「3×3は日本全体のレベルアップに役に立つ」と確信
3×3の男女日本代表は現在、中国で行われているアジアカップを戦っている。男女ともにグループリーグを1勝1敗で突破し、今日の決勝トーナメントに進出。3×3では1日に複数の試合が行われるため、3試合勝ち抜けば優勝が決まる。
3×3は5人制バスケットボールと違い、コーチがベンチに入らない。そのため4人の選手が試合状況を把握して適切なプレーを選択しなければならず、全員にバスケットボールIQが求められる。だが、コーチが不在というわけではない。選手を選び、練習を課し、チームを作っていく仕事を担当するのは、男女ともに3×3日本代表で『アドバイザーコーチ』を務める長谷川誠だ。
かつての日本代表の『レジェンド』であり、ここ数年は秋田ノーザンハピネッツのヘッドコーチを務め、5人制のイメージが強い長谷川だが、実は現役引退の2013年から3×3にかかわってきた。「3×3の強化委員になっており、アマチュアの代表選手の合宿誘致を秋田の横手市で4年連続で自分がやっているんです。その中でこういう話をいただきました」と長谷川は話す。
東京オリンピックの正式種目となったことで注目を集める3×3だが、まだ競技としての歴史は浅く、2020年に向けた日本代表の強化は『スカウティング』にも直結する。また2020年だけの盛り上がりで終わらせないための『普及』も大事で、そこも長谷川に託されたミッションだ。彼が担当するのはフル代表だけでなく、男女のU-22、U-18も含まれる。3つのカテゴリーで男女の2チームとなれば、ひっきりなしに合宿と大会を繰り返すことになるが、長谷川はやる気に満ちている。日本バスケ界のレベルアップのため、努力する価値が十分にあると感じているからだ。
「私は5人制の強化委員もやっていますが、そこで話題になるのはいつも『フィニッシュ力が足りない、1on1のフィジカルが足りない』という部分です。そこをどう強くするかを研究しながらやっていますが、3×3はまさしくそこのフィジカルや個人技の部分がすごく充実しています。今こうしてやってみて、3×3は日本全体のレベルアップに役に立つし、3×3から5人制に選手を送り出すことができると実感しています」
男女とも多くの選手を3×3に巻き込み日本代表強化を
現在アジアカップを戦っている3×3男子日本代表メンバーは、すべて3×3に専念しているスペシャライズド選手だ。競技特性が5人制とは違うので、3×3を知り尽くしたメンバーを揃えた。ただ、長谷川や協会の今後のビジョンは、5人制と3×3の垣根を低くし、2つの競技の選手が交流する中で全体をレベルアップさせていくこと。
これまでも夏のオフ期間に3×3に挑戦するBリーグの選手はいたが、この夏にはその流れが加速すると長谷川は予測する。「シーズンオフにトレーニングを兼ねて3×3をやる選手が出てくるのは間違いないし、現実的にそういう話も耳に入ってきています。そこから3×3の日本代表を目指す選手も出てくる可能性があります。そういう選手たちが日本代表に興味を持つのであれば、ナショナルチームの強化合宿にも参加してほしいし、声を掛けたいとも思っています」
3×3男子日本代表はこのアジアカップを終えると、すぐに6月12日に開幕するフィリピンでのワールドカップに向けた準備を始めることになる。また代表活動を別にしても『ジャパンツアー』が始まり、ここで新しい選手が出てくるはずだ。今後はBリーグや大学生などカテゴリーを問わず多くの選手を3×3に巻き込み、3×3を盛り立てていく中で代表チームを強くしていくのが長谷川の狙いだ。
「いずれ今の代表チームにBリーグから選手が入ってくることもあると思います。女子の代表チームも8月にインドネシアのアジア大会があります。そこは年齢制限があるのでU-22になりますが、その編成は各チームに協力をお願いします。Wリーグで5人制の日本代表に選ばれない選手でも、3×3の日本代表に来れば個人のスキルがアップするし、アジアのフィジカルを体験できるのもプラス材料になります。また10月にはアルゼンチンでユースオリンピックがあります。そちらも5人制のU-18の候補選手を、各選手の高校の先生と連携しながら選びたい。これまでのように3×3単独ではなく、5人制と合わせてバスケットの能力、スキルのある選手を選び、3×3の特徴を生かしたプレースタイルを作り上げたいと思っています」
長谷川が語る通り、競技としての歴史は浅い3×3だが、東京オリンピックという明確な目標が2年後に設定されている以上、その強化と普及はこれからドラスティックに進むだろう。
今の日本代表メンバーには3×3のパイオニアとしての誇りがある。新たに参入する選手は3×3に勢いをもたらしてくれるはず。その両者が切磋琢磨する中で代表チームには急激なレベルアップが見込める。日本代表を別にしても、全国各地で3×3がどのように盛り上がるのかも楽しみだ。