大活躍するも、コンディションは万全でなかった?
ワールドカップアジア予選のWindow3、日本代表はオーストラリアとチャイニーズ・タイペイに勝利し、2次予選進出を果たした。この連勝の立役者として、今回が代表初参戦となったニック・ファジーカスを外すことはできない。
オーストラリア戦では25得点12リバウンド、台湾戦では32得点11リバウンドと大活躍。また、彼個人の数字が素晴らしいことはもちろん、攻守において圧倒的な存在感で相手の注意を引きつけたことで、味方をプレーさせやすくするなど有形無形のプラス効果をもたらした。
八村が日本バスケ界の『希望』であるならば、ファジーカスはまさに『救世主』。彼にそう質問すると、「自分が救世主かどうかは分からないけど、連勝して2次予選に進むことができてハッピーだ。今はとてもリラックスしているよ」と言う。
「パフォーマンスとしては良かった。シュートを外したこともあり、シーズン終了からしばらく間があったので、もう少し身体を絞って試合に臨めれば良かった。それでも2試合ともに勝てたことが最も重要だよ」とこの2試合を振り返る。あれだけのパフォーマンスを見せておきながら、本人からすればオフ明けでコンディションが万全ではなかったと言うのだから驚きだ。
「システムに沿ってプレーすることを心掛けている」
代表デビュー戦となった6月中旬の韓国との国際強化試合でのプレーと比較すると、オーストラリア、チャイニーズ・タイペイとの2試合ではピック&ロールに絡んでの攻めが少なくなった印象を受けた。ただ、ファジーカスからすれば韓国との2試合はあくまでテストマッチで、そこから自分とチームにとってより良い形を模索していった結果だと話す。
「チームのシステムに沿ってプレーすることを心掛けている。練習をしていく中で、このシステムの中で自分のできること、できないことを理解していった。韓国との試合はあくまでスクリメージの練習という位置付けだ。その後に練習を重ねていく中で自分のやるべきことをより把握できた。システムに特に変わった点はないけど、より快適にプレーできたと思う」
このように、代表の中で自分の本領を発揮できる最適解を見つけることができたことで、格上のオーストラリアを相手にしても平常心で臨めることができた。「いつも、自分は誰よりも準備をして試合に臨んでいる。自分の持っている力を発揮できると自信を持っている。だから、NBA選手を相手にしてもプレッシャーを感じることはなかったよ」
また、他の日本人選手たちと違い、ファジーカスの場合は普段のBリーグでもマッチアップするのは外国籍の実力者たち。国際試合になったからといって、対峙する選手のレベルの違いに戸惑うこともない。チャイニーズ・タイペイ戦、これまで日本は相手の帰化選手であるビッグマンのクインシー・デイビスに何度も苦汁を飲まされてきた。それでもデイビスに対するファジーカスの認識は面白く、そして心強い。「ギャビン(エドワーズ)や(アレックス)カークの方が手強い相手だと思う。Bリーグで彼らを相手にやってきたことが自信になった」
「2次予選も今回のようにうまくいくよ」
フル代表デビューの『同期』である八村塁に、ファジーカスは全幅の信頼を置いている。「この2試合における塁のパフォーマンスにも特に驚いてはいない。自分に自信はあるし、それは塁の能力についても同じだよ。素晴らしい選手は、他の選手をより良くしてくれるんだ」
ファジーカスの称賛は八村だけでなく他の仲間にも及んだ。「塁だけでなく、他の選手たちの能力が高いことも僕は知っている。パズルがしっかりハマる方法を見つけられれば、2次予選も今回のようにうまくいくよ」
9月中旬からは2次予選がスタートする。「僕と塁に加え、渡邊(雄太)がミックスすれば良いね」と語るファジーカスは、「オーストラリアに勝ったことは大きな自信となる。チャイニーズ・タイペイに大差で勝ったことで、勢いをつけて臨める」とチーム状態に手応えを見せる。そして「皆さんは僕らを信用してくれている。そして今回の結果で、僕らに自信を持ってくれるようになったと思っている」と周囲の変化についても好意的にとらえている。
2次予選では、相手がより周到なファジーカス対策を練ってくることは確実だ。その中でも彼がいつも通りの活躍を見せられるように、まずは8月開催のアジア大会でより連携に磨きをかけてくれることを楽しみにしたい。