文=丸山素行 写真=加藤誠夫(JBPA)

「こういう機会が増えるようにしたい」

6月16日(土)に宮城県仙台市の三井アウトレットパーク仙台港で実施された「JBPAチャリティフェスト2018」に、今シーズン限りで現役を引退した大神雄子の姿があった。日本バスケットボール選手会(JBPA)主催のこのイベントは震災復興支援としての意味合いを持ち、大神も子供たちやバスケファンのためにと活動に加わった。

女子バスケ界を長く牽引してきたレジェンドだけあって、大神は多くのファンに囲まれた。「会場に来ると声をかけてくれる方がいらっしゃって、やっぱりうれしいですよね」と、一人ひとり丁寧に対応していた。

そうした行動は『恩返し』だと大神は言う。「バスケットボールというスポーツがあって、自分がそのバスケットボールに出会ったことでこうなっているので。逆にこれから自分がどうやって返していけるかが大事なのかなと。自分もこういう機会が増えるようにしたいです」

そして大神は『選手はプレーするだけじゃダメ』との持論を語った。「選手はただプレーするだけじゃなく、地域に対してもあこがれや感動、元気とか勇気を与えられるのが本当の選手のあるべき姿だと思います。今はSNSもありますし、現場で一緒にバスケットをやるとか、バスケットを知ってもらうとか、選手がしっかり発信していく場を作っていきたいです」

子どもたちの笑顔が「パワーになってモチベーションになる」

大神は先日、所属していたトヨタ自動車アンテロープスのデベロップメントコーチに就任し、第2のバスケ人生を歩み始めたばかり。そのため現在は自らの知見を広げている最中で、新しい立場になったことで経験するすべてを『勉強』と見なす。

こうしたイベントへの参加も『勉強』の一環だ。「トヨタと契約させてもらいましたけど、一つのチームに今は入らず、いろんなところでいろんな練習を見させてもらっています。コーチライセンスを取ったり、勉強させてもらおうと思い、昨日中国から帰ってきたばかりです。こういうイベントに参加させてもらうのも、自分なりにヒントを得たいなという思いもあります」

大神にとってあるべき選手像である「プレーするだけではダメ」は、指導者になっても同じだ。「プロの選手になりたいとか、どうやったらみんなが目標とするような選手になれるかとか。そうやって思ってもらえるようにするのもコーチの役割の一つです。ただコーチをするだけじゃない、それはコーチも一緒だと思うので。少しずつできているとは思うんですけど、これに満足してはいけないと思っています」

大神はイベントを終え、あらためて復興活動の意義と感想をこのように話した。「こうやってみんなが応援したりとか、笑顔になることが何よりも大切なんじゃないかなって。笑顔になるとか感情を出すとか、そういうことは生きてく中で絶対に必要だと思うんですよ。こうやって子供が必死になる姿とか、それを見てご両親が喜んで、それがパワーになってモチベーションになる。すごく良いなって思います」

大神はクラブのホームページで「『Development』という英語の意味は『発展』『発達』や『進展』『進歩』など、『未来』に繋がる言葉」と説明している。選手からコーチへと役職は変わったが、バスケに携わっていくことに変わりはない。『未来』へ向けた大神の活動はこれからも続いていく。