文・写真=鈴木栄一

シーズンハイの得点に加え、敵将も称える守備の奮闘

5月5日、千葉ジェッツは琉球ゴールデンキングスとの激戦を80-76で制して東地区優勝を決めた。千葉は富樫勇樹が13得点10アシスト、ギャビン・エドワーズが18得点7リバウンドをマーク。また、小野龍猛が試合終盤に貴重な3ポイントシュートを連続で決めるなど、中心選手がしっかりと仕事を遂行した。その中で、ベンチスタートながら彼ら以上とも言える存在感を示したのが石井講祐だった。

この試合、石井は第4クォーターでの8得点を含む16得点をマーク。また第3クォーターには、決まった直後に琉球にタイムアウトを取らせたレオ・ライオンズのダンクをお膳立てするオフェンスリバウンドからのアシストもあった。さらには第4クォーター中盤、相手の3ポイントシュートでリードを5点に縮められた直後の踏ん張りどころ、2つのオフェンスリバウンドでつないだところで値千金の3ポイントシュートを成功させている。要所でのビッグプレーが光る、スタッツ以上のインパクトだった。

今シーズン最多得点となった石井は「地区優勝が懸かっている中でも、いつも通り落ち着いてプレーすることができました」と大一番でも平常心でプレーできたことを誇る。普段は控え目なコメントが多いが、この一戦については「今日はずっとシュートタッチが良かったので、ボールが来たらいいなと思っていました」と振り返った。

また、シュート以外のスタッツにあまり出ない部分でも大きく貢献していたのも見逃せない。これは琉球の佐々宜央ヘッドコーチの次のコメントからも明らかだ。「石井が手を出してパスを弾いたり、ルーズボールやリバウンドを取りに行ったりと良い働きをしていた。彼に千葉の良い流れを作られてしまいました」

チャンピオンシップへ「得点を散らすことが自分の役割」

千葉のオフェンスといえば、富樫のピック&ロール、エドワーズや小野のインサイドアタックが大きな武器となっている。だが、チャンピオンシップという短期決戦の大一番になれば、相手がこの千葉の強みをレギュラーシーズン以上に徹底して潰しに来る可能性が高い。そうなった時にオフェンスの鍵となるのは、彼らにマークが集中することで生まれる隙を、石井のようなシューターがどれだけ決め切れるかだ。

この点は石井自身も自覚しており、「オープンの3ポイントはしっかり決めていきたい。得点をいろいろな選手に散らすことができれば、相手も的をしぼりづらくなってきます。そこは自分のチャンピオンシップに向けての役割だと思います」と意気込む。

また、大野篤史ヘッドコーチが「彼の持ち味はシュートですが、ボールが動かなければ彼は生きてこない。それは他の選手も理解しないといけないですし、今日は良い形で出たのが収穫」と語るように、石井が外角シュートを決めている時は、チームとしてうまくオフェンスが機能していることの現れでもある。そういう意味でも、チャンピオンシップの前に石井が良いイメージをつかめたことは、彼自身だけでなくチームオフェンスにとっても良い兆しだ。

「地区優勝はジェッツにとって初めてのことで大きな達成感があります。ただ、目標は優勝することなので、通過点でもあります」と冷静な石井は、本日のレギュラーシーズン最終戦についてこのように語る。「勝つことが一番。そして、自分たちのバスケットボールをしっかり実行する内容も大事です。チャンピオンシップに向けて良い流れを作れるようにしたい」

石井がこの試合でつかんだシュートタッチの好感触を、しっかりキープしたままチャンピオンシップに臨めるかは千葉が頂点に立つための重要な要素となってくる。