マイケル・ポーターJr.

ディフェンスの脆さがオフェンスにも悪影響を及ぼす

ナゲッツはジャズとのシリーズ初戦に快勝しながら、その後に連敗を喫して通算成績を1勝2敗とした。だが、初戦で敗れたジャズが課題を見事に修正してパフォーマンスを上げてきたのに対し、ナゲッツは試合を重ねるごとに勢いを失っている。特に第3戦は第2クォーターに引き離され、後半を通じて見せ場のない不甲斐ない戦いに終始した。

ヘッドコーチのマイケル・マローンは「2試合連続でケツを蹴り飛ばされた」と憮然とした表情を見せる。「ウチの選手は誰一人として本来のパフォーマンスを発揮していないし、私自身のコーチングも十分ではない。第4戦までに変更しなければいけないことはたくさんある」

「スタッツの問題じゃない。端的に言えばあまりにも簡単に気持ちで屈してしまった。精神的にもっとタフにならなければ」

ギャリー・ハリスとウィル・バートンの欠場は痛いが、ロスター全員が完璧なコンディションで戦うのは理想論でしかない。与えられた状況でどれだけのパフォーマンスを発揮できるか。ギリギリのせめぎ合いを制する力がプレーオフでは問われる。

最も想定外なのはマイケル・ポーターJr.のパフォーマンスだ。腰のケガでなかなか本来の実力を発揮できなかったポーターJr.が『バブル』で覚醒。シーディングゲームで7試合に出場し、プレータイムが30分を超えた4試合すべてでダブル・ダブルを記録。先発の座をつかみ、プレーオフが始まる前にはニコラ・ヨキッチ、ジャマール・マレーと並ぶ『ビッグ3』の完成だと称えられた。ところがプレーオフでは攻守ともに良さが消えてしまっている。

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もともとポーターJr.の持ち味は得点力。打点の高いジャンプシュートに迫力あるドライブと、どこからでも、どんな形でも高い確率でシュートを決められるオフェンス力が強みだ。ディフェンスもフィジカルとリーチの長さ、フットワークの良さがあり、1on1の守備は決して苦にしない。ところが、ピックへの対応の悪さ、ローテーションの判断の甘さをジャズに徹底的に突かれ、ここからナゲッツのチームディフェンスは攻略されてしまった。

第2戦では28得点を奪うも、敗れたとあって「勝てなければ何の意味もない」とコメントしたポーターJr.だが、第3戦では守備の難を突かれて早々にベンチに下げられ、プレータイムは15分のみ。得点も7と振るわなかった。

ハリスは間もなく復帰できると見られているが、最後にプレーしたのは3月で試合勘を失っている。いきなり多くを求めるのは難しい。やはりナゲッツにとってはポーターJr.がプレーオフの戦いの中でステップアップするのがベストシナリオだ。

すべてのディフェンスを完璧に遂行する必要はない。彼だけでなく仲間がカバーして、チームで守るのも大事だ。だが、何より大事なのは自信を失わないこと。ドノバン・ミッチェルとルディ・ゴベアのピック&ロールに狙い撃ちされてもアグレッシブに食らい付き、やられてもオフェンスに引きずらないこと。守備に意識が向きすぎて、オフェンス面での魅力がなくなるようでは本末転倒だ。

ドラフト前からケガに悩まされ続けたポーターJr.は、コート上で初めて試練を迎えたと言える。ここでステップアップできなければ真のスター選手にはなれない。ケビン・デュラントを彷彿とさせるタレントを持つ若手だけに、ここは乗り越えてもらいたいところだ。またナゲッツにとっても、この課題を解消できないままジャズに競り勝てたとしても、その先で勝ち続けるのは難しい。ポーターJr.もナゲッツも、この試練を前に『次のレベル』に行けるかが問われている。