文・写真=鈴木栄一

「チャンスだと思う気持ちが6割、怖さが4割」

先週、川崎ブレイブサンダースは、大黒柱ニック・ファジーカスが日本国籍を取得。ここに来てファジーカスを帰化選手として起用できる大きなプラス材料を得た。しかし、チームリーダーの司令塔である篠山竜青が負傷し2~3週間の離脱となる痛恨のアクシデントも発生している。

そんな中で迎えた昨日の千葉ジェッツ戦、ファジーカスを帰化枠で起用できる恩恵を受けたジョシュ・デービス、ルー・アマンドソンの奮闘もあってリバウンドで優位に立ち102-90で点の取り合いを制した。もう一つ光ったのが、篠山離脱のマイナスをできるだけ少ないものにしようと奮闘した青木保憲だ。

2018年に入ってから特別指定選手として加入した青木は、ここまで出場機会といえば試合の勝敗が決した場面での起用がほとんどであった。それが篠山の負傷により、出場時間は少なくとも篠山に代わって先発を担う藤井祐眞を休ませるつなぎ役として、勝敗が分からない場面で登場することになったのだ。

今回の千葉戦、青木は7分30秒の出場で4得点をマーク。北卓也ヘッドコーチは、次のように働きを評している。「青木は途中、富樫(勇樹)選手に連続で3ポイントを決められましたが、これも経験です。ただ、第3クォーターのラストショットで(富樫について)守り切ったのは自信になる。つなぎのところで彼のディフェンスは必要になってくると思います」

青木本人も「ディフェンスの部分で富樫さんに3ポイントをやられてはいけないところで、2、3本決められたのは反省です。第3クォーターの終盤にそこをしっかり修正できて3ポイントではなくてドライブさせてのシュートを打たせようと実行できたのは良かった」と総括。まずは、マッチアップした富樫相手にスペースを空けることで、最も防ぎたかった3ポイントシュートを簡単に打たれてしまったことを反省していた。一方で試合中にミスを修正できたのは収穫だ。

「チャレンジ精神をより強く持てたのは良かった」

「チャンスだと思う気持ちが6割、怖さを感じる部分が4割くらいです。いつでも出られる準備はしていたつもりですが、竜青さんがいなくて2番目のガードで出ることは緊張します。ただ、ここで信頼を勝ち取るチャンス。チャレンジ精神をより強く持てたのは良かったです」

このようにシーズン終盤の大事な時期で急に出番が回ってきたことについて青木は率直な気持ちを語る。しかし、篠山が負傷した翌日である4月28日の京都ハンナリーズ戦に比べれば、自身の持ち味を発揮できており、それは良い意味での開き直りが影響したようだ。「前節は竜青さんの代わりで頑張らなければという思いが強すぎて空回りになってしまい、保守的なプレーをしてしまいました。僕の実力では竜青さんの代わりにはまずなれない。ただ、僕のやれること、役割をしっかりやろうというメンタルで臨みました。それがディフェンスなどで多少なりともハッスルできたのは良かったです」

また、篠山からのアドバイスも青木の助けになった。「前節も試合前にLINEしてくださって、相手の簡単な特徴やアドバイスをくれました。『ターンオーバーでもいいので、なにかしらやってこい』と言われていて、そこを前節できなかったので、今節はという気持ちで臨みました」

この篠山の叱咤激励もあってか、ゴール下への積極的なアタックでレイアップを2本沈めたのは大きな自信になったはずだ。「竜青さん、祐眞さんのようにドリブルでいろいろとやるタイプではなく、パスをさばきながらチャンスがあったら行くのが自分のスタイル。竜青さんからも『チャンスがあれば思い切ってやってこい!』とLINEで言われていました。特にピック&ロールからチャンスがあったらアタックするつもりで、思い切り良くできたと思います」

「チャンスをしっかり自分のものにしたい」

本日のパフォーマンスについて「ほっとしました。やっとチームに貢献できました。ただ、スタートに立てただけでもあるので、これで浮かれずに三河戦もチャンスをしっかり自分のものにできるようにしていきたい」と青木は言う。

そして、今週末のレギュラーシーズン最終節の三河戦、チャンピオンシップに向けて次のように意気込みを語る。「いろいろなことを考えすぎると不器用なんでパンクしてしまうので、とにかく与えられた時間を全力で戦うということしか考えてないです。これをやろうという感じでしっかりテーマを持ってやれば結果はついてくると思います。僕が祐眞さんのつなぎをできればチームに幅ができる。そして竜青さんが戻ってきた時、竜青さんと祐眞さんを休ませる時間帯ができます。そうなればチームとして厚みが出て、チャンピオンシップにもつながっていきます」

ファジーカス帰化選手の恩恵を最大限に生かせる選手起用を見つけることに加え、青木が短い出場時間でもどれだけしっかりつなぎ役をこなせるか。川崎が頂点に立つためにはこの2点が大事な要素となってくる。