文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

練習通りのパフォーマンスで三遠を圧倒

アルバルク東京は三遠ネオフェニックスに連勝し、東地区首位の座を虎視眈々と狙っている。三遠との第2戦では前半で53-28と大量リードを奪って、早々に試合を決定付けてしまった。この試合を田中大貴は「出だしからシュートも入ってましたし、自分たちのペースで試合を運べて、ディフェンスも足を動かしてよく守れていたと思います」と振り返る。

「今日に限って言えば、三遠さんのディフェンスはウチとやり方が似ていたんです」と、田中は好パフォーマンスの理由を説明する。「日頃の練習で自分たちのディフェンスとやっているので、みんな余裕があったんじゃないかと思います。スネークなんかでオープンになってましたが、ああいうのも練習通りでした」

田中は再三、ピック&ロールからのスネークドリブルで三遠のディフェンスを惑わせて先手を取った。三遠からすれば、田中に当たればアレックス・カークにパスを通され(第1クォーターは主にこのパターンからカークが14得点を挙げた)、田中をオープンにしてしまえばミドルジャンパーを決められた(第2クォーターは田中がこの形から5本すべてのシュートを沈めて10得点を挙げた)。田中を起点に先手を取ったことで、A東京は三遠を圧倒したのだ。

竹内譲次のパスから田中がバックドアを決めた直後には、2人が笑顔を交わすシーンもあった。「あれは一つ前も同じプレーを自分がコールして、次も同じコールをした時です。譲次さんは自分にバックドアを狙えよって言いたかったと思うんです。でもその時間がなくて、結果的にバックドアを成功させたら『それを言おうとしてたんだよね』って感じだったので笑ってました」

互いの思惑が合致し、連携からイージーシュートを生み出した。「良いオフェンスができている証拠だと思います。5人がここを狙ったほうがいいとか、相手のウィークポイントを狙うという意識は徐々に良くなっています」と田中はチームプレーの成熟を感じている。

「入らないなら入らないで仕方ない」との割り切り

前半を圧倒したA東京だったが、最終クォーターではわずか5点しか奪えず猛追された。「点差が開いたところで自分たちのインテンシティを落としてしまった」と田中は終盤の失速を振り返った。

試合の締め方については『我慢が大事』と田中は言う。「たとえ悪いシュートを打ったとしても、その後全員がしっかり戻ってディフェンスをして、点数をやらなければ点差は縮まることはないです。個人的に思うのは『我慢ができるかどうか』だと思っています」

田中の言うとおり、A東京は相手の猛追を浴びたが、それと同時に常に10点以上のリードを保って勝ち切ったことも事実だ。そういう意味では、チームはそれだけの安定感を見せたとも言える。「シュートが入らないなら入らないで仕方ないので、そこを割り切って次のディフェンスをみんながしっかりやらないといけない」と田中が言うように、悪いオフェンスをディフェンスに引きずらないメンタルが重要になる。

「優勝するためにはディフェンスが大事」

A東京はすでにチャンピオンシップ進出を決めているが、激しい順位争いは今なお続いている。気の抜けない戦いが続く中、チームはいまだ課題を抱えている。「一つのプレーで流れがガラッと変わることだってあると口うるさく言われてますが、それができていないのが現状です」と田中もチームの現在地を客観的に理解している。

それでも田中が目指すのはあくまで頂点だ。「優勝するためにはディフェンスが大事だと思っています。どれだけやりたいことをやらせないか、そこにこだわってこれからもやっていきたい」

チャンピオンシップを戦う上で、ホームアドバンテージは重要な要素を占める。レギュラーシーズンは残り5試合。A東京は一つでも順位を上げるとともに、チームの武器を再確認する段階に入っている。

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