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急激なウェイト増加はタッチを狂わせる原因に

ドラフトが終わると、開幕までは大物ルーキーたちの比較論に花が咲くもの。2016年のドラフト1位、2位ルーキーとなったベン・シモンズとブランドン・イングラムの比較も頻繁に聞かれるが、両選手はタイプが極端に異なる。

セブンティシクサーズの救世主として期待されるシモンズは、208cm109kgというサイズに恵まれた選手で、NBAでも1年目からの活躍が有望視される。一方、次代のレイカーズを担うイングラムは、身長でこそシモンズとほぼ同じ206cmだが体重は90kgに満たない「軽量級」で、まずはフィジカルをNBAレベルまで強化する必要があると言われている。

イングラム自身もそれを気にしているのだろう、ルーキーイヤーから一線級で活躍するために、デューク大時代から1日5000から6000キロカロリーを摂取する肉体改造に取り組んでいるという。

この手法を危険視するのは、かつてマイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントのトレーナーを務めたティム・グローバーだ。細身の選手が急激に体重を増やすことは「NBAで失敗するための方法」と『ESPN』に語っている。

「体重増加はプロセスを踏んで徐々に行なうべきものだ。彼らはバスケットボールの選手であって、ボディビルダーではない。コート上でパフォーマンスをしないといけないんだ。選手たちの動きの感覚は、自分の身体でのもの。その身体を急激に増やしてしまったら、これまでと同じ動きやシュートタッチは期待できなくなる」

イングラムの持ち味は、細身ながらも長いリーチを駆使したディフェンス、柔らかいシュートタッチなどの技術を駆使し、コート上のあらゆるエリアから得点できるオフェンス力にある。無理をして体重を増やすことは可能だろうが、グローバーの指摘にあるように、急激な体重増加は感覚を狂わせかねない。

幸いにもレイカーズでは、ヘッドコーチのルーク・ウォルトンもGMのミッチ・カプチャックも、イングラムの成長をゆっくりと見守るつもりでいるようだ。

ルーキー同士の比較ではなく、スター選手のデビュー当時との比較となれば、イングラムがよく言われるのはケビン・デュラントだ。NBA1年目、才能の片鱗は見せたものの身体的にはまだ準備不足で、NBAのレベルの高さに圧倒されたとの印象が強い。だがデュラントは1シーズンごとに力を付け、いつしかNBAを代表するスター選手へと成長した。

イングラムも同様である。素材は一級品だけに、どのように育成してNBAのトップレベルへと引き上げていくか。これはイングラム本人よりもウォルトンの仕事だろう。新進気鋭の指揮官の手腕が問われる。

デュラントと比較しても線の細さは目立ってしまう。ドラフト上位の選手であっても期待に応えられず、選手生活を終える者もいる。ポテンシャルは高いので焦らずに一歩ずつ成長してほしいものだ。