マイケル・ジョーダンが人種問題に関して声明「沈黙し続けるわけにはいかない」

2016/07/27
NBA&海外
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写真=Getty Images

アメリカを二分する問題に『神』が立ち上がった

警官により黒人市民が射殺され、その報復として警察官が殺害されるなど異常な事件が連続する事態により、アメリカ国内は二分しかけている。先日も『ESPN』が主催するスポーツ選手を対象とした年間表彰式『ESPY賞』の壇上で、カーメロ・アンソニー、クリス・ポール、ドウェイン・ウェイド、レブロン・ジェームズが、この問題に対して異例の声明を発表した。

そしてついに、現役時代に『神様』と崇められ、世界中のバスケットボールファンから今も尊敬されるマイケル・ジョーダンが、沈黙を破った。

7月26日、『The Undefeated』で発表された声明の冒頭でジョーダンはこう語りかけた。「誇り高きアメリカ人として、無分別な暴力行為で父親を失った人間として、そして黒人男性として、法の執行機関の人間の手によりアフリカ系アメリカ人が命を落としたことに深く心を痛めています。また、警察官をターゲットとする卑劣で憎むべき殺害事件について憤りを感じています。愛する家族を失ったご遺族の方たちにお悔やみを申し上げます。皆さんのご心痛は、察するに余りあります」

ジョーダンは「沈黙し続けるわけにはいかない」と、この問題に向き合う決意を述べ、「有色の人たちが公平で平等な扱いを受けるため。そして我々市民のために日夜命を危険に晒している警察官の皆さんが尊敬され、支持されるため。解決策を見いださなければいけない」と続けた。

またジョーダンは、地域と警察の関係構築を目指して設立された団体、全米有色人地位向上協会(NAACP)の弁護基金の双方に、それぞれ100万ドル(約1億円)を寄付すると表明した。

「この寄付だけでは問題解決に十分でないことは理解しているが、この財源により両団体が建設的な差異を生み出してくれることを願っている」

どちらの側に立つでもなく、「解決策を見いださなければいけない」とのメッセージを発信したジョーダン。

NBAはあらゆる差別に明確な「NO」を宣言する

1891年に冬季の体育プログラムとして考案されたバスケットボールは、アメリカ国内で黒人が独自の文化にまで発展させた競技で、現在のNBAがあるのも黒人選手の活躍によるところが大きい。近年ではヨーロッパや中南米の選手が多数加わり、国際色が豊かになっているが、それでもNBAの根底には黒人スポーツとしてのマインドが存在している。

このため、NBAは人種問題を含むあらゆる差別に対して非常にセンシティブで、なおかつ断固たる姿勢を取っている。2014年、当時クリッパーズのオーナーだったドナルド・スターリングが人種差別発言をしたことが明るみとなった時には、NBAコミッショナーは250万ドル(現在のレートで約2億6000万円)もの罰金を科した上で、スターリングを永久追放処分とした。

そして今年に入って、ホーネッツの本拠地ノースカロライナ州シャーロットで行う予定だったNBAオールスターゲームの開催地変更を決めたのも、同州議会で可決された反LGBT法の問題が改善されないと判断したからだ。肌の色だけでなく、あらゆる差別と向き合い、「NO」を宣言するNBAの姿勢が、この決定には表れている。

アメリカは歴史が浅い分、あらゆる文化、宗教を受け入れる多民族国家として今日の繁栄を築いてきた。だがここに来て、過激思想や差別思想を持った一部の人間により、無差別殺傷事件、特定の人種を狙う殺害事件など、痛ましい事件が相次いで起こっている。

相手を憎しみ、恨み、傷つける行為が続けば、それこそ反社会的な行動が連鎖して起こり、さらに過激な方向に物事が進んでしまいかねない。そして、現在のアメリカがそんな状況に陥ろうとしているからこそ、自らの影響力の大きさを自認するがために政治的発言を控えてきたジョーダンが、声明を出した。そのメッセージは、肌の色を問わずアメリカのすべての人たちに何らかの形で届いたに違いない。

世界全土で繰り返されている問題を解決する方法が簡単に見つかるとは思えないが、NBAの基本理念にもある相互尊重の精神を持ち、平等で公平な扱いを受けるべき、という強い影響力を持つスターアスリートたちの主張は、問題改善に向けた糸口になるのではないだろうか。