佐藤賢次

川崎ブレイブサンダースは12月、1月と同一カード連勝ができず貯金が増えずに停滞し、一時はチャンピオンシップ圏外にまで順位を下げていた。だが、2月上旬のシーホース三河戦でようやく同一カード連勝を達成し、現在は5連勝中と調子を上げ、僅差ではあるが東地区3位にまで浮上している。佐藤賢次ヘッドコーチはこの苦しい時期をどのように乗り越え、チームを上向かせてきたのだろうか。

「数値をチェックしながらプレータイムのシェアを考えています」

――同一カード連勝を達成した三河戦は、水曜ゲームの千葉戦からホームゲームが続いたこともあって、久しぶりに対人練習ができた効果もあったと試合後の会見で話していました。

遠征が続いて練習内容にも気を遣っていたところから、ホームゲームが続くとなった時、そこまでの連戦を振り返るとディフェンスの一つのプレッシャーだったり、そもそものトランジションディフェンスのコンセプトなど、ベースとしているものが弱くなっている、緩くなっている感覚がありました。それで疲労が溜まっているのは分かっていましたが、思い切って対人練習を三河戦の前にやってみました。そうしたら練習だけでなく、試合内容も良くなりました。本当は11連戦の間、強度の高い練習はずっとできないかもしれないと思っていました。

――序盤戦はケガ人に苦しみましたが、このタフな連戦の間、故障者は出ませんでした。このあたりはヘッドコーチが開幕前から強調していたグッドリカバリーの部分での成果ですか。

11連戦を故障者なく乗りきれたことは評価できます。みんな復帰してここから天皇杯、シーズン終盤戦を迎えられるのは日頃のコンディショニングチームのハードワークのおかげです。強度の高い練習も『ショート・アンド・シャープ』とよく言いますが、短時間で密度の高いものにしています。

選手のコンディションチェックはずっとやっています。コロナ禍なので毎日の検温は行いますし、睡眠時間、睡眠の質のモニタリングも継続しています。睡眠の内容と疲労度、大きなケガへの相関関係などについてデータをたくさん取り溜めていて、それに基づいた傾向などのアドバイスには助かっています。それだけを判断基準にして選手の起用法を決めるわけではありませんが、数値をチェックしながらプレータイムのシェアを考えています。あとは毎日のトレーナー陣とのコミュニケーションをすごく大事にしています。

また、今はバイウィーク中ですが、11連戦となるとプレータイムによってコンディションの差はとてつもなく大きくなります。ずっと25分以上出ている選手は休まないといけないですが、5分くらいの選手は練習ができない分、コンディションが落ちてしまうので何もしないわけにはいかない。この中断期間中、選手それぞれに終盤に向けてこういう課題に取り組もうといった意識付けも行っており、そういった取り組みには手応えを感じています。

佐藤賢次

「接戦の終盤でどんな采配をするか、成長しなければいけない」

――これから終盤に向けて特にヘッドコーチが成長の鍵と見ているのはどんなところになりますか。

今のテーマは、昨シーズンからのコンセプトにあるコミュニケーションとコンペティション(競争)で、今回の連戦中からすごく強調していました。とにかく選手同士が激しい競争の中で、メンタル的にイライラしたり、落ち込んだり、ハイになったりする中でも、それぞれの意思をしっかり伝えられる。お互いにそういう存在になることが、特に今シーズンは足りない要素だと思っています。例えば三河戦でオフボールスクリーン一つで川村(卓也)選手、(シェーン)ウィティングトン選手にノーマークの3ポイントシュートを打たれました。それに対して戦術がうまくいかなかったのはなぜかとコート上の選手たちで話し合いをできるよう改善していきたいです。選手同士で意見を言い合ってすべてを解決するのは難しいですが、今どうだったのか意思を伝えることは絶対にできるはず。そういう作業をやっていこうと取り組んでいて、実際に良くなっているし結果にも繋がっています。この改善を続けていくことで、ここから本当に楽しみです。

そして整えないといけないポイントは、チーム軸を確立させ、オプションとしてビッグラインアップやディフェンスの戦術が固まりつつある中で、最後に何を選択してどう勝っていくかです。その勝ち方のところで、ここ一番での形がいくつか出てきて、そこに僕だけでなく、チーム全体が試合の中で向かっていける。それが優勝するチーム、最後に上位にいくチームにはあると思うので築き上げていきたいです。

――この部分でいうと、川崎にはファジーカス選手という絶対的なエースがいると見ている人は多いと思います。

当たり前のようにニック、辻(直人)はマークされるので、その先を作っていくことが最後、チャンピオンになるための大きな要素です。もちろん彼らが最後に決める形も必要です。コーチとして接戦の終盤でどんな采配をするか、自分が最も成長しなければいけないポイントです。

――まだまだ混戦で、連敗したら一気に順位が下がってしまう状況は大きなプレッシャーなのではありませんか。

僕自身にも選手にも負けられないプレッシャーはあります。ただ、そこまで意識していないというか、先のこと、順位のことではなく、目の前の試合をどうやって勝つか、課題をどうクリアするのか。その先のターゲットの試合をどう乗り越えるかにフォーカスしています。選手たちも同じように思ってくれていると感じています。今のターゲットは天皇杯なので、ここからの試合で成長して、まずはセミファイナルで大爆発するイメージをみんなで共有しています。

――昨年も決勝で敗退と、あと一歩でタイトルに届かない状況が続いている中、あらためて天皇杯への意気込みを教えてください。

優勝する力は間違いなくあると思っています。あとはやるだけです。リーグ戦の途中ですが、天皇杯のセミファイナル、ファイナルで今持っているものを全部出しきりたい。その先に結果があるとフォーカスしています。リーグ戦で勝利に向かって戦いながら天皇杯の準備を行い、みんなを引っ張っていきたいと思います。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

緊急事態宣言が出ている中、多くのファンの皆さんが会場に見に来てくださっています。皆さんのサポートには感謝しかありません。我々は勝利に向けて細かいことを一つひとつ協力し合って準備し、試合でその成果を100%表現します。それを見て下さった方々が元気になったり、翌日の仕事のエネルギーになってくれれば最高です。毎回そういう試合にしたいと、そこは変わらずに強く思っていますので、会場でもオンラインでも是非試合を見て欲しいです。天皇杯、リーグ終盤戦も一緒に戦いましょう。応援よろしくお願いいたします。