『切り込み隊長』西山達哉が秋田ディフェンスを翻弄
B1初昇格を果たした信州ブレイブウォリアーズは、記念すべき開幕節のホームに秋田ノーザンハピネッツを迎えた。昨日の初戦では、B1でタフに生き抜く秋田が突き詰めてきたプレッシャーディフェンスに飲み込まれ55-80の惨敗。それでも試合後に西山達哉が語った「秋田のディフェンスを一度経験したことで、違った見え方があるはず」という言葉が現実のものとなった。
信州は一日で秋田のディフェンスにアジャスト。ピックプレーに対して2人がかりでプレスを仕掛ける瞬間にボールをさばき、受け手もよく動いてパスを呼び込んだ。また一番近い選手にパスするのではなく1人飛ばす、さらには逆サイドまで強く出すスキップパスで秋田のプレスをかいくぐり、思い切り良く放つ3ポイントシュートを決めていった。
また唯一の外国籍選手であるジョシュ・ホーキンソンがオフェンスリバウンドで奮闘し、セカンドチャンスポイントをアシストしていく。秋田は早々にスタメンとベンチメンバーを全員入れ替えてプレスの強度を上げようと試みるが、信州の勢いが上回った。
ここからは両チームが次々に策を繰り出す展開に。秋田は2人がかりではなく1対1でプレッシャーを掛けることでディフェンスを立て直そうとする。だがここで西山が、1対1なら抜けると言わんばかりにスピードに乗ったドライブを仕掛け、スプリットからレイアップに持ち込み、ターンで相手をかわしてファウルを誘ってフリースローで追加点を奪う。かと思えばキックアウトで増子匠の3ポイントシュートに繋げるなど、秋田ディフェンスを手玉に取る西山の活躍で、信州がリードを守った。
そして後半開始早々、ハンドチェックを激しくした秋田のディフェンスにボールを引っ掛けられ、ターンオーバーから速攻を連続で浴びて同点に追い付かれたものの、前半から秋田のプレッシャーに晒されながら巧みにファウルを引き出していたことが功を奏し、秋田のインサイドの要であるカディーム・コールビーがファウルトラブルで思うようにプレーできない。
こうして逆転まで持っていけない秋田に対し、信州はプレスをかわしてフリーを作り、栗原ルイスの4点プレー、さらにはスキップパスから井上裕介が右のコーナースリーを迷わず射抜いてリードを奪い返した。
「大事なところで役割を果たす」古川孝敏が20得点
秋田は何度か流れをつかみかけたものの、追い付くことはできても逆転できずに、この試合で一度もリードを奪えないまま第4クォーターを迎えていた。コールビーはファウルトラブルで、野本建吾を起用して苦しい時間帯を耐える。信州のディフェンスは粘り強く、また高さと長い手足を使ってゴール下を支配するジョシュ・ホーキンソンをかわせない状況で、古川孝敏が走りながらパスを呼び込んでそのまま打つ、難易度は高いが彼らしいシュートを連続で決めて何とか繋いでいた。
そしてようやく、前田顕蔵ヘッドコーチの策が当たる。西山にボールを持たせないディフェンスを徹底的に遂行。信州は山本エドワード、大崎裕太がボールを運ぶのだが、彼らは1対1で秋田のディフェンスをかわすことができず、そこからのチャンスメークもできなかった。こうして信州のオフェンスを止めると、残り5分16秒に大浦颯太の連続得点で初めてのリードを奪い、古川も連続得点で続いた。
秋田はセーフティーリードこそ作れなくても最後までディフェンスを緩めずにリードを守り切り、80-76で勝利している。
信州は長くリードを保ち続けたが、最後に失速。大黒柱のアンソニー・マクヘンリーが家庭の事情によりチームを離れているなど外国籍選手の不在はライバルと同じ条件。その中でホーキンソンが26得点17リバウンド、さらには秋田から11ものファウルを引き出す奮闘を見せたのだが、最後は総合力で逆転を許した。小野龍猛が第1クォーターに指をケガして、出場が7分のみに留まったことも、終盤に力尽きる要因となっており、不運な面もあった。
秋田は第1戦ほどの快勝ではないにせよ、粘りに粘ってラスト5分で試合をひっくり返すしぶとさを見せた今日の勝利の方が価値がある。前田ヘッドコーチは日本人選手が得点できるバスケを目指すと話したが、コールビーがファウルトラブルで、ホーキンソンの好調ぶりに手を焼く中でも、チームハイの20得点を挙げた古川を筆頭に、出場した11選手のうち10人が得点を記録。全員で守るチームが、攻めも守りも全員でやるチームに変わりつつある。古川は「結果として入ってくれて良かった。大事なところで役割を果たせればと意識していたので、何とか勝ちに繋げられました」と、安堵の、それでいて会心の笑みを見せた。
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