日本代表を率いるトム・ホーバスの野心「世界の最先端のバスケットをやりたい」

2018/06/10
日本代表
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文・写真=鈴木栄一

大黒柱が抜けるも、充実した選手層でカバー

6月8日、女子日本代表はチャイニーズ・タイペイ代表と国際強化試合を実施。昨年のアジアカップ優勝メンバーである町田瑠唯、水島沙紀、長岡萌映子、宮澤夕貴、髙田真希が先発した第1クォーターに28-11と大差をつけ主導権を握ると、その後も19得点7リバウンドの馬瓜エブリン、6得点12アシストの本橋菜子とベンチメンバーも奮闘し、96-66と圧勝を収めた。

2日前の練習試合では接戦になったという相手に対して大差で勝てた要因をトム・ホーバスヘッドコーチは「(前回の試合では)エナジーが足りなかったです。今日のテーマは絶対エナジー、気持ちで負けないことでした」と語る。

今の代表で最も層が厚いポジションと言えるのは3番で、宮澤、長岡という世界標準の実力者が揃う。この試合では本来ならば4番の先発である渡嘉敷来夢が体調不良で欠場。その結果として、宮澤、長岡の2人が揃って先発していた。だが、渡嘉敷が復帰しれば話は変わってくる。昨年の3番といえば、宮澤がコンディション不良で出遅れ、長岡が先発としてアジアカップを最後まで戦い抜き、宮澤は3番だけでなく複数のポジションをこなすシックスマンとして活躍した。

だが、ホーバスは「今は、宮澤が3番の先発ポジション。今年はとてもコンディジョンが良いです」と昨年とは状況が変わっていると語る。だが、長岡についても「萌映子は第3次合宿まではまあまあのプレーだったのが、最近すごく良くなってきています。今はシックスマンみたいな感じですが、絶対にしっかりと使います」と、両者ともに大きな信頼を寄せる。

吉田が抜けたポイントガードで熾烈なポジション争い

吉田が抜けたポイントガードについては、町田瑠唯、本橋菜子、三好南穂、藤岡麻菜美の4名が競っている状況。それぞれの特徴を指揮官は次のように語っている。「町田はベテランではないですが、国際舞台の経験が豊富です。こういった経験のある選手が本当に必要です。本橋はいろいろなことができる面白い選手。プレッシャーディフェンスも良いです。経験は足りないですけど、(8月に新潟、群馬で対戦する)カナダ相手にもどこまでできるのか楽しみです。三好は、他の選手と比べて典型的なポイントガードといったタイプではないですが、3ポイントシュートがすごく強力です」

故障からの回復途中で、今回の試合を欠場している藤岡については「僕のバスケットをよく知っています。ケガも少しずつ良くなってきています。今もチーム練習に少しずつ入っており、6月下旬には実戦形式の練習にも参加できそうです」と復調に期待を寄せる。

「藤岡もまだ試合に出ておらず、ポイントガードの競争は熾烈です」とホーバスが言うように、代表への生き残りへ一番の激戦区となっている司令塔だが、その中でも本橋は異色の存在だ。Wリーグの成績上位である実業団チームで占められてきた代表メンバーにおいて、2017-18シーズンではリーグ10位だった東京羽田ヴィッキーズ所属からの選出はかなり希有なこと。指揮官は「日本の女子バスケットボール全体のためにも良いと思います」と、本橋の奮闘がWリーグの活性化につながると見ている。

代表経験の浅い若手は経験不足で荒削りな部分もあり、我慢が必要との見方を示すが、一方で大きな可能性を感じている。「この試合ではエブリンが良かったです。オコエも面白いです。(赤穂)ひまわりはもっとアグレッシブなプレーを見せてくれれば。あの身長(184cm)で2番をプレーできる選手は、日本では今まで見たことがない。日本の弱いところはいつもリバウンドですが、彼女はリバウンドを取れます」

ウォリアーズやロケッツのようなバスケットを目指す

今年の代表は昨年に比べても3ポイントシュートを積極的に放つ『スモールボール』を展開している。「宮澤、藤髙(三佳)、三好だけでなく、高田やオコエ(桃仁花)と4番、5番の選手も入ります」と、インサイドの選手にも外角シュートを積極的に狙わせる。

「チャンスがあれば、インサイドの選手もどんどん打っていけばいい。NBAのゴールデンステイト(ウォリアーズ)やヒューストン(ロケッツ)がやっているスペースを上手に使ってペイントに入ってキックアウトと、ボールをよく回してシュートを打つ。男子ではやっていても女子では世界を見てもやっていない最先端のバスケットをやりたいです」

このように意気込みを語るホーバスだが、スモールボールの鍵となるアップテンポなゲーム運びに対応しパスもさばけて外角シュートを打てるビッグマン、つまりウォリアーズのドレイモンド・グリーンのような選手は女子代表で誰になるのか、との問いに「髙田ですね」と即答する。「彼女がドレイモンド・グリーンみたいな存在です。長岡は(アンドレ)イグダーラみたいな感じ。日本はサイズが大きくないけど、決して小さくはないところも似ています」

今はあくまでトライアルの期間であると語る指揮官。8月上旬に行われるカナダ代表戦の前後までは、まだまだ選手選考は続いていく。それは今回の試合に登録されたA代表だけでなく、アジア大会に出場するB代表のメンバーも対象だ。「Bチームにも面白い選手が結構います。Aチームに入るチャンスはまだあります。Aチームの誰かが調子を落としたり、ケガをしたりしたらBチームから絶対にピックアップします」

不動のレギュラーだった吉田と大﨑が抜けてもなお、ここまでのチーム作りは順調だ。「プラン通りにできている。ちょうど良いかなと思います。いろいろなオフェンス、ディフェンスもやっていますが、ワールドカップで対戦する相手に研究されるんで全然見せませんでした。これからが楽しみです」と、ホーバスは手応えを語る。世代交代を図る中でどんな若手が台頭し、どこまでチームとしての一体感を高めていくことができるのか。8月上旬に行われるカナダ戦が、より楽しみとなる今回の国際強化試合となった。