ジミー・バトラー

ティップオフ直前、審判にユニフォーム交換を命じられる

ディズニーワールド内の隔離エリア『バブル』での集中開催という形で、NBAは再開となった。新型コロナウイルスの感染拡大をいかに避けるかがテーマとなっているが、もう一つの大きなテーマが『Black Lives Matter』で、人種差別撲滅と社会正義の実現をいかに前進させるかだ。コートには『Black Lives Matter』の文字が描かれ、選手たちのユニフォームには名前の代わりに社会正義やチャリティのメッセージがプリントされている。

バックスのヤニス・アデトクンボは『EQUALITY』を、ペリカンズのザイオン・ウイリアムソンは『PEACE』を、セルティックスのマーカス・スマートは『FREEDOM』を、といった具合に、それぞれがメッセージを選んでいる。これまでと変わらず自分の名前を選ぶこともできるが、メッセージはNBAと選手会が用意した29個の中から選ばなければいけないことを不満に思う選手もいる。

人種差別撲滅は、多様性を認めて、どんな考えも尊重する世の中を実現することでもある。だからこそ、リーグと選手会が決める主義主張の中から選ばないといけないルールに納得できない選手もいる。

ヒートのジミー・バトラーもその一人。彼は「リーグが選んだメッセージはどれも気に入っているしリスペクトしている」と評価しながらも「僕は空欄を選択したい」と語っていた。

この要望は認められなかったが、1日に行われたヒートvsナゲッツの試合前、彼は自分の名前もメッセージも入っていないユニフォームを着てコートに入った。ティップオフ直前に審判がこれに気付き、名前入りのユニフォームに着替えるよう指示。バトラーは素直に従ったが、試合後の会見で自分の意見を語った。

「リーグが選んだすべてのメッセージをリスペクトするけど、僕はメッセージを入れるべきではないと感じた。名前でさえも入れたくはない。それは僕が誰かを示すことになるからだ。僕が今の僕じゃなかったら、他の有色人種の人たちと何ら変わりない。すべての人が、それが誰であっても同じ権利を持つ。僕のメッセージはそういうことだ」

メッセージも名前も入っていないユニフォームの着用が認められないことは、バトラーも当然知っていたはず。それでも注目されるティップオフの時点でそれを示し、審判の求めに応じて名前入りのユニフォームに着替えた。これは彼が言うように、NBAの選択をリスペクトしているが、自分には伝えたいメッセージがあるということに他ならない。

バトラーは以前、バスケットボール選手として有名になる少年の頃に、ショッピングモールで人種差別を経験した過去を語っている。買い物に出掛けた彼は、通りすがりの親子とすれ違う際に、小さな子供が「ねえ、あれがパパの言ってた黒人だよね!」と言うのを聞いたそうだ。小さい子供が無邪気に人種差別的発言をする現実に強いショックを受けた、と語っている。

NBA再開が決まる前後、バスケットボールの試合をすることで人々の関心が人種差別問題から離れてしまうのではないか、という意見があった。その一方で、NBAが試合を開催するからこそメッセージを伝えられる、という意見もあった。バトラーは後者を力強く実践している。