宇都宮ブレックスで結果を出し続ける渡邉裕規の処世術「大事にしているのはスタッツじゃなくてインパクト」

宇都宮ブレックスで結果を出し続ける渡邉裕規の処世術「大事にしているのはスタッツじゃなくてインパクト」

2020/08/28
渡邉裕規

抜群のトークセンスを持つ宇都宮ブレックスの渡邉裕規は数々のメディアに出演し、ラジオ番組のMCを務めるなどバスケ選手としては稀有な存在だ。本業のプレー面でも、勝負強さと安定したディフェンス力を持ち、チームからの信頼も高い。180cm78kgと決して特別な肉体の持ち主ではない彼が、Bリーグ屈指の強豪チームで活躍し続けられるのはなぜなのか。コート内外で活躍するエンターテイナーに話を聞いた。

「バスケ選手としても必要と思ってもらいたい」

──数々のメディアに出演されていますが、コロナ禍でいつも以上に忙しいオフシーズンとなったのではないでしょうか?

全然ですよ。いつもだったら栃木県内のイベントも多いですし、トークショーがあったり、リモートの仕事は家でもできるので忙しさは全く感じていないです。仕事に関しては、メディアの方と仕事するのは多いですけど、ファンの方と触れ合うことが全くないので、逆に物足りなさをちょっと感じています。最後にホームゲームをしたのが2月の始めの頃なので。

──比江島選手と動物園で飼育体験をしていた動画を拝見しました。それもファンとの触れ合いを意識したものなのでしょうか?

そうですね、バスケット選手がバスケットの動画を上げたり、ハーフコートからシュートを打ったとしてもそんなものは入るし、僕はそれだけじゃ面白くないと思ったので。ウチには田臥(勇太)さんもいれば比江島(慎)もいるし、もったいないと。選手とファンが触れ合えないなら、もっとプライベートとか元気な姿だったりふざけてる姿を見せたほうが面白いと思いました。バスケを見ることを娯楽にしている人たちに元気にやっている姿を配信したかったです。

──確かに面白かったです。渡邉選手は常にポジティブな印象があります。ネガティブなニュースが多い中、そのようにいられる秘訣はなんでしょう?

そうですかね? 僕にだってネガティブなことはありますよ(笑)。ただ、無理にポジティブになる必要はないと思っています。「元気出せ」って言われて出るもんじゃないと思いますし、僕もバスケを辞めていた頃に「元気出せよ」って言われても出なかった時期もありますから。無理をするのが一番良くなくて、普段の生活が充実していれば自然にポジティブになるんじゃないかと。

──かつての日常が戻り始めていますが、現在はどのような心境でしょうか?

新シーズンへの準備も始まって、この時期は試合に出て、ちゃんと勝った試合に絡むことを目標にして過ごしています。試合に出て何かインパクトを残さないと次の試合に出られるか分からないですから。

若い時は日本代表とか個人タイトルを目標と答えてきたこともありましたが、今はこのチームにい続けることが大事。メディアに出るだけじゃなく、バスケ選手としても必要と思ってもらいたい。

渡邉裕規

「ハマるシーズン、優勝する時ってそういう時」

──試合に出られるか分からないとの思いは意外です。LJ・ピーク選手が加入し、チーム内競争は激しくなりそうですね。

そうですね。でも新戦力はもちろん楽しみですが、まずは日本人選手がメインになると思っています。何年も一緒にやってきた選手たちが残り、成熟してきて本当に良い時期だと思います。田臥さんがいて、佐々(宜央)さんも戻ってきて、そういうのがハマるシーズンってあるんです。優勝する時ってそういう時だと思いますし。

初年度はジェフ(ギブス)と(竹内)公輔さんが来たのが大きかった。優勝を経験している選手が来て、悔しい思いをした母体のメンバーが残って。これだけ良い時期に優勝しないでどうするんだろう、って初年度は思いましたね。

──ジョシュ・スコット選手も加入し、補強もばっちりですね。初年度と同じようなイメージですか?

補強というよりは、優勝するために獲得した感じですね。足りないイメージはないです。でも他のチームも恐ろしいほど補強していて、それが初年度とはちょっと違います。不安はないですけど、整っているから言い訳はできないなと。

──過去最強なんじゃないですか?

どうだろう? タレントを揃えたとしても結局は融合した力ですから一口に言えないですね。下馬評は高いと思うんですけど、あまり高く書かないでください(笑)。ちょっと微妙って書いてくれたほうが僕らは「やったろうじゃん」ってなるんで(笑)。

──残念ながらご期待に添えることはできないかと(笑)。

まぁやってみないと分からないってことです。僕らの強さは戦術理解ではなく、ともにしている経験値が一緒というか、あの時見た悔しい映像が一緒なところなんです。「昨シーズンの悔しさを思い出そうぜ」と言われても、新しい選手が多い場合は伝わりづらい。主力が変わらないメリットはそこにあって、共有が融合力に繋がると思っています。

渡邉裕規

「上手く見せることもスキルだと思っています(笑)。」

──先ほど試合に出られるか分からないという言葉が出ましたが、実際はどのシーズンも安定した結果を出しています。決して身体能力が突出しているわけではないのにそれができる理由はどこにあるのでしょうか?

結果を出している感覚はまるでないですよ。結果を出すことが当たり前だと思ってないから、出れるんですかね? 僕みたいな甘っちょろい男は、当たり前だと思ってしまうとすぐ油断しますから(笑)。だから毎年の目標が試合で活躍して、チームに貢献することなんです。「今日はやってやった!」と心の中で思う試合はたまにありますけど、数は多くないですから。

昔からダンクはできないし、足も速くないし、体力はない。自分がすごい選手じゃないというのは何十年も前から分かっていました。なんでB1で活躍できるのって言われたら、プレースタイルが全く変わらなくて、落ちるところがないからですかね。運動能力でやってる選手は難しいと思いますよ、若い選手のほうが速いし跳びますから。

──自分を客観的に深いところで理解することは大事ですよね。ただ、それ以外にもやれる理由はありそうな気がします。

自分が活躍しても試合に負けたら意味がないですが、シュートを入れるタイミングだったり、雰囲気を変えることだったり、その試合で与えるインパクトはかなり意識しています。大事にしているのはスタッツじゃなくてインパクトですね。そういうのがないと試合に出そうとコーチに思われないだろうし、どれだけ必死になってインパクトを残すかですね。

あとは戦術とそれに見合ったスキルは必要で、僕はそういうところを徹底してやってきたから今こうなっていると思います。宇都宮はディフェンスのチームと言われてますが、僕はそんなにディフェンス上手くないですからね。上手く見せることもスキルだと思っています(笑)。

──なるほど、なんとなく渡邉選手が活躍し続ける理由が分かった気がします。では最後にファンへのメッセージと来シーズンの意気込みをお願いします。

PCR検査もやるだろうし無観客の可能性もあるし、これまでに感じたことのない、何が起きるか分からないシーズンになりそうな気がします。昨シーズンのこともあるので白黒つけたいのが一番。チャンピオンを決めるところまで行けることを望んでいます。

お客さんを入れて栃木でホームゲームができることを信じているし、ファンの方もそれを理解して応援し続けてもらいたいです。触れ合える機会があれば思う存分こちらも力を尽くします。強いブレックスを見せることが使命だと思うので、まずはそこを頑張って。ファンの皆さんが暇をしないように、YouTubeも頑張ります。

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