文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

逆転を狙ったシュートは決まらず、B2降格へ

西宮ストークスは5月12日に行われた、横浜ビー・コルセアーズとの残留プレーオフ第2戦、第3戦に連敗し、B2降格が決まった。

第1戦は86-83、スコア以上にパフォーマンスで大きく上回る完勝となったが、これが相手の底力を発揮させる結果に。ただ、第2戦は大敗を喫したものの、第3戦は3点リードで前半を折り返しており、どちらが勝ってもおかしくない展開だった。

西宮の4点ビハインドで迎えた残り34秒の場面、道原紀晃が値千金の3ポイントシュートをねじ込んで18-19と1点差に迫り、直後のディフェンスも守り切る。それでもオフェンスリバウンドを拾われ、残り5秒で川村卓也のフリースローという状況。1本目を決められ、2投目が外れた。

道原はその時の様子をこう語る。「チームは(ドゥレイロン)バーンズ選手にラストショットをと。僕たちは空いているコーナーとかでスペースを取ってキックアウトが来れば3ポイントを狙っていました」

だがことはそう簡単に運ばず、ボールはリバウンド争いからハーフラインまで弾かれてしまう。反応した道原が相手陣地でそれを拾った。時計は動き出しており、道原がシュートを打つ以外選択肢はなかった。3ポイントラインから離れた、右45度の位置から放ったシュートはリングに弾かれた。

「一つ前の3ポイントが入って、気持ち的にはもう一回チャンスがあったら打ちたいという気持ちもありました。あんな感じで僕の方にボールが転がってくるというのは、チャンスだったんですけど、それをモノにできなかったです。何て言うんですかね、自分、持ってないというか……。そういうのを感じさせられました」と、チームを降格から救えなかった道原は自分を責めた。

B1の壁「そこは認めないといけない」

西宮は昨シーズンB2で優勝し、B1への昇格を果たした。今シーズンの開幕直前の取材で道原は、B1とはディフェンスの質に違いがあると話していたが、結果的に『B1の壁』の高さを痛感することになった。「東地区とゲームをすると、やはり高さの面であったり、選手層の厚さが違いました。B1の厚くて高い壁というのを感じたし、そこは認めないといけない」

それでも横浜が有利と見られていた中で第1戦に勝利し、最後まで死闘を繰り広げて意地を見せたプレーオフとなった。この残留プレーオフに照準を絞っていたことを明かし、その準備の仕方が間違っていなかったことも示すことができた。

「誰もが横浜が行くやろ、というところを西宮が先取したのは、僕たちもやっぱり勝てるチームだったということを少しは証明できたと思います。早めに残留プレーオフが決まって、その後はここのゲームに合わせることを目標に頑張ってきました。どこのチームとやる時も最後にこのゲームで良いところを見せれるように、負けたとしても皆で前を向いてやってきました」

道原はこの悔しい思いを胸に、再びB1の舞台に戻ってくることを望んでいる。「どうなるか分からないですけど、ここに残ってもう一回B1にチャレンジすることが、自分にとっては良いんじゃないかと思います。敵わなかったという面も多かったですけど、通用するところも絶対あったので、1年、2年かけてでもチャレンジしたい」

「道原で終わったなら良かったんじゃないか」

チームの成績は低迷したが、道原にとっては飛躍のシーズンとなった。今シーズンから先発に定着し、プレータイムはチーム最長となった。また結果が出ない中でポイントガードにコンバートされた時期もあり、西宮の『顔』と呼べる存在に成長した。そんな努力を周囲も理解していたのだろう。ラストショットを外した道原に投げかける言葉は温かいものだったという。

「中心選手として使われるようになって、そういうところで西宮っぽい感じで終わったんちゃうかって。道原が最後にシュートを打った。外れたけど道原が打って終わったなら良かったんじゃないかとは言ってくれました」

それでも道原は自分を責める。相手の横浜には、同じような場面でシュートを決め、チームをB1に残留させた川村が格好の比較対象となる。「川村選手は去年ああいうところで決めました。そこはまだまだですし、決めることができず悔いが残ります」

指揮官の髙橋哲也も道原を責めはしない。「あれを決めれるような選手になるのが彼が次に目指すステップではないかと思います。この悔しさを残りのキャリアに生かしてほしい」と語る。

『B1の壁』に苦しんだことは確かだが、その壁が道原を強くもした。道原はこのようにシーズンを振り返った。「できるところもあったし、やりたいことを示せたと正直感じています。でももっと良くならないといけないことも、このB1で感じることができました。僕は成長してるなって、実感できたシーズンでした」