能代工業の効率の良いバスケを気迫で凌駕する
県立能代工業はウインターカップ1回戦で九州学院と対戦。試合の大半をリードする展開だったが、最後に相手の勢いに飲み込まれて逆転負け。1回戦で姿を消すことになった。
過去19回の優勝経験を持ち、田臥勇太など卒業生にビッグネームが並ぶ伝統校の能代工業の名前に気圧されたのか、九州学院は出だしから動きが重く、開始3分半で2-16と大量ビハインドを背負ってしまう。そこから立ち直るも、追いかけては突き放される展開で試合は進んだ。
九州学院はゾーンディフェンスで能代工業の出足を止めたり、ダブルチームからの素早いローテーション、スティールも積極的に狙うなど、『攻め』のディフェンスを展開。仕掛けをかわされれば相手にイージーシュートのチャンスを与えてしまうリスクもあるが、それを許さない出足の鋭さと仕掛けるタイミングの良さがあった。これに対して能代工業はフロアバランスを意識して効率の良い攻めを遂行するが、九州学院の気迫が効率性を凌駕することがしばしばあった。
九州学院のオフェンスを引っ張ったのは中野友都。縦へのドライブのスピードは昨年MVPの河村勇輝ばりで、重心の低いアタックで能代工業の堅守を個人で切り裂いていく。中村は「大濠とか報徳とやった練習試合でも自分のドライブは効いていたので、行けると思っていました」という自分の持ち味を存分に発揮。チームオフェンスでチャンスが作れないと見れば責任を引き受けて果敢に攻め、能代工業を脅かした。
第4クォーターを迎えた時点で12点ビハインド。それでも九州学院はここから運動量と積極性をもう一段階上げて、オフェンスでもディフェンスでも『攻め』の姿勢を強める。中野の3ポイントシュート連続成功から、「全然自信はないです。他のところで得点できなくて自分で打ったのですが、入ると思っていなかったので自分でもビックリしました」と本人が振り返る野美山翔馬の3ポイントシュートが決まって、最終クォーター開始から約4分間で13-0のランで一気に逆転。ここから終盤まで大混戦となる。
そして、ここでも九州学院の『攻め』の姿勢が功を奏する。残り3分15秒、フル出場を続ける山下力也が強引なドライブでゴール下に割って入り、接触を受けて足を攣りながらシュートをねじ込んで71-69と勝ち越しに成功。ここから能代工業のディフェンスを崩せなくてもとにかくシュートで終わる、そのリバウンドに飛び込む、という気迫溢れるプレーを徹底し、クラッチタイムに4本のオフェンスリバウンドを奪取。逆に能代工業はボールを大事にし、丁寧にチャンスを作ろうとする姿勢が受け身に回ることに繋がってしまった。最終スコア77-72で、九州学院が見事な逆転勝利を収めている。
フィールドゴール成功率は九州学院の39.7%に対して能代工業が42.2%で、リバウンドでも能代工業が総数では45-29と大きく上回っている。だが九州学院は攻めのディフェンスに徹することでスティールで18-4と上回り、能代工業から25ものターンオーバーを引き出した。
出だしから大量ビハインドを背負い、後がなくなったからこそ吹っ切れたプレーができたとも言えるが、チームにとっては反省点だ。38得点を挙げた殊勲の中野は「欲を出さずに自分たちのペースで我慢しようと声を掛け合って、キツかったんですけど乗り越えられました」と逆転勝利を喜ぶとともに、「次は出だしから自分たちのバスケを100%やってアドバンテージを取りたい」と語った。
九州学院は明日の2回戦で前橋育英と対戦する。