デション・トーマス

Bリーグ誕生後、発展を続けるリーグと歩調を合わせるように、ヨーロッパで実績を残した選手たちの参戦も右肩上がりで増えている。その中でも頭一つ抜けた実績を持つのが、アルバルク東京に加わったデション・トーマスだ。全米有数の強豪であるオハイオ州立大で活躍したトーマスは、バルセロナやマッカビ・テルアビブを経て過去2シーズンは欧州屈指のビッグクラブであるギリシャのパナシナイコスの中心選手だった。文字通り欧州のトップ選手のA東京加入は、世界のバスケ界の視野で見ても大きな衝撃だ。A東京のリーグ3連覇のキーマンとなるトーマスに、チーム加入を決めた理由やBリーグの印象を聞いた。

アルバルク東京、リーグ3連覇のキーマン

――コロナ禍によるチーム合流の遅れからBリーグデビューは11月にまでずれこんでしまいました。

新型コロナウイルスは誰にもコントロールできないから、合流が遅れてたことは受け入れるだけでした。このような状況も悪いことばかりではなく、良い面もあったと思うようにしていました。例えば昨シーズンの僕は、30分や35分と長い時間プレーする試合も多かった。そこで酷使した身体を休める期間だとポシティブに受け入れるようにしていました。実戦でのプレーから6カ月も遠ざかっていましたが、コンディションは100%に近づいています。

――欧州のトップステージにいたトーマス選手の日本行きは大きな驚きでした。A東京を新天地に選んだ理由を教えてください。

ユーローリーグのチームからもオファーは来ていましたが、コロナ禍にあって交渉が上手くいかない部分もありました。その中でアルバルクが素晴らしいオファーを提示してくれたので、自分と家族のためにもベストの決断ができたと思います。

友人たちは「次は東京か、これまでと違うバスケットボールをプレーすることになるね」と言うくらいで、みんな喜んでくれましたが、バスケットボール界の知り合いの中には「ユーローリーグのチームに行くこともできるのに、どうして日本なんだ」と驚く人も少なくありませんでした。僕にとっては、プロとしてより良い環境を求める中で自然な選択でした。それに僕は常に新しい経験を求めています。

――チーム合流前、Bリーグについての知識は何かありましたか。

オハイオ州立大でチームメートだったイバン・ラベネルは日本で何年もプレーしていて、リーグがどれだけ成長しているか、どれだけ優秀な外国籍選手が増えているかを教えてくれました。また、ジェフ・ギブスとはTBT(アメリカ最大のオープン参加トーナメントである)でチームメートでした。彼が40歳になっても日本でプレーを続けていることは、日本がどれだけ素晴らしいことかを示していると思います。

デション・トーマス

「アグレッシブかつ、攻守ともに堅実なプレーを」

――A東京についてはどんな印象ですか。

来日前にジェフと話した時、アルバルクがどれだけプロフェッショナルで素晴らしい組織なのか教えてくれました。実際に合流してみて、チームが本当に選手たちを大切にし、ベストを出せる環境を作ってくれていることを実感して、とても感謝しています。

ルカ(パヴィチェビッチ)は情熱のある素晴らしいコーチです。豊富な経験の持ち主で、試合を熟知しています。日本人選手は本当に練習熱心です。(アレックス)カークとは、かつてトルコのエフェスでチームメートだったのでよく知っています。日本の電車にも乗りましたが、とても時間に正確で速くて気に入りました。タクシーよりも好きです。とても良い体験でした。

――まだ4試合の出場のみですが、Bリーグで実際にプレーした印象を教えてください。

欧州のハイレベルなところから来た僕から見ても、Bリーグはとても競争力があり、4番、5番の外国籍選手たちはとても質が高い。レベルに少し違いはありますが、優れたリーグだと思います。そしてBリーグはスピードがあります。ヨーロッパだと中にはとても遅いテンポでゲームをコントロールするチームもあります。ただ、日本人のポイントガードは総じて速く、バスケットボールIQも高い。ヨーロッパの方がフィジカルは強いですが、アジリティやスピードについてはBリーグも優れています。

――Bリーグと欧州ではリーグのスタイル、外国籍のルールも違います。その上で、A東京ではこれまでのプレースタイルを変える必要があると思いますか。

ヨーロッパの方が対峙する選手のサイズは大きいという違いはありますが、自分のスタイルは変わりません。これまでと同じようにアグレッシブかつ、攻守ともに堅実なプレーを続けて、チームのシステムに上手く対応していきます。

――まだ日は浅いですが、東京での暮らしは快適ですか。

ヨーロッパとは全く違うけど、東京は世界でも最高の都市の一つだと思っています。日本の人たちはとても親切だし、買い物をするのにショッピングモールはあるし、いろいろなものが揃っていて生活しやすい。治安が良いから家族も呼び寄せたいですね。ここでの暮らしは気に入っています。

デション・トーマス

「試合を重ねるごとにステップアップするつもり」

――昨シーズンまで在籍したパナシナイコスは、ヨーロッパでも有数の激しい声援を送るファンで有名です。それに比べるとBリーグの会場は全く雰囲気が違うと思いますが、どう受け止めましたか?

君が言う通り、パナシナイコスにはヨーロッパでも有数の熱狂的なファンがいます。だから相手チームは対戦を嫌がります(笑)。Bリーグではアウェーのチームが得点しても会場から拍手が起こったりして、それはヨーロッパではなかなかないことです。日本ではバスケットボールがよりエンタテインメントとして楽しまれています。この雰囲気の違いにも慣れる必要がありますが、ファンの皆さんが笑顔で試合を楽しんでいるのは素晴らしいことです。

――あらためてここまでの振り返りと、シーズン中盤戦に向けての意気込みを聞かせてください。

11月はタフな戦いでしたが、最後に連勝して終えることができました。シーズンは長くこれからまたタフな戦いが続いていきますが、僕たちはより一つにまとまってきています。成功を収めるには、時に辛抱が必要なことをこのチームは分かっています。

12月もタフな日程ですが、ドッグファイトをする準備はできています。僕のやるべきことは、自分のスキルでチームを勝利に導くこと。コンディションを整えて、常にベストの状態で試合に臨み、試合を重ねるごとにステップアップするつもりです。自分の経歴から多くを期待されるのは分かっていますが、僕が気にするのは勝つことだけで、そのために全力を尽くします。

――最後、A東京ファンへのメッセージをお願いします。

みなさんの応援を僕たちは引き続き必要としています。みなさんの声援によって、僕たちはよりハードにプレーすることができます。再び素晴らしいシーズンを送って、一緒に優勝の喜びを分かち合いましょう。

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