文=立野快 写真=B.LEAGUE

ドライブからの展開がハマった名古屋Dが優位に

5月4日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズがホームに栃木ブレックスを迎えた。チャンピオンシップ出場チーム同士の対戦は、終盤に栃木が15点差を逆転する劇的な試合となった。

試合序盤は張本天傑が3ポイントシュートを連続で決め、ドライブからのキックアウトでアウトサイドからのシュートを決めていく得意の形で名古屋Dが先行する。積極的にドライブを仕掛けることで栃木のディフェンスを上回り、第2クォーターの残り6分41秒には船生誠也が技ありのバスケット・カウントをもぎ取って、29-19とリードを2桁に広げた。

この時点でチームファウルが5に達した栃木だが、ここから粘りを見せる。山崎稜の3ポイントシュート、生原秀将のスティールからの得点で反撃。ディフェンスの強度も上げて相手のターンオーバーを誘発し、37-41と差を詰めて前半を終えた。

それでも第3クォーターは立ち上がりから藤永佳昭と張本が連続3ポイントシュートを決め、名古屋Dが勢いを取り戻す。ジャスティン・バーレルとの連携から張本、藤永のアシストで中東泰斗が連続でゴール下を決め51-39とリードを広げる。その後も果敢なドライブアタックで栃木ディフェンスをかき乱す名古屋Dが優勢を保った。

勝負どころでディフェンスの強度を高めて勝ち切る

栃木は55-68と13点ビハインドで最終クォーターを迎えたが、この勝負どころでディフェンスからゲームを作り直し、試合の流れを引き寄せる。残り7分、鵤誠司がトランジションオフェンスから3ポイントシュートを決める。直後にクレイグ・ブラッキンズがオフェンスファウルを犯し、さらに判定に抗議したことでテクニカルファウルをコールされる。これで得たポゼッションでライアン・ロシターが3ポイントシュートを沈め、66-70と名古屋Dを射程圏内にとらえた。

栃木のディフェンスが名古屋Dのドライブをとらえ始め、竹内公輔のスティールからの速攻を遠藤祐亮が決め2点差に。勢いが止まらない栃木はロシターのフェイダウェイシュートで74-74と追い付くと、竹内公輔のセカンドチャンスポイントでついに逆転する。

この勝負どころでバーレル頼みになる名古屋Dに対し、栃木はディフェンスの強度をさらに増して得点を許さない。特にロシターはこのクォーターだけで5スティールを記録し、ブロックにリバウンドにと守備で存在感を発揮。そこから次々と速攻を繰り出して名古屋Dを突き放す絶妙な試合運びで、最終スコア84-80で勝利した。

我慢し続けることで手繰り寄せた逆転勝利

見事な逆転勝利を飾った栃木だが、安齋竜三ヘッドコーチは「前半は特に、名古屋まで応援に来てくださっているファンの皆さんに失礼なゲームをしてしまった」と、相手に主導権を握られた前半の出来に苦言を呈し、気の緩みを許さなかった。「どういう選手が出ても、ブレックスのスタイルは変わらないので、そういったところを全選手に理解して危機感を持ってやってもらわないと、チャンピオンシップでは今日の前半のような時間帯があっただけで勝てない試合になってしまう」

それでも栃木は、名古屋Dのオフェンスに苦労しながらも、我慢し続けることで大逆転劇を手繰り寄せている。試合終盤の激しいディフェンスと速攻が目立つが、それ一辺倒になるのではなく状況を見極めて遅攻も織り交ぜられるゲームコントロールは、ディフェンディングチャンピオンの強さを象徴している。

鵤誠司は逆転劇を演出する貴重な働き。「出だしでエナジーが足りない時間帯もあったが、後半はエナジーを出して逆転することができた。明日もチームとして少しでも成長してチャンピオンシップにつながるようなゲームにしたい」と、明日の第2戦でも必勝を誓った。

名古屋Dは大量リードを守り切れない悔しい敗戦に。ドライブと3ポイントシュートを中心とした質の高いオフェンスは最後まで栃木を苦しめたが、試合を通してターンオーバーが22とミスが増えたことで栃木に流れを明け渡してしまった。