ドウェイン・ケーシー

写真=Getty Images

球団社長としてすべきことをやった結果のバッシング

カワイ・レナードを獲得するために生え抜きのエースであるデマー・デローザンを放出したラプターズのやり方に批判が集中している。7月20日に会見を開いたラプターズのマサイ・ウジーリ球団社長は「もっと良い形で対応すべきだった」と、フランチャイズプレーヤーに対する配慮の足りなさを反省した。

これまで9年間チームを支えてきた選手に対する対応として不適切だったのは間違いない。しかし、ウジーリの立場で考えなければならないことは、選手個々の満足ではなくチームの成功だ。

昨シーズンは東カンファレンス首位でプレーオフに勝ち進んだが、肝心のプレーオフで『天敵』レブロン・ジェームズを擁するキャバリアーズにスウィープ負け(0勝4敗)を喫した。あのチームでそれ以上を望めない以上、何らかの変革は必要だった。

ウジーリはシーズン終了後に動き、2011-12シーズンから指揮を執った前ヘッドコーチ、ドウェイン・ケーシーの解任を決断。そして、『アンタッチャブル』と思われていたデローザンとカイル・ラウリーのデュオを解体してまで、レナードを獲得した。

レナードは来シーズン終了後に契約最終年を破棄してフリーエージェントになることが濃厚だ。レイカーズでプレーしたいと公言しており、1年後には出て行く可能性が高い。ウジーリはそのリスクを取ってでもチームをカンファレンス決勝、そしてNBAファイナルまで導くにはこの手がベストと考え、決断を下した。

ラプターズの指揮官を退任後、ピストンズのヘッドコーチに就任したドウェイン・ケーシーは、『Sportsnet 590 The Fan』に出演した際、デローザン、ファン、そしてウジーリの立場を考慮しつつ、今回のトレードについて次のように語った。

「デマーにとって受け入れるのは難しいだろう。ラプターズを愛しているファン、情熱を持って応援しているファンからすれば、ビンス・カーターを失った時と似た気持ちだと思う。ただ、バスケットボールという観点から言えば、カワイ・レナードを自分のチームに加えられる機会を前に『必要ない』とは言えない」

ケーシーのコメントは、三者の心情を明確に表している。デローザンのショック、ファンの怒りはもっともだが、ウジーリも決断を迫られる立場上、やるべきことをやったまでだ。

ラプターズへのトレードを望んでいなかったと報じられたレナードだが、早々にトロントに足を運び、球団関係者と談笑している様子がSNSに投稿された。この分なら、新天地での新シーズンに向け、前向きに考えられているのだろう。傷心のデローザンが気持ちを切り替えるにはもう少し時間がかかるかもしれないが、もうラプターズの選手でなくなったからには、西の強豪スパーズの中心選手として、前に進むしかない。