文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

約6カ月ぶりの復帰に「今日は緊張しましたね」

昨日行われた横浜ビー・コルセアーズと名古屋ダイヤモンドドルフィンズの第1戦、第2クォーター残り2分55秒にその時は訪れた。開幕からわずか4試合目、レバンガ北海道との試合中に右足アキレス腱断裂の重傷を負った湊谷安玲久司朱がコートに戻って来たのだ。

「あまり緊張しないほうなんですけど、今日は緊張しましたね。久しぶりにバスケしてるなと。練習ではそういう気持ちは味わえないので最高に気持ち良かったです」と、湊谷は復帰の率直な感想を語る。

「感覚をつかむだけでいいかなと、今日はシュートを打たないでいいかなと思っていた」と肩慣らしのつもりだったことを明かしたが、試運転とは思えない素晴らしい活躍を見せた。最初の2プレーで味方のシュートをお膳立てし、劣勢のチームの空気を一変させ、最終クォーターの頭から再びコートに立つと、ドライブから復帰後初得点を記録。その後は3ポイントシュートとフリースローを成功させ、8分弱の出場ながら7得点2アシストと効果的なプレーを披露した。

実戦から半年以上遠ざかっていたとは思えないプレーだったが、コンディションは「3~4割」だと言う。「練習中の5対5はちょくちょく入れてもらっていたんですけど、今日やってみて(練習とは)本当に全然違うなって思いました。今日は3~4割くらい。明日もちょっと出て、徐々に100%に持って行ければと思ってます」

『待ってるよ』の言葉が復帰を後押し

湊谷は今シーズンからキャプテンに任命されたことで、バスケに取り組む姿勢に変化が表れた。その意識の変わりようは周りのチームメートが驚くほどだった。だがその矢先に悪夢が湊谷を襲った。「これだけバスケットのコートに立てない時間が長いのは初めてだったので、途中で何回も心が折れそうになって、本当にキツかったです」と湊谷は半年間を振り返る。

並々ならぬ思いを持ってシーズンに臨んだだけに、その反動は大きかった。だが、その絶望をファンが救ってくれたと湊谷は言う。「ブースターのみんなが会うたび会うたびに『待ってるよ』と言ってくれました。本当にそれが励みになったなとあらためて思いました」

ファンの温かい言葉に支えられ、リハビリに励んだ時間は決して無駄にはならないはずだ。シーズン途中にはアシスタントコーチに就任。そうしたメンタルの成長は確実に湊谷の糧になっている。「緊張したんですけど、もっと頭真っ白になるのかなと思ったら意外に冷静でした。ベンチでずっと見てたおかげなのか、試合の中でも冷静にいられました。6カ月ぶりにそれができたというのは、この先もっと生かせるのかなって」

「キャプテンとして申し訳ない気持ちです」

しかし、湊谷の奮闘も実らずチームは接戦を落とした。「ウチの永遠の課題なんですけど、ディフェンスだったり、リバウンドの決定力、これが最後の1分半で切れてしまったので負けてしまいました」と終盤に失速する悪癖を敗因に挙げた。

昨日の敗戦により、横浜は残留プレーオフ行きが決定した。「ブースターに対しては2年連続で残留プレーオフになってしまい、キャプテンとして申し訳ない」と肩を落とす。それでも「あと4試合は残留プレーオフをいかに戦えるか、自分たちの精度を上げていく試合になる。切り替えるしかないので1部残留を目指してチームで戦っていきたい」と湊谷が言うように、横浜に後悔している時間はない。

ファンに支えられ、レギュラーシーズン終了間際に電撃復帰を果たした湊谷。これから迎える険しい航海の命運は船長の双肩にかかっている。