ジミー・バトラー

クラッチタイムはバトラーvsレブロンの一騎打ちに

レイカーズとヒートのNBAファイナル第3戦は、ティップオフ直後にレブロン・ジェームズからドワイト・ハワードへのド迫力のアリウープで幕が上がったが、その後は長くヒートが主導権を握る展開になった。

レイカーズの攻撃のスイッチであるアンソニー・デイビスに対し、ボールを入れさせないところからヒートはディフェンスを徹底する。激しい守備でキーマンを止めることでレイカーズにリズムを作らせず、レブロンとデイビスがターンオーバーを連発することに。開始8分で21-9とヒートがリードし、さらにデイビスを個人ファウル2つでベンチに下げさせた。

レイカーズはマーキーフ・モリス、カイル・クーズマとベンチから出た選手がハードワークを見せ、レブロンも攻守にフル回転して反撃を開始する。第2クォーターにデイビスがコートに戻ると、ラジョン・ロンドが彼にボールを預けるのではなくアシストを送り、フィニッシャーとして連続得点を挙げさせる。これでレイカーズが波に乗るかと思われたが、デイビスはケリー・オリニクに動きを読まれて個人3つ目のファウルを犯してベンチへ下がり、我慢の時間帯はなおも続いた。

前半を終えて58-54とヒートがリード。ダンカン・ロビンソンとタイラー・ヒーローの3ポイントシュート成功を含む10-0のランを後半開始から見せて点差を広げるが、レイカーズはここからディフェンスの強度を上げ、ペースを落としながらもリズムを作り直す。前半にフル回転していたレブロンを休ませ、デイビスがファウルトラブルの呪縛を解かれた第4クォーターで勝負に出る。

ヒートはほとんどの時間でリードしていたが、バム・アデバヨが欠場する状況でジミー・バトラーがレブロン以上に休みなく攻守にフル回転し、ローテーション的にも苦しかった。レブロンとデイビスを同時起用するレイカーズが一気に追い上げ、レブロンのアシストによるモリスの連続3ポイントシュート、ロンドのドライブレイアップで一気に逆転に成功する。

残り9分、89-91と逆転されてヒートはタイムアウトを取る。どの選手もハードワークを続けて息切れ寸前、特にバトラーは第1クォーターに1分半、第3クォーターの始めに1分間ベンチに座っただけでプレーし続けていたが、ここから奮起する。

攻めの起点となるのはすべてバトラー。レブロンとの1on1をドライブからのフック気味のシュートで制して同点とすると、レブロンのアタックを止めてターンオーバーを誘発。続くオフェンスでもレブロンをドライブでかわし、ヘルプに飛び込むモリスの動きを見極めてキックアウト、オリニクの3ポイントシュートをアシストして逆転に成功。続いてタイラー・ヒーローのキャッチ&シュートもアシストして、97-91と主導権を奪い返した。

ヒートはここからリードを守ろうとペースを落とすのではなく、むしろ上げてレイカーズを受け身に回らせる。デイビスの裏を取るオリニクにバトラーがアシストパスを送ってイージーシュートを成功させると、相手の警戒がすべてバトラーに向いた逆を突き、ヒーローがドライブレイアップを沈めた。

レイカーズはこの時間帯、インサイドを攻め切れずに淡白にアウトサイドシュートを打つシーンが多く、リバウンドにも行けずに相手に圧力を掛けられなかった。バトラーにはレブロンがマッチアップするのだが、ケンテイビアス・コルドウェル・ポープへのスイッチを促されてあっさり失点を許す。さらにはファウルトラブルでプレータイムが短くエネルギーが有り余っているはずのデイビスが試合のリズムに乗れず、ほとんどプレーに関与できないなど、クラッチタイムにもかかわらず攻守とも締まらない。

残り3分、流れを変えるにはバトラーを止めるしかないとレブロンが抑えに行くが、バトラーがそれを上回る。レブロンの狙うブロックショットをかわしてファウルを誘い、フリースローで105-97とリードを広げた。さらにレブロンがボールを運ぶシーンで、オリニクが後ろから腕を伸ばしてスティールに成功。残り1分、ドライブで一気に加速したヒーローがロンドをぶち抜いてレイアップを沈め、さらにバスケット・カウントのワンスローも獲得。ヒーローの『ドヤ顔』のビッグプレーで勝負アリ。最初から最後までエネルギー全開のヒートが115-104で勝利し、シリーズを1勝2敗とした。

勝利の立役者はバトラーだ。45分とフル出場に近いプレータイムで40得点10リバウンド13アシストを記録。NBAファイナルで40得点超えのトリプル・ダブルを記録したのは、1969年のジェリー・ウェストと2015年のレブロン・ジェームズ以来3人目となった。

そのレブロンをクラッチタイムで上回ったパフォーマンスは圧巻だったが、彼はチームでの勝利を強調した。「勝因はリバウンド、そしてディフェンスだよ。みんながディフェンスに戻ったのが大きかった。全員が勝つことだけを考えて戦うことができた。必要なのは勝利であり、ただ勝ちたかったんだ。僕のトリプル・ダブルなんてどうでもいいよ。これで僕らも勝てることが証明できたし、次はもっと良いゲームができるはずだ」