間が10分以下となり、直近の7試合の合計得点がわずかに3と振るわなかった。もちろん、数字だけが貢献度を計るものさしになるわけではないが、常勝チームで不動の先発を任されてきた竹内にしては寂しい数字に映る。

竹内は「コーチが勝つためにベストな戦術やラインナップを考えている中で、自分は一つの駒だと思っている」と起用法に関して不満に思うことはない。だが、「年末から体調を崩して、体調が戻っても自分の中で乗り切れない部分があって悩んではいた」と苦悩の日々が続いたことを明かした。

だからこそ、自身が活躍した上で会心の勝利を挙げた富山戦は大きな意味を持つ。竹内は言う。「一つ結果が出れば落ち着いてできるだろうと思いながらやってきて、そのために一日一日の練習だったり、一つの試合を一生懸命にやるだけだと思っていました。それがようやく形になって、最高の結果を出すことができました。チームを助けるパフォーマンスを今後も続けていきたいと思ってます。今日の試合は一つ良いきっかけとなってくれると信じたいです」

トーマスの入国が遅れ、新型コロナウイルスに感染する選手が出るなどの影響が長引き、今シーズンのA東京は苦戦が続いている。さらにカークと田中がここにきて戦線離脱となった。しかし、チームはこの逆境を乗り越え、考え得る最高の結果を残した。中でも竹内が本来の調子を取り戻すことは、常勝チーム復活への正しい一歩となる。