サマーリーグに挑戦した渡邊雄太、『NBAレベル』でのアピールと成長を考察する

2018/07/17
NBA&海外
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渡邊雄太

文=神高尚 写真=Getty Images

渡邊雄太はサマーリーグで日本のファンの期待を膨らませる活躍を見せてくれました。それは『ディフェンス』、『総合的なスキル』、『バスケIQ』という特長がもたらした成長でもありました。わずか5試合という短い期間でスキルや身体能力は向上しませんが、自身が持つ能力をチームのシステムの中でうまく適合させ、目に見える形で成長につなげてアピールしました。

チームディフェンスでの成長

初戦のマジック戦でジョナサン・アイザック相手に素晴らしいディフェンスを見せ、対人能力の高さを証明したことで信頼を得ると、2戦目以降は長いプレータイムを得ました。基本的に相手のキーマンを押さえる役割ですが、プレータイムが伸びればキーマン以外を守るケースも出てきます。そのため2戦目からはヘルプでリムプロテクターの役割も果たすようになり、5試合で8ブロックを記録しました。

大学時代はエースガードのマークが多かったためインサイドヘルプがうまい印象はなく、サンダー戦ではヘルプで止めることがある反面、早くヘルプに出てしまい自分のマークマンにパスを通されるシーンもありましたが、試合をこなすごとにタイミングが良くなり、特にジャレット・アレンが加わるとうまく連動できるようになりました。

ディフェンスリバウンドにもしっかりと飛び込めるようになるなど、自分のマークマンをしっかりと押さえながらヘルプやリバウンドというインサイドでのチームディフェンスを向上させていきました。

当初から期待されていた対人のディフェンス能力の高さとセンター以外を守れるユーティリティ性を初戦から証明した上で、ヘルプのタイミングやポジショニングといったチームディフェンスの部分は試合を重ねる毎に成長していきました。渡邊がコートにいることでチーム全体のディフェンスが向上したことは、コーチ陣の信頼をつかんだ大きな要因でした。

渡邊雄太

得点につなげるポジショニングの成長

オフェンスで与えられた役割は3ポイントシュートを使い、広くスペーシングすることでした。ネッツのシステムではコーナーに広く構えて待つのが基本ですが、適切なポジショニングができるか、そしてパスが回って来た時に決めきることができるかが問われました。マジックのインサイドが強かったこともあり、初戦からアテンプトが多く効果的に決めることができ、なおさらチャンスが広がりました。

4試合目のロケッツ戦では4点に終わりましたが、チームが100点を超えるハイスコアとなった理由は渡邊がしっかりとスペーシングできたことにもあるので、チームのために適切なポジショニングをとり続けたことは評価を落とすことにはならなかったはずです。

2戦目からは2人のスクリーンを使って、コーナーからトップの位置へ移動しての3ポイントシュートというネッツお得意のセットプレーでシューター役としても試されました。動かずにパスを待つのではなく、移動して打つシュートは難易度が上がるので最後まで決めることはできませんでしたが、次第に役割を増やされたことがうかがえます。

もう一つの役割はボールマンに対してスクリーンに行き、組み立てに参加することでした。ネッツはスペーシングしてインサイドを広く空けるのですが、大学時代にスクリナーではなかったこともあり、当初はスクリーンからの動きが効果的とは言えませんでした。それでも最後の5戦目ではうまくリングに走り込んでパスを受けて得点するシーンもあれば、逆に外に開いてボールをもらってドライブすることもあり、ディフェンスの状況を見てより早く判断できるようになっていました。

得点は最も重要な指標であり、3ポイントシュートを決めたことでアピールした渡邊ですが、最後の2試合では得点こそ減ったものの、そこに至るまでのスペーシングやスクリーンによる適切なポジショニングと状況判断の面での成長を見せてくれました。
渡邊雄太

フィジカルの差を埋めていくプレー選択の成長

懸念されていたフィジカルの弱さはオフェンス面で目立ちました。シュートに対して警戒が強まったことでドライブを選択したことは良かったものの、ゴール下でコンタクトされるとバランスを崩してしまい、ほとんど決められず。特に3戦目のウルブス戦ではレフェリーがコンタクトに寛容だったこともあり、ペイント内のシュートが5本中1本しか決まりませんでした。

そんな不安を残したフィジカル面ですが、4戦目からはドライブした際にミドルレンジの段階で判断するという変化があったことに注目です。特に5戦目のペイサーズ戦ではヘルプが来ていたらミドルを選択し、スピンで方向を変えてのレイアップ、そしてディフェンスの状況を判断してアシストパスを通すなど、ゴール下のコンタクトではどうしても負けるがゆえに、判断するタイミングを一歩前にして、上手くアジャストしていました。

またこのペイサーズ戦はお互いに主力を休ませていたこともあり、チームとして渡邊にアイソレーションを仕掛けさせるシーンがあるなど、4試合の結果を受けて違うテストもされていた印象がありました。経験を重ねたことで余裕を持ってプレーできたのか、初戦とは見違えるプレーを見せてくれました。その反面、3ポイントシュートが決まらず、リバウンドへの飛び込みも減るなど疲労も感じられ、最後は速攻で強引にシュートを狙ったシーンでブロックされて床に叩き落とされ、プレーを続けることができなくなってしまいました。

フィジカルの面は強化が必要ではありますが、より早いタイミングでプレーを選択する判断力の面で成長を見せました。長いプレータイムを得た中でいくつかの失敗を経験したことで可能になった成長であり、次は速攻でも違ったプレー選択をしてくれるでしょう。

『成長すること』もまた重要なアピール

渡邊雄太が契約を勝ち取るための生命線は3ポイントシュートとディフェンスです。サマーリーグでは序盤の試合でこの2つの部分で結果を残せたことで、長いプレータイムを得ることができ、試合を重ねる毎に違うテストも実施された印象でした。すべてに結果を残せたわけではなく、課題も残りましたが、戦術理解度や判断力の面でアジャストし成長できました。

シーズンが進むとメンバーも戦術も変化していきますし、毎試合異なる特徴を持ったチーム、選手と対戦します。サマーリーグで『成長すること』もまた重要なアピールでした。