ロバート・オーリー

「クールエイドを砂糖なしで飲めないよね。僕は砂糖だったんだ」

先日、43歳のトム・ブレイディがNFL史上最多となる7回目のスーパーボウル制覇を成し遂げ、スーパーボウルMVPに選出された。現役レジェンドの快挙にファンは歓喜したが、マイケル・ジョーダンを超える7つのNBAチャンピオンリングを持つロバート・オーリーが揶揄される事態に発展した。

オーリーは1992年にロケッツからドラフト全体11位指名を受けた、208cmのパワーフォワード。当時のNBAでは珍しい外角シュートも打てるタイプのビッグマンだった。また、抜群の勝負強さを持ち、NBA屈指のクラッチシューターとして知られて、特にプレーオフに入るとパフォーマンスを伸ばし、数々のビックショットを沈めてきた。キャリア前半は主力として先発出場していたが、中盤以降はベンチプレーヤーへと役割を変え、ロケッツで2度、レイカーズで3度、スパーズで2度のNBA制覇を経験した。だが、キャリア平均7.0得点という数字が示すように、決してチームの中心選手ではなかった。

同じ7回の優勝経験を持っていても、常に主役を演じてきたブレイディとロールプレーヤーのオーリーでは格が違う、というわけだ。これに対して『Fox Sports』の取材に対応したオーリーは「半分以上の時間において、僕は軽視されているように感じる。人々は僕が成し遂げたことを本当に評価していないからね」と胸の内を明かした。

「僕が『NBA』と言う時、それはコーチや選手のことを指すんだ。人々は僕が成し遂げたことを本当にリスペクトしていないし、僕がやったことを理解していない」

ロケッツではアキーム・オラジュワン、レイカーズではシャキール・オニールやコービー・ブライアント、スパーズではティム・ダンカンなど、オーリーが優勝をともにしたチームにはスーパースターがいた。ただ、スーパースターだけでは優勝できないことは歴史が示しており、オーリーも自分が主役ではないことを分かっている。だからこそ、脇役の重要性を訴え、自身の功績にも胸を張る。

「人々はいつも僕のことを『彼は歯車だ』と言う。ああ、僕は歯車だったよ。でも、僕は重要な歯車だったんだ。クールエイド(水と砂糖を足して飲むアメリカの粉末ジュース)は砂糖なしで飲めないよね。僕は砂糖だったんだ」

オーリーが言うように、チームの勝利には『歯車』が必要だ。ブレイディもチームメートの助けがなければ、偉大な記録を達成できなかったはず。オーリーを口撃する人々は今一度、ロールプレーヤーの大切さを考えたほうがいいだろう。