川崎ブレイブサンダースは12月、1月と同一カード連勝ができず貯金が増えずに停滞し、一時はチャンピオンシップ圏外にまで順位を下げていた。だが、2月上旬のシーホース三河戦でようやく同一カード連勝を達成し、現在は5連勝中と調子を上げ、僅差ではあるが東地区3位にまで浮上している。佐藤賢次ヘッドコーチはこの苦しい時期をどのように乗り越え、チームを上向かせてきたのだろうか。
「昨シーズンはこうだった、という思いが出てきてしまう」
――東地区3位で今回のバイウィークを迎えたことへの率直な思いを聞かせてください。チャンピオンシップ圏外にいた時はどんな心境でしたか。
ケガ人もいたり、外国籍の登録が1人増えるレギュレーションへの慣れなどいろいろなことを一つずつ乗り越えて、なんとか川崎らしくなってきた感じです。これだけ力の拮抗した混戦だと、現在の順位はあってないようなものだと思っています。本当に終盤戦はめちゃくちゃタフなスケジュールなので順位は最後までどうなるか分からないという意識です。チャンピオンシップ圏外の時は正直、6位という数字を見て「あぁ……」という思いはありましたけど、焦りはそこまでなかったです。とにかく一つずつやるしかないと思っていました。
――現在のチームは、どんな状態だと考えていますか。
今は手応えを感じています。ケガ人が復帰して周囲との連携がまだまだというところが、試合を重ねるごとに良くなっています。2人(ジョーダン・ヒース、マティアス・カルファニ)が復帰しオールスターブレイク明けから11試合のタフなスケジュールの中で課題をみんなで共有して乗り越えて、を毎節繰り返してきました。チームが好転していくきっかけとなったのは(2月6日、7日の)シーホース三河戦の連勝だったと思います。
ただ、その前の(2月3日の)千葉ジェッツ戦は負けましたが、自分の中ではスッキリしていました。(1月31日の)島根スサノオマジックに負けた後、コーチと選手がそれぞれ本音で意見をぶつけ合うことがありました。この負けは自分たちにとってもショックでした。でも、そこを踏まえて時間がない中で迎えた水曜ゲームの千葉戦で、苦しい試合展開の中で最後はどっちに転ぶか分からないところまで持っていく力を示せたことでスッキリしました。最後に突き放されたのはビッグラインアップがうまくいかずに相手に連続得点を許したからで、そこは完全に僕の責任です。チームとしては千葉戦くらいから、「やっぱり底力はあるし、行ける!」という感覚を持てました。
メンバーが変わっていない中、どうしてもみんなの中に「昨シーズンはこうだったのに……」という思いが出てしまっていた。でも昨シーズンは昨シーズンで、今とは全く違います。そこへの対応は苦労して、最近になってようやくなくなってきたと思います。
「大きなきっかけとなったのは島根戦です」
――ヘッドコーチが言及する島根戦は、第4クォーター序盤に最大で20点のリードを許しながら一時は追いつく驚異的な追い上げを見せての惜敗でした。それでもショックだったのでしょうか。
第4クォーターに出たメンバーがあきらめずに前からプレッシャーをかけて追いついたところは評価できる部分です。ただ、試合を通しての内容は決して良いものではありませんでした。あの試合は自分たちの軸がどこにあるのか、ビッグラインアップを使うタイミングの部分が一番うまくいかなかったです。内容はどん底だったと思います。
これは開幕からですが、外国籍選手のベンチ登録が増えた中で帰化選手としてのニック(ファジーカス)という大きなアドバンテージをどう生かしていくか。それを考えた時、強度の高いウチのベースとなるバスケットと、ビッグラインアップの高さを生かしたバスケットと、2つの強みをどっちも生かせることがなかなかできずにいました。島根との2試合目はまさにこの課題が出てしまいました。試合の入りをビッグラインアップで行って3ポイントシュートを決められ、相手の日本人選手を乗せてしまう。それを跳ね返すベースの力もなく、どっちのスタイルも力を発揮できなくなる。この点について意見のぶつけ合いがありました。
振り返ると、シーズン序盤から勝ってはいてもしっくりこない試合が続いていました。そこを改善していこうというところでケガ人が出て、新しい選手とのケミストリーを高めていく方向にチーム作りがシフトしたので、違和感のところがうやむやなまま、解決できずに来たところはありました。
11月、12月は新しい選手との連携に加え、自分たちのベースを取り戻そうと徹底的に取り組みました。それを経てケガ人が戻ってきてビッグラインアップを使おうとなった時、結局また同じ問題が出てきた。これを解消しないとこの先うまくいかないと本音でぶつけ合い、優勝するためにはどちらも強くしないといけないことを再確認してから状況が良くなってきたところです。もしこの島根戦に勝っていたとしても、同じ話し合いになったと思います。作りたくて作ったわけでないですが、大きなきっかけとなったのは島根戦です。
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