ヴァンテルプールの内部昇格見送りに、嘆きの声も
ティンバーウルブズはNBA30チームの最下位に沈む状況で、ヘッドコーチのライアン・サンダース解任を決断した。後任はロケッツやナゲッツ、ペリカンズを経て今シーズンはラプターズでと、アシスタントコーチとして長く経験を積んだクリス・フィンチ。勝てないだけでなく今後浮上する兆しも見えない中での指揮官交代は仕方ないが、ウルブズにはアソシエイトヘッドコーチとしてサンダースを支えてきたデイビット・ヴァンテルプールがいた。
彼の内部昇格を願う声は多かった。有能なコーチで人望も厚く、チームのことを知り尽くしている。そして黒人であるヴァンテルプールがヘッドコーチとしてチャンスを得ることを期待する者が多かった。トレイルブレイザーズのデイミアン・リラードは「なぜヴァンテルプールを雇わないのか理解しがたい。彼は試合を支配できるバックコートを育て上げたんだ」とSNSに投稿。CJ・マッカラムは「その通り」とレスしている。
ヴァンテルプールはウルブズに行く前に、ブレイザーズで7年に渡りアシスタントコーチを務めた。リラードとマッカラムの2人は、NBAでのデビューからスター選手へと成長する過程を彼とともに過ごしている。だからこそ2人は、恩義のあるコーチにチャンスが与えられなかったことを嘆いた。
ウルブズの若きリーダーであるカール・アンソニー・タウンズも同じ気持ちでいる。指揮官交代について「ショックだった」と語るとともに、後任にヴァンテルプールが選ばれなかったことについても、率直に自分の気持ちを語った。
「この世界で有色人種の人たちがどれだけ素晴らしい仕事をしているか。バスケに限らずどんな組織でも一緒だと思うけど、僕の仕事であるバスケにおいても才能のある有色人種の人がたくさんいて、ユニフォームを着てじゃなくスーツを着て業績を残すチャンスを待っている。ヴァンテルプールにはプロ選手としてプレーしてきた経験やコーチとしての知識がたくさんあって、僕は多くを学ばせてもらった。その知識と経験はチームを助けてくれるし、新しいヘッドコーチとしてもきっとうまくやっていけたと思う」
ただ、タウンズはヴァンテルプールの下でプレーしたい気持ちがあったことを包み隠さず話すと同時に、球団の決定を受け入れるとも語っている。「最終的には球団がベストだと考える決断が下されたわけで、僕はプロフェッショナルでなければいけない。こういうことは何度も経験しているしね。新しいコーチを歓迎し、前に進むためにお互いに寄り添うんだ」
現在、NBA30チームの中で黒人のヘッドコーチは7人しかおらず、選手の比率とは大きく異なる。緻密な戦術を練り上げることが求められる今、バスケットコートでスキルと勝負のイロハを身体に叩き込みながら成長した者ではなく、時には高校レベルのプレー経験さえなくても大学でデータ分析やリーダーシップを学んだ者がチャンスを得ることも増えてきた。これは肌の色ではなく出自やカルチャーの違いと呼ぶべきもので、リラードやマッカラム、タウンズのように違和感を覚える者がいるのも無理はないのかもしれない。
ガーソン・ロサス球団社長は、人事の責任者としてこの決断を下した。彼もウルブズでの2年間でヴァンテルプールと接している。そして同時に、彼はロケッツのGMだった時に、Gリーグチームのヘッドコーチだったフィンチとも関係を築いてきた。肌の色ではなく、2人を知る中でどちらが成功の確率が高いかを考え抜いた末での決断だろう。タウンズもそれは理解しているはずだ。