取材=小永吉陽子 構成=鈴木健一郎 写真=ⓒJBA

「全部、質の高いバスケができた」と珍しく自画自賛

チャイニーズ・タイペイに108-68という完勝を収め、ワールドカップアジア1次予選の突破を決めたバスケットボール日本代表。17得点6アシスト5スティール2ブロックとマルチな活躍を見せた比江島慎は、「出だしから集中していましたし、オフェンスもディフェンスもリバウンドも全部、質の高いバスケができたので、ナイスゲームだったと思います」と試合を振り返る。

Bリーグでも代表でも、比江島は勝ち試合の後もまず反省点が口に出るタイプ。それでも逆転での1次予選突破を決めたこの日ばかりは話が別で、「出だしから激しくディフェンスすることを心掛けていましたし、でもオフェンスも良い形で入れました。出だしから自分がしっかりディフェンスできたのは良かったと思います」と、自らの出来に珍しく合格点を与えた。

ディフェンスを軸にプレーした比江島だが、勝負どころでは果敢に攻める姿勢もしっかりと打ち出せていた。その勝負どころは試合序盤、チャイニーズ・タイペイの出鼻をくじき、日本を勢いに乗せる立ち上がりだった。相手の足が動かない序盤、比江島はひたすら走ってトランジションオフェンスを引っ張り、自らのシュートで、また相手を引き付けてのアシストで日本に次々と得点をもたらした。

オーストラリア戦の勝利で新戦力のニック・ファジーカスと八村塁が警戒されるのは間違いない。だからこそ序盤は自分で行くという強い意志の表れだ。「やっぱり2人が活躍しているのでマークが厳しくなるのは分かっていました。その分、中にスペースが空いたというのはありますし、アグレッシブに行こうと自分の中で思っていました。そこでシュートが入ってくれたので、ホッとしたのはあります」

「相当、気持ち良かったです。この地でチャイニーズ・タイペイのAチームに勝ったことが今までなかったので、まあ気持ち良かったですね」と笑みもこぼれた。

「人生を賭けていろんなものを背負ってやってきた」

2勝4敗。それでも予選全体を振り返ると「本当に苦しい」という言葉が漏れる。「東京オリンピックを見据えて、人生を賭けていろんなものを背負ってやってきたので、ダメじゃないかと思ってしまう時期もあったんですけど、でもやっぱりやれるんだという自信もつきましたし、今後のバスケット人生が変わるぐらいの良い経験ができたと思います」

4連敗の後には相当落ち込んだという比江島だが、「世界を知るためにワールドカップに出たい」という一心で研鑽を重ね、今日の1次予選突破へとたどり着いた。「だいぶ、気持ち的に背負うものも分散はされたと思います」と、自分一人が引っ張っていた時期よりもプレッシャーは軽減されているようだが、まだまだ戦いは続く。

「まだ2勝しかしていないので。1試合1試合が本当に大切になってきます。どんどん質を高めてやっていけば自信も持てるし、勝てると思うので、しっかり準備していきたいと思います」

ワールドカップ、そして東京オリンピック出場を目指す日本代表にとって、アジア1次予選の突破はノルマ以前の話。ひとまずの目標はクリアしたが、9月には2次予選がスタートする。その準備はすぐに始まるが、激闘続きだった比江島には心身ともにリフレッシュしてもらいたい。