ナゲッツ相手に2勝1敗「どうしても勝ちたかった」
西カンファレンス2位のクリッパーズと3位のナゲッツによるセミファイナルは、予想通り白熱したシリーズとなっている。クリッパーズは初戦こそ疲れの見せるナゲッツに完勝したが、第2戦では相手の勢いに飲み込まれた。シリーズの主導権を握る上で大事な第3戦は一進一退の攻防に。そんな試合の勝負どころで違いを見せたのはカワイ・レナードだった。
もっとも『エースの仕事』が得点であれば、この試合でのカワイはそれに当てはまらない。勝負の第4クォーター、残り10分を切ったところでコートに戻って以降、カワイのフィールドゴールは7本中成功わずか1本とシュートタッチは良くなかった。4本中3本を決めたフリースローを含めても、終盤の得点は5に過ぎない。
それでもコートを支配し、どちらに転ぶか分からない試合をクリッパーズへと手繰り寄せたのはカワイだった。勝負どころのリバウンド、アシスト、ブロックショットはすべてナゲッツに傾きかけた勢いを断ち切るものだ。
積極的にシュートを打ちに行かなくてもインパクトを残せる選手はそう多くはない。カワイは「チームメートが決めてくれれば、僕個人の得点はどうでもいい。僕はプレーメーカーであり、ディフェンダーであり、スコアラーなんだ。試合に勝つためならすべてをこなす。今日はルー(ウィリアムズ)もPG(ポール・ジョージ)も決めてくれた」と語る。
この試合ではポール・ジョージがフィールドゴール18本中12本成功の32得点と好調だった。『バブル』でプレッシャーのかかるプレーオフを戦うことで気分がふさぎ込み、調子を崩していたジョージが、ここに来て完全復活のパフォーマンスを見せている。
「PGはエネルギーに溢れていたね」とカワイは言う。「攻守にチームを引っ張って、彼の指示に従ってチーム全員がハードワークできた。シュートが入らない時期も、それ以外のリバウンド、プレーメーク、デイフェンスはずっと好調だった。彼のシュートが決まるようになって僕もうれしいし、こうして勝つことができてうれしいよ」
得点はシュートタッチが好調な選手に任せておけばいい。ディフェンスとリバウンドがこのチームの重点だ。リバウンドを修正し、絶好調だったヨキッチの得点が勝負どころで止まったのは、カワイのディフェンスが大きい。
「ハーフタイムでナゲッツのリバウンドは確かウチより13も多くて、15本多くのシュートを放っていた。リバウンドは大きなカギだった。ヨキッチは素晴らしいプレーをしていたけど、カバーに入ることでオープンで打たせないようにした。このチームはディフェンスに誇りを持っているんだ」
極め付けは残り1分47秒、6点差の場面で相手のエース、ジャマール・マレーのダンクを止めたシーンだ。ドライブでモントレズ・ハレルを振り切ったマレーの動きに反応したカワイは、長い腕、そして大きな手を伸ばして、最後は中指1本でダンクを叩き落した。「カットインしてくるのが見えたので、ローサイドにヘルプに行き、ダンクを狙ってきたので止めた」。いつもと変わらず淡々と語るカワイだが、ほんのわずかに頬が緩んだように見えたのは気のせいだろうか。
「このゲームにはどうしても勝ちたかった」とカワイは何度も言った。「試合に勝つにはチーム全員の努力が必要で、一人の選手だけでは勝てない」
今日のクリッパーズに足りなかったリバウンドとディフェンスを、カワイは見事に補った。会見場では淡々とした表情を崩さなかったが、彼にとってもチームにとっても十分に満足できる勝利だったはずだ。