山崎紀人

「やっぱり、最後に助けてくれたのは3年生」

ウインターカップ2020は東山を72-70で退けた仙台大学附属明成の優勝で幕を閉じた。

『八村二世』と称される山﨑一渉とともに、チームの主力を務めた山崎紀人は王座奪還を達成し、「去年の3年生と今の3年生に少し恩返しできたかなと思います」と冷静に語った。感謝の相手に去年の3年生が含まれているのは、準々決勝で北陸に敗れた昨年のウインターカップからスタートを任されていたからだ。

今年の明成は2年生がチームの主力を務めていたが、佐藤久夫コーチや下級生の皆が口を揃えるように、3年生の存在が大きかったと山崎は言う。「やっぱり、最後に助けてくれたのは3年生かなと思います。この大会ではすごく3年生が目立っていました」

山崎は195cmの長身を生かし、決勝戦では特にリバウンドやディフェンス面でチームに貢献した。4得点とオフェンス面ではそこまで目立っていないが、7リバウンド2アシスト2スティールを記録。留学生のムトンボ・ジャン・ピエールに制空権を支配されたが、山崎の存在があったからこそ、そのダメージを最低限に抑えられたとも言える。

山崎も「留学生より少しでもボールに触ってボールの軌道を変えることで、味方か自分が取れるかなと思っていました。オフェンスリバウンドは少しできたと思います」と、それなりの自己評価を下した。

それでも、表彰式が終わり、優勝の興奮がひと段落した後とあって、冷静に自身のパフォーマンスを振り返ると「リバウンドを取りきれていなかったですし、まだ自分にはミスがあるので良いとは言い切れないです。迷惑をかけました」と、全体を通しての評価は厳しいものだった。

山崎紀人

「3年生が良い意味で怒ってくれたから強くなった」

頼りになる3年生は卒業し、これからは最上級生となる山崎がチームを引っ張っていくことになる。3年生やキャプテンからは「来年は連覇だな」と声を掛けられ、チームを託された。

その言葉を受け「もっと3年生と試合がしたかった」とあらためて山崎は感じたと言う。「自分自身が強くなれたのは久夫先生が教えてくれたこともあるんですけど、それよりも3年生が良い意味で怒ってくれたから強くなったと思っています。今年の3年生はインターハイも中止になって、ウインターカップに懸けるしかなかったので、自分たちよりももっと優勝したかったと思います。自分も必死についていかないと、3年生に恩を返しきれないと思って頑張りました」

これまでの山崎は顧問の先生に指導を受けることはあっても、先輩からアドバイスを受けることはなかったという。実力と言動が一致しない『口だけの先輩』は少なからず存在するものだが、3年生は真摯に山崎と向き合ってきた。だからこそ、実力差に関係なく、彼らの言葉を山崎は聞き入れ、尊敬の念を持っているのだ。

「自分を強くしてくれるために言っているので、嫌な気持ちにはならないです。そうしないと自分も強くなれないので、もっと言ってほしいくらいでした」

佐藤コーチ以外に、上から言葉を与えてくれる存在はもういない。むしろ、これからは山崎がプレー以外の面でもチームを引っ張っていかなくてはならない。山崎がリーダーシップを備え、同級生や下級生を引き上げることができるかどうかが、連覇達成の一つのカギになる。頼りになる先輩の背中を見続けてきた山崎なら、できるはずだ。