文=鈴木栄一 写真=野口岳彦、鈴木栄一

「チームメートとのケミストリーが大事になってくる」

6月17日、男子日本代表はゼビオアリーナ仙台で韓国代表と強化試合を実施。前半は五分五分の展開で折り返したが、後半に入って守備面で乱れたことで87-99と敗戦を喫した。

15日の代表デビュー戦では28得点13リバウンドと大暴れだったニック・ファジーカスも、17日は12得点8リバウンドに終わり、15日のように試合を支配するパフォーマンスとはいかなかった。この要因を、ファジーカスは次のように考えている。

「相手はスカウティングをしっかりしてきて、自分が完璧にオープンになることが少なく、それでシュートの成功率もそんなに良くなかった。自分がボールを持ったら常に目の前に誰かがいました。そして、タフなスケジュールの中で昨日の練習も結構ハードにやった。そういうところも影響しているのかなと思います」

2試合目は消化不良に終わったファジーカスだが、代表に合流にして間もない中での今回の実戦は、現在の課題を認識する上での貴重な機会となった。「韓国は良いチームだと分かっていたし、この2試合を戦えたことは自分たちの波長を合わせるという意味で良かったと思います」

さらに「特に自分がどこでボールをもらうことで一番効果的に攻められるのか、そういったところを見つけていきたい。そこはチームメートとのケミストリーが大事になってくる」と、当然のことながら周囲とのコンビネーションをより深めていくことの重要性をより実感している。

「チャンスをつかんで、試合の流れを引き寄せる」

次の試合はいよいよワールドカップ予選本番のオーストラリア戦となる。現状、相手はかなりの格上だが、舞台は日本のホームゲーム。また、1次予選突破がゴールではなく、あくまでワールドカップ出場という目標達成においては、2次予選は1次予選の成績を持ち越しであることからオーストラリアが相手ではあっても白星は何としても欲しい。

「とてもフィジカルが強いチームだと聞いています。大事なのは相手のフィジカルにちゃんと対応して、リバウンド、ルーズボールなど五分五分の状況での競合いでボールをどれだけ取れるかにかかってくる」と、アップセットを起こすカギについてファジーカスは考えている。

「自分たちが良いプレーをしないといけないのは間違いない。ただ、彼らが本当に酷いプレーをしなければ勝てないってことはない」と、勝機は十分にあると見ている。そのためにも「チャンスをしっかりつかんで、試合の流れを引き寄せらないといけない」と、いかに主導権を握って相手にプレッシャーを与えられるかが重要と語る。

オーストラリアにも「僕がいる日本を破っていない」

ちなみに17日の試合、ファジーカスの出場時間は23分52秒。これはあくまで強化試合であり、色々な選手を試すテストの場という側面も大きかったが、Bリーグの試合と比べるとプレータイムは少ない。また、このプレータイムについては、フリオ・ラマスヘッドコーチの次のような考えも影響している。

「ニックがどれだけすごい選手かは分かっています。ただ、国際試合になると25分以上出場させるのはキツい。もちろん、25分以上プレーさせないとは言わないですが、どの国際レベルの試合を見ても一人の選手が常に25分以上出ているというのはないです」

ところがファジーカス本人は、指揮官の方針に異を唱えるつもりはないとしても、普段から外国籍のビッグマンと激しい戦いを行っているだけに「試合のインテンシティ(激しさ)について、Bリーグと国際試合で違いを感じることはない」と言ってのける。だからこそ「30分から35分のプレーでも大丈夫。そういった時間でもプレーできるコンディションにはある」とフル稼働にも応えられるとの意気込みを持っている。

6月17日は彼にとって33回目の誕生日であった。「32歳は良い年だったけど、33歳はもっと良い1年にしたいね」とほほ笑む彼に、あらためて代表のユニフォームを着て戦う感想を聞いてみた。「日本を代表して戦えることは素晴らしい。とても光栄で、プライドを持っている」

日本代表として最初の大一番まであとわずか。「信じてほしい。オーストラリア戦はしっかり準備をして迎えられる。それに彼らは、僕がいる日本を破ったわけではない」と頼もしいコメントをくれたファジーカスの大暴れを楽しみに迎えたい。