移籍を巡るドラマ、トレードの駒となる選手と球団の間に求められる『誠実な対応』

2018/07/25
NBA&海外
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写真=Getty Images

デロ―ザンのトレードは『最悪の例』

大物フリーエージェント選手の移籍が相次いでいる今年のオフだが、フリーエージェント選手の移籍と同様に、NBAではオフにトレードも頻繁に成立する。

トレードされる側の選手は、メディアによるリポートで自分が置かれた状況を知るケースが少なくないと言われている。たとえば、もしシーズン途中にトレードの噂を報じられれば、選手は自分がチームに必要とされているかを疑問に思い、プレーに悪影響を及ぼす可能性もある。

トレードを噂された選手の心境とは、いったいどういうものなのか。2018年2月に現役引退を表明したカロン・バトラーが、その疑問について2017年に『Hoops Hype』に語った。バトラーが言うには、トレードを噂された選手は、大きく分けて2通りの反応を示すという。

「2通りのパターンを見てきた。一つは、よりコート上で実力を発揮して、選手としての価値を証明しようとするタイプ。あとは、『どうだっていい!』と全く気にしないタイプ。トレードの噂が出ると、チームケミストリーが危うくなってしまうのは当然の話だよね。中には『これから自分がプレーするかも分からないのに、なんでチームの勝敗に必死にならないといけないんだ?』と考える選手もいるかもしれない」

自分がトレードされるかもしれない状況になれば、それぞれリアクションに違いが出て当然だ。どの競技であっても、いつロッカーの荷物を整理するように言われるか分からない中でモチベーションを維持するのは簡単ではない。

選手が球団に求めているのは、誠実な対応だ。メディアを通じて知るのではなく、球団関係者から正直に言ってもらった方が気持ちの整理をつけやすい。こう語ったのは、遅咲きの苦労人、ギャレット・テンプルだ。数日前にキングスからグリズリーズにトレードされたテンプルも、昨年『Hoops Hype』にトレードされる選手の心情について、次のように話している。

「選手が精神的に成熟しているかにもよるけれど、球団のコミュニケーション方法によって変わってくる。選手なら、たいていは本当のことを伝えてもらいたいと思うものなんだ。どういう話であってもね。選手が一番腹を立てるのは、最初に言っていたことと真逆の行動を裏で取られたときさ」

直近では、ラプターズからスパーズにトレードされたデマー・デローザンの例が、テンプルが言う『最も腹が立つ』ケースにあたる。ラプターズ球団社長のマサイ・ウジーリは、スパーズとのトレードが噂され始めたサマーリーグ期間中、デローザンに直接「トレードしない」と伝えたと言われているからだ。ウジーリによればコミュニケーションの食い違いで、嘘を言ったつもりはないそうだが、当然ながらデローザンはラプターズの決定に傷ついた。

プロスポーツでは、球団同士のビジネスが優先される。デローザンのように生え抜きのスター選手であっても、他チームとの利害が一致すればトレード要員に含まれてしまう。もしウジーリが、近日中にトレードが成立することを正直にデローザンに打ち明けていたら、彼はNBA選手になるチャンスを与えてくれた球団の方針を尊重しようと努力し、新チームでのキャリアを今よりは前向きに考えられていただろう。

人と人とのコミュニケーションが発生する以上、たとえベストな方法でないとしても、そして一時的に感情的になる恐れがあったとしても、当事者に嘘偽りなく真実を伝えることが、誠実な対応ではないだろうか。